110「魔石の扱い」③
「真面目な話、実際問題として当家に差し出されてしまっても困る。宝の持ち腐れであることはもちろんとして、管理ができない。大きすぎる魔石をどうすればいいのか考えもできないのだよ」
「……いっそ砕きますか?」
「やめて!?」
レダの提案にティーダが悲鳴を上げた。
普段ならまず口にしない過激なことをレダが言うあたり、レダもレダで参っているのがわかる。
「いや、砕いてしまうのもひとつの手でしょう」
「ルルウッドさんよ、さすがにそれはまずいんじゃねえか?」
「まずいにはまずいですが、砕いてもサイズ的にも希少であり価値は高いでしょう。拳大くらいに砕くことができれば……あ、しかし、国宝級が複数個というのも問題になりますね」
「あんたも十分に混乱しているな」
「……そのようです」
ルルウッドも冷静さを失っているようだ。
テックスも苦笑いだ。
「とりあえず、レダ」
「はい」
「この魔石をしまってくれ。見ていると動悸が……」
精神的な負担が大きかったようで、ティーダは巨大な魔石を見ていたくないようだ。
レダも同じだったので、すぐにアイテムボックスの中に魔石を収納した。
――ほっ、と一同が息を吐く。
「魔石ひとつ、と言葉にすれば簡単だが、あの大きだ。存在感と威圧感が凄まじかったな。いつもの私の執務室に戻って安心する」
レダたちもティーダに同感だった。
勝ち取った勝利の証である魔石ではあるが、国宝級であることから威圧感が凄いのだ。
同じ空間にいると安心ができない。
「先ほどは冒険者ギルドを例に出したが、存在が知られたら……商人たちはもちろん、教会や魔法関係者も欲しがるだろう」
「大金を積んで譲ってくれと言ってくるでしょう。ただし、あくまでも予想ですが、魔石の価値ほどの金を集められはしないでしょうね」
大変なことになると頭をかかえるティーダに対し、ルルウッドは冷静だ。
「国一番の商人が全財産だったとしても、魔石の正当な金額にはならないでしょうね。ただ……正当な金など誰にも払えないと思いますので、譲れるものなら譲ってしまうというのもひとつの手です。よほどの馬鹿でなければ、まず買おうとはしないでしょうけどね」
実際問題として、レダたちが誰かに売ったとして、魔石を利用することができるとは思えない。
予想できるのは、次から次へ魔石が人の手に渡り、その度に価値が高まっていくことだ。
せっかくの魔石は、誰にも利用されず、ただ場所を変えるだけで終わるだろう。
「――もう、いっそ王家に献上しちゃいませんか?」
レダが、半分投げやりに、半分最善だと考えて提案した。




