エピローグ「王都に想いを馳せる」
部屋に集合していた女性陣は満面の笑顔を浮かべて盛り上がっていた。
「久しぶりの王都よねぇ。流行りの服とか欲しいわぁ。この服装も動きやすくて気に入っているんだけど、パパの奥さんとしてちょっとお淑やかな感じの服も欲しいわねぇ」
「わ、わたしもお洋服ほしいかも!」
ルナとミナはやはり年頃だけあって、流行の服を気にしていた。
定期的に訪れる商人たちが王都で流行っている服を持ってきてくれることもあるのだが、人気のものは王都で取り合いのようで、アムルスに持ってきているのは流行りではあるものの売れ残りである。
そのためルナたちだけではなく、街の女性陣はあまり買うことはない。
王都で流行の衣類を見ることができるというのは、やはり嬉しいのだろう。
「わたくしも王都は久しぶりですわ。お父様とお母様が王都にいますので、ぜひ皆様にお会いしていただきたいです。わたくしの元気な姿も見てほしいですし」
呪いに蝕まれていたヴァレリーは、アムルスから出ることはもちろん、屋敷の中で苦しむ日々だった。
その時間は長いものではないが、彼女にとってはとても辛く長い時間だっただろう。
その間、両親は王都から離れることはできず、兄であるティーダと義姉たちが面倒を見てくれていた。
元気な姿になったヴァレリーを見れば、ご両親も喜ぶだろう。
「同感ね。私も散々迷惑をかけた人たちを王都に帰しちゃったから、お礼をちゃんといえていないのよね。私がアムルスにいることは隠されているから手紙のやり取りもできないし……私から手紙が欲しいとは思わないけれど、せめて迷惑をかけてしまった謝罪くらいは直接したいわね」
アストリットは顔に酷い怪我をしてしまったことから、痛みと、そして彼女でも持て余してしまう感情のせいで周囲に当たり散らしていた。
無理もない。
顔がすべてとは言わないが、年頃の女性が、一国の王女が顔に怪我をしてしまったのだ。
特にアストリットの場合は、苦しんだ時間も長い。
周囲は、アストリットの罵声を浴びながらも、同情と憐憫から世話をしてくれていた。
彼女のその姿はレダも見ているが、仕方がないとは思っている。
だが、長年近くにいた者はどう思うだろうか。最初こそ親身に接しても、途中で気持ちが変わってしまう可能性もある。
しかし、アストリットはたとえ悪く思われていようと、いや、悪く思われているからこそ、謝罪するべきだと考えているようだ。
前向きなり、新しい人生を歩き始めた彼女のことをレダは心から応援したい。
「ふむ、人間の国の王都か。正直、森しか知らぬ世間知らずなので楽しみだな。美味しいものをたくさん食べたいな」
エルフのヒルデガルダは三百年生きるが、森から出たことは数える程度しかなく、アムルスでも新鮮なのだ。
そんな彼女が王都でどのような反応をするのか楽しみである。
せっかくならば楽しんで欲しい。
「私は王都は久しぶりじゃないのだが、会いたい人はたくさんいるので楽しみなのだ!」
勇者ナオミは、王都を拠点に活動してたため久しぶりという感覚はないようだ。
彼女の友好関係は不明だが、教皇と知り合いというので、さすが勇者としかいえない。
「そういえば、俺も王都は久しぶり……ってほどじゃないか。まだ一年も経っていないからなぁ」
パーティーを追放されたのをきっかけにアムルスに移住することを決めたが、ミナと出会ったことをきっかけに掛け替えのない出会いを得た。
一年前、愛しい家族ができるとは思いもしなかった。
――もしかしたら、ミナは幸福の女神なのかもしれない。
そんなことを思い、レダは微笑む。
「それじゃあ、王都を満喫しましょうねぇ!」
ルナが大きな声を出すと、女性陣は「おー!」と手を挙げた。




