121「無事に帰還」
レダとティーダがアムルスの街へ帰ってきたのは、翌日の夕方だった。
「……もう、限界」
「わたしも、だ」
ふたりは仲良くアムルスの入り口で、ぱたん、と倒れた。
ウェルハルト殿下が仲間を保護するために、アムルスについてそうそう治療を風呂を終えて飛び出した。
もちろん、レダとティーダも後を追った。
先に出立していた冒険者たちに追加して、テックス率いる冒険者がさらに追加されて保護に乗り出してくれたおかげで全員を無事に発見することができた。
しかし、アムルス周辺はモンスターがいなくなったとはいえ、獣などは変わらずいる。
災厄の獣の影響も遠くまで及ばなかったようで、アムルスに向かうまでの道中で傷ついている負傷者も多かった。
そこで、まずレダが見つけた騎士と冒険者を片っ端から治療した。
ちょっとした傷から深い傷まで何も考えずに治療した。
騎士たち冒険者たちは、王都からきたこともあり高額な治療費を請求されるのではないかと不安だったようだが、請求などしないと言って安心してもらった。
全員が無事に見つかり、傷も癒えて、ようやくアムルスに戻ってこられたのが先ほどの話だ。
騎士と冒険者たちは、住民が準備してくれてあった炊き出しを感謝して食べたあとに、順番に公衆浴場を利用して身を清めた。
幸にして、移住者がまだ入っていない空き家があるので、少し狭いだろうが詰め込む形で入ってもらう。
彼らにしてみると、安全な場所で屋根と壁があるのならこれ以上の贅沢はないと感謝してくれた。
寝袋で街の外で寝ることも想定していたと聞くと、アムルスのために立ち上がってくれた人々に申し訳ないとさえ思う。
この考えはレダだけではなく、住民たちの総意であり、使っていない家の解放はもちろん、食事、酒、衣類の提供をすることになったのは言うまでもない。
第一王子が率いてきただけあり、騎士はもちろんだが、冒険者たちも礼儀正しい。
粗暴な冒険者とは明らかに違う雰囲気から、「都会の冒険者は違うなぁ」とアムルスの冒険者が感嘆するほどだ。
確かに、王都の冒険者に対し、アムルスの冒険者たちは「少々粗暴」なところもあるのは否めない。
しかし、気さくで人情深く、頼りになる冒険者たちばかりである。
住民たちと同じく、アムルスに住む冒険者たちは皆家族なのだ。
都会の冒険者たちはアムルスの冒険者と住民たちを見て「この街あったかいな。移住しようかな」と思わせているのだ。
「やあ、ローデンヴァルト辺境伯、レダ。お疲れ様だね。君たちのおかげで私の大切な仲間たちに欠員がでなかった。本当に感謝するよ」
疲れ果てているレダとティーダに、明るい笑みを浮かべてウェルハルトが近づいて感謝を述べる。
「……殿下、お元気ですね」
「俺たち以上に動いていたのに」
礼を取る気力もないレダとティーダの弱々しい声に、ウェルハルトは大きな声で笑った。
「はははは! 鍛えているからね!」
――絶対にそう言うレベルじゃない、と思ったが疲れて言えなかった。




