29「ミナの潜在能力です」②
「――そんな、馬鹿な」
ミナに力があることは知っている。
まだ幼いというのに、治癒士としてもやっていける治癒術を身につけている。
それだけではない。
かつて、レダの絶体絶命な危機をミナが不思議な力で救ってくれたことがある。
もしや、それが彼女の潜在能力が一時的に発揮されたものなのか、と考えると、納得できなくもない。
だからと言って、聖女や教皇よりも力が上であると言われて「ミナはすごいなぁ」とはならない。
聖女はもちろんだが、教皇もトップに相応しい力を持っていなければならない。
無論、教皇は人格面も、また政治的背景も関わってくるのだが、それでも第一に教皇として力を示す必要がある。
それは治癒術であり、結界術であり、聖なる力と呼ばれる未知なる存在である。
そして、聖なる力というのは、聖属性の力なのだろう。
「まさか、ミナも聖属性」
思わず口に出してしまったレダに、ウィルソンが肯定するように頷く。
「ナオミが確認していますが、レダ様はもちろん、エンジー様よりも強い聖属性を持っているようです。私も、遠目から見させていただきましたが、潜在能力は凄まじいことは間違いないでしょう」
エンジーの潜在能力は、規格外と言われるレダを超えている。
そんなエンジーよりも潜在能力が上どころか、聖女ディアンヌや教皇ウィルソンよりも上であると言われ、レダは嫌な汗をかいた。
気づけば、酔いも覚めている。
むしろ、もっと酔いたい。
グラスに残っているウイスキーを飲み干す。
「――それで、ミナの潜在能力がとてつもないことがわかったとして、あなたたち教会はミナをどうするつもりですか?」
レダ・ディクソンはミナ・ディクソンの父親だ。
血の繋がりがなかろうと、出会ってからまだ一年も経っていないとしても、父親だ。
誰がなんと言おうと父親であり、親子なのだ。
ミナと引き離されることはごめんだ。
もし、ミナを教会が利用しようと企むのであれば、レダは武力を持って戦うだろう。
「誤解なきように、お願いします!」
慌てたように、ウィルソンが初めて大きな声を出した。
「私の言い方が悪かったのかもしれませんが、私はミナ様を利用し、レダ様と引き離すなど微塵も考えていません」
「……そう、ですか」
だが、レダは気を抜くことはできない。
相手は教皇だ。
政治的にも、立場的にも多くの人間と言葉を重ねてきた経験がある。
自分など、相手にならないだろう。
「私はミナ様を守ると誓います。悪用させることもしません。そもそも、力の有無でさえ、公開するつもりもないのです。今、レダ様にお話ししたのも、あなたが父親だからです。どうか、誤解なされないことを祈ります」
「……俺としても誤解はしたくありません」
「ありがとうございます。では、隠し事をせずに続けましょう。私はミナ様に対して、何かしようとは思いません。しかし、彼女の力を知った者が必ずしも善人とは限りませんし、利用しようとしないとも限りません」
「それは、わかっています」
「ですから、提案があります」
「聞かせてください」
「――ミナ様の力を封印するというのはいかがでしょうか?」




