27「教皇と話を」④
「嫌な話で申し訳ありません。ピアーズ家ですが、もう何もする力はありませんので、王都に滞在している間はご心配せずとも大丈夫ですよ」
「……どうもありがとうございます」
礼を言うのもなにか違うかも知れないと思ったが、他に言葉が見つからずレダはついお礼を言ってしまった。
「ゆっくりと確実に、愚かな男のしたことの罪を一族で償ってもらいましょう。とはいえ、そのせいで王家も少し慌ただしかったりするのです」
「王家まで?」
「ピアーズ家と関わり悪事を働き、旨い汁を吸い取っている害虫のような貴族も見つかりましたので、粛清ですよ。遠縁とはいえ、王家の血を引く者も加担していることがわかったので、正直、宰相殿あたりは胃に穴が開くのではないかと思います」
苦笑するウィルソンだが、レダは笑えなかった。
「宰相殿が先日教会を訪れ、倒れたら治癒士を派遣してとりあえず胃に治癒をかけてほしいとお願いされました。――よほどストレスがたまることを覚悟しているのでしょうね」
やっぱり笑えない。
「そう考えると、大変な時に来てしまいましたね」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。レダ様たちが災厄の獣を倒してくれなければ、ピアーズ一族のやらかしたことに追加して、災厄の獣と戦わなければならなかった。処罰ができなかった可能性もありますし、最悪の場合は国ごと滅んでいましたから、感謝しかありません」
「そう言っていただけるとほっとします」
レダのグラスにウィルソンがおかわりを注いでくれる。
お互いに無言でグラスを掲げ、ウイスキーを一口飲む。
「と言う感じで、ディアンヌを拐かし、ミナ様とルナ様を売り払った愚か者とその一族への罰は現在進行形で続いています。絶対に、レダ様をはじめ、皆様の前にあの一族が現れることはないとお約束しましょう」
「――心から感謝します」
せっかくの王都だ。
家族たちを煩わせたくはない。
素直に、ウィルソンの気遣いに感謝した。
「さて、おかわりをどうぞ」
「あ、すみません」
プライベートとはいえ、教皇に酒を注いでもらえる人間がどれだけいるだろうか。
レダも申し訳なかったので、ウィルソンのグラスにウイスキーを注ぐ。
「ありがとうございます。では、続いて本題を話しましょう」
(……これだけの話が本題じゃなかったんだ)
少しレダの頬が引き攣った。




