5「死者蘇生」①
その魔術は、気の遠くなるほど過去では当たり前に使われていたと言う。
だが、少なくともここ百年ほど、使える人間は現れていない。
そもそも「死者蘇生」そのものが眉唾物であり、存在しないとさえされていた。
レダも何冊も回復魔術、治癒術の書物を読み漁ったが、死者蘇生に関する術式は当たり前だがなかった。
――だが、目の前に「死者蘇生」が描かれた魔導書の写本がある。
存在を知ることだけならまだしも、何かの間違いで使えてしまったらどうなるのかなどレダでさえ簡単に理解できる。
良くて王家に取り込まれる。
最悪の場合は消されるかもしれない。
「……お父様……なにを考えて死者蘇生なんて。……外で、このような水場で開けて良いものではなかったわね。ごめんなさい、レダ」
「い、いえ、謝罪はいいんだけど、それよりもどうしよう、これ?」
「困ったわね」
腕を組むアストリットは、良いことを思いついたとばかりに笑顔を浮かべた。
「見なかったことにして箱にしまっておきましょう。どうせアムルスでは私以外に開けられないから、屋根裏にでもしまっておけば問題ないわ!」
「……それじゃあ駄目な気がするんだけど」
「……そう、よね。お父様にあった時に、なにも言わないのも変だし……とりあえず使えるかどうか試してみるのはどうかしら?」
「ご、ご遺体に?」
「そ、それも倫理的におかしいわね。そ、そうだわ、ティーダに相談して巻き込んじゃいましょう! 嫌な話だけど、怪我で亡くなる人はいるわ。成功したら、まだ息があったのでギリギリでした、とか……駄目よね」
「難しいですよね」
はぁ、と揃ってため息をついた。
「悩んでいるな、レダ」
「ノワール?」
にゃん、と鳴いて現れたのは、ディクソン家の家族であり元魔王という不思議な経歴を持つ子猫ノワールだった。
「元魔王として助言しよう。死者蘇生などするものではない。――命の価値が下がる」
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