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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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17「教皇ウィルソンと」③





「……なんという力を秘めた魔石でしょうか。私も立場上、いくつか魔石を見る機会がありましたが、これほどの魔石は見たことがありません」


 教皇ウィルソンの声は震えていた。


「……触れても構いませんか?」

「はい」


 特に考えず返事をする。

 教皇が震えるほどの魔石を前に、レダの思考もやや低下気味だ。


「素晴らしい……これが災厄の獣の魔石ですか」


 うっとりした表情となった教皇は魔石に頬擦りをした。

 え、とレダとエンジーが顔を見合わせる。

 撫でることは想定していたが、まさか頬擦りするとは思ってもいなかった。

 レダとしては、そんなことをする勇気はない。


「あ、あの、さすがに頬擦りは」


 恐る恐る声をかけると、ウィルソンはハッとして魔石から離れると大きく咳払いをした。


「……失礼しました。二度とないチャンスについ」

「いいえ、余計なことを言ってしまったようで申し訳ないです。あまり触れていていいものかもわからないので」

「ふむ。確かにそういう疑問はありますね。しかし、見て触れてみたところ害になることはないでしょう」

「……そうなのでしょうか?」

「魔石によって所持者に害を与えるものがあるのは事実です。たまに魔剣とか呪われた剣などがあるでしょう。そういうものには大概、訳ありの魔石が素材となっていることが多いんですよ。モンスターたちの最後の恨み……なのでしょう」

「モンスターの恨みが魔石を通じて所有者に害を与えることがあるんですね」

「残念ながら、はい。モンスターにもモンスターなりに生きる理由がありますので、我々人間は敵でしょう。仲間を自身を殺されれば恨むでしょう。こればかりは仕方がないことです」


 どちらも敵だと認識している以上、綺麗事は言えない。

 モンスターは倒す。

 モンスターも人間を餌にする。

 永遠に関係は変わらない。


「だからこそ、不思議です。この魔石からは恨みを感じません。それどころか――」


 改めてウィルソンが魔石に触れた。


「感謝の気持ちが伝わってきます」

「……感謝、ですか」

「死の間際に思うことがあったのかもしれませんね。その場に居合わせることはできませんでしたが、災厄の獣は災厄の獣なりに何か思うことがあったのでしょう」


 全力で戦った。

 レダは災厄の獣を憎いとは思っていない。

 ただ、倒さなければ死んでしまうから必死に戦っただけだ。

 家族を、友を、街を、守りたくてがむしゃらに戦っただけだった。


 そのどこに感謝が宿るのだろうか。


「勝手な推測ですが……災厄の獣は知性が高いと伝わっています。そんな獣が長い時間を生きて、死んだ。もしかしたら、本当にもしかしたらですが――獣は死にたかったのかもしれません」


 その答えはわからない。

 わかることはない。


「レダ様は、獣の死の間際にお撫でになったと聞いています」

「はい。なぜか、そうしたかったんです」

「あなたの慈悲が、優しさが、災厄の獣に伝わったのかもしれませんね」


 ウィルソンは優しい顔をして、魔石を撫でる。

 そしてレダの手をそっと握った。


「こうして顔を合わせていれば、あなたが優しいことがわかります。その優しさに救われた者は間違いなく多かったはず。願わくば、災厄の獣もあなたの優しさに救われていれば、と思います」

「――もし、もしも、そうであれば、嬉しいです」





 次回はちょっと裏側と言いますか、ウェルハルトサイドにてレダのいなくなった王都のその後の一部を少し。


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 1巻〜11巻も何卒よろしくお願いいたします!

 ぜひ応援していただけますと嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!

挿絵(By みてみん)

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