12「門の秘密」②
「ちょ、ちょっと、さあってどういうことぉ? 言えないなら言えないって素直に言えばいいじゃない! 不安になるようなこと言わないでくれるぅ?」
たまらずルナがウェルハルトに文句を言った。
王子であるウェルハルトに対し、物怖じをしないルナにレダは冷や冷やする。
ウェルハルトは気にした様子はないので、安心する。
「これは手厳しい。だが、言えないのではないのだよ」
「はぁ?」
「――知らないのだよ」
「…………え?」
ルナが言葉を失う。
彼女だけではない。
レダたちもみんな同じだ。
「昔から、『転移できる扉』として利用されているが、仕組みなど知らないのさ。古の技術だからね」
「ちょ、それでいいのぉ?」
「ははは。余計なことをして壊してしまったらもったいないからね。王家としては壊れるまで使わせてもらおうと思っているくらいだよ。幸いとして、長い時間こっそり便利に使わせてもらっているよ」
「……王家適当すぎでしょぉ!」
さすがにレダも、まったくだ、と内心思った。
口にはしなかったが。
「ルナよ。古の技術というのは現代人ではまるで理解ができないのだよ」
そう言ったのは、元魔王であり現子猫のノワールだ。
「私もいろいろ過去の遺物に手を出したことがあるが、例外なく壊してしまったよ!」
「……壊しちゃ駄目じゃない」
「私が悪いわけじゃない。未来で使えないような技術で物を作った過去の人間たちが悪いのだ!」
「あんた、昔の人たちから全力で殴られてきなさいよ」
ノーワルの言い分に、ルナは呆れ顔だ。
「ノワール殿の言うように、わからないことに手を出して壊すよりも有効活用したほうがいい。幸い、使い方だけは伝わっているからね。というわけで、門に入ろうではないか」
「……今の話を聞いてこの門に入りたいとは微塵も思わないのだけどぉ!」
「はははははっ!」
「笑って誤魔化してない!?」
ウェルハルトは笑って、手を軽く上げた。
すると、控えていた騎士が数名先に門を潜る。
「……本当に入っちゃった!」
ミナがびっくりしているが、レダたちも同じだ。
言葉で聞いたのと、実際に見るのでは雲泥の差がある。
「ほら、問題ないだろう?」
ティーダがにこやかに門を眺めていると、すぐに一人の騎士が門から現れた。
「殿下、問題ございません。どうぞ」
「ありがとう」
どうやら転移先に問題がないか確認をしたようだ。
目の前で、門を潜り戻ってきた騎士を見たことで、転移の門に対しての警戒心が少しだけ減った。
だが、ゼロにはならない。
こればかりは自分の身で試してみるしかないのだ。
「では! 王都へ! 扉の向こうは教会さ! 安心してくれて構わないよ!」
「……そうじゃなくて、門が不安なんですけどぉ」
やはり不安が拭えないルナの背中を、母エルザが叩いた。
「ママぁ?」
「ルナよ、私はワクワクしているぞ!」
「えっと」
「私の故郷でも転移の門について話だけならあった。便利な御伽話だと思っていたが、こうして本物を見ただけではなく、自ら転移を体験できるとは! ――いざ!」
「ちょ、あたしも!?」
「安心しろ、私がついている!」
「そう言う問題じゃなくて!」
ルナがレダに助けを求めるように手を伸ばした。
レダがルナの手を取ると、もう片方の手をミナが取る。
「お姉ちゃんばかりずるい! 私も行く! 行こう、お父さん!」
「えっとね、ルナ。そうじゃなくて――ちょっとパパぁ、なに覚悟を決めた顔をしてるの!?」
「安心してルナだけを危険な目に遭わせたりしないよ」
「かっこいいけど! かっこいいけど、違うのぉ!」
レダも覚悟を決めた。
ルナとミナが行くならば、自分も行くべきだ。
「ははは、レダ兄上、転移の門は危険ではないのだがね! まあ、いい! では、皆、勇敢なるレダ兄上とご家族に続くぞ!」
「おおおおおおおおおおおおおおお!」
「あたしは最後でいいからぁ!」
ルナの願いは騎士たちの雄叫びによってかき消された。
――そして、レダと家族たちは転移の門を潜った。




