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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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58「獣」②






 元魔王であり黒猫のノワールは、冒険者ギルドの屋根にいた。

 今夜は月が大きく、明るい。

 元の身体であれば、月見酒を飲みたくなっていただろう。


「――魔王様」

「にゃーん」


 ノワールの背後に控えるのは、魔王四天王のひとり、シェイプだった。

 羊の角を頭部に、メリハリの肉体を持つ、二十歳ほどに見える魔族の女性だった。


「「あれ」が来ます」

「そうだな。「あれ」には随分と苦しめられた。私が魔導人形やらなにやら製作したのは、「あれ」にぶつけるためだ。魔族の被害を出さずに「あれ」を殺そうとして、失敗したがな」

「しばらく眠りについていたはずですが……」

「勇者ナオミ・ダニエルズが戦い、手傷を負わせたのだ。そのおかげでしばらく休眠時間だったのだろう」

「――勇者ナオミは「あれ」と戦い生きていたのですか!?」


 シェイプの驚きに、ノワールは頷いた。


「正直なことを言うと、勇者ナオミには感謝している。彼女が「あれ」と戦ってくれたおかげで、魔族の被害が減った。もっとも、その勇者ナオミによって私は倒されたのだが……民に被害が出るよりよほどいい」

「……魔王様」

「すでに魔族たちは、私の存在がなくとも歩いていける。もう魔王はいらないと思っている。――だが、「あれ」に抵抗できる魔族が何人いる?」

「魔王様以外に「あれ」をどうこうできる者はいません。そもそも、「あれ」は災害と同じです。戦おうとするのも、抗おうとするのも、無駄です。そう教わってきましたし、実際にそういうものです」


 違いない、とノワールは肯定する。


「あれ」は災厄だ。

 台風や地震のように、生き物のことなど知ったことではないと勝手に起きては、傷跡を残す。

 厄介なのは、「あれ」の傷跡は、自然災害よりも、大きく、鋭い。

 一度、蹂躙されれば、最後だ。


「そもそも魔族には抵抗できる存在ではないのです」

「わかっている。なんせ「あれ」には魔術が効かないのだからな」


 ノワールは、過去を馳せる。

 彼が魔王になりたてのとき、自分は絶対的な強者であると信じて疑っていなかった。

 調子に乗っていたのだ。

 その結果、「あれ」に挑み、死にかけた。


 この世界に生を受けて、はじめて――泣き喚き命乞いをした。


 殺されなかったのは「あれ」の気まぐれかなにかだと思っている。

 以来、関わるのをやめた。

 幸いなことに、当時の「あれ」は人間を蹂躙することを好んでいたので、魔族に被害はなかった。

 人間に飽きると魔族を襲い出すが、そういうものだと諦めていた。


「あれ」には魔術が効かない。

 魔族はもちろん、人間が絶対的な手段として信頼している魔術が通じないのだ。



 だが、例外がある。


「あれ」に唯一通じるのは、物理攻撃と、使い手がいなくなって久しい「聖」属性だけ。



「どうしたものか」


 恐るべき存在が近くに来ていることへ、なにもできないノワールは、悲しげににゃーんと泣いた。





 コミック最新9巻が発売いたしました!

 ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!

 双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。

挿絵(By みてみん)

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