55「再会」①
投稿時間を間違えました。すみません。昨日が予定でしたが、一日ずれました。
「しかし、少し安心しました」
「安心、かな?」
レダ・ディクソンはクイン・レイニー伯爵とひとしきり話を終えると、彼に対しての印象がまとまり安堵の息をつく。
「ご無礼を承知で言わせていただきますが」
「構わないよ」
「ルルウッドとの確執は聞いていましたので、実際はどうなのだろうか、と不安ではありました」
「……ルルウッドには悪いことをしたと思っている。放蕩息子が治癒士として才能を開花したことで、喜びすぎた。息子のため、といいながら結局は欲に目が眩んでいたのだろう」
仕方がない話だ。
今は、アマンダ女史のおかげで回復ギルドに改革が起きたが、それでも治癒士の数が少なく貴重であることは変わらない。
アムルスのような場所ならばいざ知らず、王都で治療費を下げると言っても限度がある。
王都は物価が高いのだ。
それに、貴族が多いため、大金を積んででも優先して治療を受けたいと思う人間はいる。
治療する側だけではなく、治療を受ける側の意識も変わらなければ、治癒士が特別視され続けるだろう。
「お気持ちはわかるつもりです」
「ありがとう。だが、本当に私も、妻も、ルルウッドのためを思っていたことも事実だ。金稼ぎをしたかったわけではない。ルルウッドを政治に使いたかったわけではないのだ。それだけは、信じてほしい」
「はい。信じます。伯爵から嘘は感じません」
もっとも、相手は貴族だ。
うまく本心を隠しているかもしれない。
しかし、目の前の父親が嘘をついていたとしたら、レダだけではなくルルウッドも人間不信になるだろう。
「――ありがとう。これから私と妻はルルウッドと関係を修復していくつもりだ。家に関しては兄がいるので、ルルウッドは自由にしていいと思っている。治癒士として人を救う――とても素晴らしいことだと思うし、誇らしい」
「本人に直接言ってあげてください。きっと喜ぶと思います」
「そう、だね。頑張って言ってみよう」
レダの目から見ても、ルルウッドは素晴らしい治癒士だ。
弟子としているが、レダが教わることは多い。
災厄の獣との戦いの際には駆けつけてきたルルウッドたちに命を救われている。
今、ここにいるのは、エンジーはもちろん、ルルウッドたちのおかげだ。
「――うん?」
「む?」
廊下が騒がしい。
ルルウッドとエンジー、そして女性の声が聞こえてくる。
レダとクインは顔を見合わせる。
「なにかあったのでしょうか」
「さて。様子を見に――」
ふたりがそう言いながら腰を上げた時だった。
「ご歓談中、失礼いたします。アンバー子爵家ご令嬢が、そのご挨拶をしたいと申しております」
執事が部屋の中に入り、少し気まずそうな顔をする。
「アンバー子爵家、か。問題ない。通してくれ」
クインが許可を出すと同時に、執事の背中からするりと少女が部屋の中に入ってきた。
「クイン・レイニー伯爵様。突然の訪問お許しください。私がずっとずっと探していた方がこちらにいるとお聞きしたので、我慢できずに馳せ参じてしまいました」
「レイチェル。久しいな。……君が探している人物とは例の方だろうか?」
「はい。今日、妹に聞き、判明したのです」
「――まさか」
クインがなぜか驚いた顔をしてレダを見た。
レダはよくわからず首を傾げる。
「幼い頃、私と妹を暴漢から救い、傷を癒してくれた治癒士様――ずっとあなたのことを探しておりました」
濃い桃色の髪を持つ女性はレダの前に立つと、そう言って頬を赤く染めた。




