71「結界の伝授」③
「ねえねえ、ウィルソンおじさん。質問したいんだけど、いいかしらぁ?」
ルナが手を上げると、ウィルソンは笑顔で応じた。
「もちろんです。どうぞ」
「パパとミナ、あとエンジーが結界術を使えるかどうかってわかるものなのぉ?」
「もっともなご質問です。お答えするのなら、私にはわかります。レダくん、ミナちゃん、エンジーの三人は結界術を支える素質があります。もちろん、あくまでも使えるというだけで得意不得意はあるでしょうが、そればかりは実際にやってみないとわかりませんね」
「ふぅん。そうなのねぇ。ありがとう。ところで、ディアンヌさんは結界術は得意なのかしらぁ?」
「……私は残念ながら、結界術は使えません」
「あら、ごめんなさい」
「いえ、謝罪はいりません。こればかりは生まれ持った相性の問題ですので、仕方がありませんもの」
苦笑するディアンヌ。
レダには何が基準で結界術が使える使えないのかさっぱりだ。
「レダ様、ミナ、エンジー様に私の代わりにしっかり覚えてもらえれば幸いです」
「できる限りの努力をさせてもらいます」
「がんばる!」
レダは冒険者業こそ十年と長いが、あまりぱっとしなかった。
所属しているパーティーこそいいところまでいったのだが、レダ自身は金に余裕があったわけではないので、魔術を勉強するということはできなかったのだ。
故郷で魔術の基礎と実践は学んでいたものの、あくまでもベース部分でしかない。その基礎からこつこつとレダなりの工夫をしていくことが精一杯だったのだ。
正直、回復魔術はさておき、攻撃魔術などは魔力によるゴリ押しが基本だ。レダの場合は、その魔術がかなり大きいのでゴリ押しが通用してしまうのだ。
回復魔術は現在進行形で学んでいるが、他の魔術はぱっとしていない。学ぶべきかどうか悩んでいたが、災厄の獣のような今までにない強敵と戦った経験はレダに知識と技術、そして力を貪欲にさせていた。
ミナも回復魔術を習い始めたことで、魔術関連に興味を本格的に抱き始めた。
幸にして、学校以外でもレダをはじめとした人間が魔術を教えることができる。
ミナが将来的にどのような成長を遂げるのかわからないが、たくさんの知識と技術はマイナスになることはないだろう。
今回の結界術だって、使えるようになれば食うに困らないはずだ。
「良い意気込みです。では、明日の朝食後に座学と実践を始めていきましょう。なに、心配せずともこつをちょっと掴めばあっという間に使いこなせますよ」
ウィルソンは簡単に言うが、ディアンヌの苦い顔を見ていると絶対に簡単にいくとは思えない。
それでも、年甲斐なく――とても楽しみだった。




