2「出発の朝」②
話が抜けており申し訳ございません。
修正したつもりができておらず、大変失礼いたしました。
レダの弟子にはなっておらず、弟子見習いという立場のエンジーも「強いミナの希望」により王都に行くことになっていた。
当初、エンジーは不仲な家族がいる王都に戻りたくないと言っていたのだが、ミナの「お願い」によって王都行きが決まった。
レダとしては、エンジーはもう見習いでいる必要はなく、独り立ちしてもいいのではないかと思っているが、やはり心が不安定であるため本人は望んでいない。
災厄の獣に立ち向かった度胸、仲間を見捨てることのない優しさ、治癒士としての実力、すべて申し分がない。レダとしても、見習いたいと思っている。
まだ慌ただしいかったため、話は進んでいないが、正式に弟子として診療所を本格的に手伝ってほしいと思っている。
そんなエンジーだが、馬車に乗る前から吐きそうな顔をしていて、今は泣きそうだしそうだ。
「そ、そんなに王都に行くのが嫌だったのかな?」
「いえ、レダ先生、違います。王都に行きたくないって気持ちはありますけど、僕もそろそろ自分の中でケリをつけたいですし、いい機会のなったと思います。ですが」
「ですが?」
「王子殿下とご一緒とか聞いていませんよ!? むしろ、ルルウッドたちが平然としているのがびっくりです!」
「安心していいよ、ウェルハルト殿下は気さくな方だから」
「そ、それはもう十分過ぎるほどわかっています。一緒の馬車に乗ろうと誘われてしまい……殿下のお誘いを断れるはずもなく、僕は王都までどうすればいいんでしょうか!?」
「寝ているとか、どう?」
「殿下前に!? 不敬だと思われて斬り捨てられませんか!?」
「殿下はそんなことしないよ」
「殿下がせずとも、騎士の方々が斬りますって! 絶対に!」
気持ちはわかる。
レダも、ウェルハルトと一緒の馬車に乗るように誘われているが、そこはアストリットのおかげで避けることができた。
もしかしたらレダの代わりにエンジーが誘われてしまったのかもしれない。そうであれば、申し訳ない。
「えっと、頑張って」
「ご助言は!?」
「俺の平民だからわからないや」
「テックスさん!」
「平民の中の平民の俺にわかるわけがねえだろ」
「んにゃあああああああああああああ!」
気弱な面はあるし、メンタル的には不安定でもあるが、以前のエンジーよりも逞しくなったと思う。
以前のエンジーならば、王子殿下と馬車に一緒に乗る以前の問題として、逃げ出すか倒れるかしていただろうし、ウェルハルトも誘えなかったと思う。
災厄の獣との戦いは、良い意味でエンジーを大きく成長させていた。
「おとうさーん! そろそろ出発の時間だってー!」
馬車の窓から愛娘ミナが顔を出してレダを呼ぶ。
「はーい! 今行くねー!」
娘に手を振ると、レダはエンジーの肩を叩いた。
「――がんばって!」
「そんな!?」
「ははは、未来の国王陛下にコネができたと思えば楽だろうに」
「テックスさんまで!?」
目尻に涙を浮かべたエンジーの背後に、レダの弟子でありエンジーの友人であるルルウッドが近づいてきた。
「エンジー、殿下がお待ちだ。災厄の獣と最前線で戦ったエンジーの話を聞きたくてわくわくしておられる。待たせてはいけないよ」
「ルルウッド、あの、僕」
「困惑するのはわかるが、諦めて殿下にお付き合いするんだ。殿下はとても良い方なので心配はいらない。王都で甘いものを買ってやるから頑張れ」
「ちょ」
「では、先生、テックス様、エンジーはお預かりします」
「よろしくね」
「おう、頼むわ」
ルルウッドはエンジーの襟首を掴むと、レダとテックスに挨拶をして引きずっていく。
必死に手を伸ばすエンジーであったが、残念ながら助けることはできない。
いざと言うときに頑張ることのエンジーだからこそ、今回も乗り切れるだろう。
そう信じ、レダとテックスは手を振った。




