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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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57「獣」①





 テックスは、ギルド職員によって運ばれていった。

 彼に必要なのは、休息だ。

 体力と失った血を取り戻すために、よく食べてよく休んでほしい。


「ふぅ」


 レダは、近くにあった椅子に座ると、脱力してしまう。

 何度も、治癒を施してきたが、これほど緊張したときはなかった。

 やはり、命を左右する治療は責任が伴い、重い。


「……レダ」

「ナオミは怪我はないかな?」


 いつもなら元気いっぱいのナオミが、俯いてしまっている。

 彼女にとっても、テックスの重傷は大きなショックだったようだ。


「私は大丈夫なのだ。だけど、たくさん救えなかった」

「……誰もナオミのことを責めないよ」


 ナオミが魔王を倒した勇者であっても、全知全能の神ではない。

 救える者には限りがある。

 それは、レダたち治癒士たちも同じだ。


 だが、気にするな、と安易に言えるはずがない。

 レダ自身、街に戻って来られず亡くなった冒険者たちのために、もっとなにかできなかったか、と悔やんでいる。


 命を大事にしてほしいからと、少し締め付けが強すぎたのではないか。

 初歩的な治癒だけでも、使える冒険者を探すなり、育てるなりしていれば、現場で死ぬことはなかったのではないか。


(……いや、やめよう。今、悔やんでも「もし」はないんだ)


「ナオミ……テックスを助けてくれてありがとう。俺は、大事な友達を失わなくて、本当によかったよ」

「……レダ」


 レダは、ナオミに言うべきなのは、慰めの言葉ではない。

 心からの感謝だと思った。


 大切な友人を救ってくれた、勇気ある少女に、心からのお礼を言った。


 ナオミは、涙ぐむ。が、袖で目元を拭う。

 泣くものか、という彼女の意思を感じた。


「ナオミも身体を休めてほしい。食べられるなら、きちんと食べて。今日は眠って。いいね?」

「……駄目なのだ」

「ナオミ?」


 事後処理とティーダへの報告もあるため、動き出そうとしたレダの腕をナオミが掴んだ。


「あれ、がくるのだ」

「あれ?」

「モンスターは、アムルスに向かってきたわけじゃないのだ」

「どういう」

「モンスターたちは、あれ、から逃げていたのだ。恐ろしくてたまらなくて、ただ逃げようと、一目散に走っていただけなのだ」

「待って、待って、ナオミ。なにを言って」


 動揺するレダの言葉を遮り、ナオミは告げた。




「――災厄の獣が来るのだ」





 コミカライズ最新9巻が発売となりました!

 何卒よろしくお願いいたします!

挿絵(By みてみん)

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