111「魔石の扱い」④
「レダ先生、さすがにそれは」
「レダよぉ、気持ちはわかるがそれはそれで問題にならないか?」
丸投げしてしまおうと提案したレダに、ルルウッドとテックスが苦い顔をした。
気持ちはわかるのだが、あまりにも丸投げすぎるのではないかと意見も出た。
実際問題として、王家は拳サイズの魔石の取り扱いに難儀しているのだ。
そんな中、十倍以上ある大きさの魔石を献上されても扱いが困るものが増えるだけ。
さらに言えば、これほどのものを献上するのなら、何かしら謝礼があるはずだ。
いくら王家に献上とはいえ、王家にもメンツがある。
受け取ってはいおしまい、というわけにはいかないようだ。
ルルウッドがそう説明してくれた。
「……じゃあ、無理か。良い案だと思ったんだけどな」
「まあ、レダの言いたいことはわかるぜ。こっちは災厄の獣を倒すことは街を守るため、家族を、友を守るためだ。誰かに頼まれたわけじゃねえし、報酬が欲しいわけでもねえ。栄誉だって求めてねえのさ。なのに、戦った全員が一生遊んで暮らせる価値のある魔石が出てきちまった。誰だって扱いに困る」
「確かに、王家が持っていればよからぬことを考える者がいても手を出せないでしょうね。扱いに困ったとしても厳重に管理してくれることは間違いないでしょう。しかし、王家も貰うだけ貰うとはならないはずですし」
「うーん」
レダたちが悩む。
やはりアイテムボックスに入れて忘れてしまうのが一番かもしれない。
ただ、レダとしては常に自分が持っていることになるので、気が気ではない。
アイテムボックスは、所有者であるレダ以外がどうこうできるものではない。
関係者も信頼できる数人なので、よほどのことがなければ情報が誰かに漏れることはないはずだ。
だが、いずれレダが死ぬときに、どうなるのだろうか。
アイテムボックスと共に消滅するのか、しないのか。
国宝を超える魔石をなかったことにしてしまうのも、何か違う気がする。
「――王家に献上することはいいことだ」
静かに顎に手を当てて考え事をしていたティーダが、ゆっくりとレダの提案に賛成した。
「私は、魔石を王家に献上することが一番の選択だと思う」
「ティーダ様?」
「いいのでしょうか?」
困惑する一同だが、ティーダは深く頷いた。
「我が辺境伯家では魔石を管理できない。公爵家と繋がりのある商人が手を出してきたら魔石を守り切ることができるのか怪しい。ならば、王家がいいだろう。ただし、非公式ではなく、大々的に渡してしまえ。報酬なども提示されるかもしれないが、その辺りは任せておけ。そのくらいの根回しはしよう」
くくく、となにやらティーダは笑いだす。
おそらく彼も魔石など取り扱いたくないのだろう。
王家には申し訳ないが、自分たちの心の平穏のため魔石を任せよう。
――四人はそう決めた。




