69「結界の伝授」①
教会の手伝いをしていたヴァレリーとディアンヌが戻ってくると、教皇ウィルソンと一緒に夕食となった。
護衛のテックスやローゼス、ロロナも「ぜひご一緒に」とウィルソンは言ってくれたのだが、テックスたちは「一介の冒険者が教皇様と席を一緒にするのは無理だ」と全力で首を横に振っていたので、レダからやんわりと断っておく約束をした。
むしろ、冒険者としてはテックスたちの方がレダよりもランクも上なのだから、教皇と一緒に食事をとることへの難易度は高い気がした。
最低限のマナーはヴァレリーに叩き込んでもらったが、ウィルソンはマナーは気にせず好きに食べて欲しいと言ってくれたのだ。
これは、気遣いではなく、会食であればさておき普段の食事に肩肘を張った食べ方をしないようだ。
ウィルソンはあくまでも家族としてレダたちと食事がしたいとの要望だった。
「そうですね、とりあえず今は、親戚のおじさんくらいに思っていてください」
朗らかにそんなことを言ってくれるので、レダはウィルソンの好意を受け取ることにした。その代わりに、というのは少し変だが、レダもウィルソンにお願いをする。
「親戚のおじさんというのなら、もう少し楽に接していただければと思います」
ウィルソンは驚いた顔をしたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。
彼はレダを「レダくん」と呼び、ミナを「ミナちゃん」、そしてルナたちを「ルナさん」と呼んでくれるようになった。
レダたちもウィルソンに様を付けるとなく、「ウィルソンさん」と呼ぶことになった。ミナとルナ、そしてヒルデは「ウィルソンおじさん」と呼びはじめた。
「おじさん」と呼ばれたウィルソンは嬉しいようなくすぐったいようななんとも言えない、でも満足した表情を浮かべていたのが印象だった。
おかげで会話が弾んだ楽しい夕食となり、あっという間に時間は経った。
「……ありがとうございます。皆さんのおかげで楽しい時間を過ごせました」
食後のお茶を飲んでいると、ウィルソンがレダたちに礼を言った。
だが、お礼を言うのはこちらのほうだ。
諸事情があるとはいえ、教会で衣食住を保障した生活を送らせてもらえているのだから、感謝したいのはレダたちだ。
教会のおかげで、関わらなくても良い問題と縁を切ることができている。
今後、どうなるのか不明ではあるが、今は穏やかに王都での日々を過ごせているのだから、ただただ感謝しかない。
「レダくん、先日お伝えしたことですが、明日は何かご用事はありますか?」
「いいえ、特には」
「――では、レダくん、そしてミナちゃん、そしてエンジーに結界術を授けましょう」




