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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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419/630

60「過去の出来事」①

 レダさん(二十代半ば)との出会いでした。


 コミック最新7巻が10/13発売となります!

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 少し気だるげな声に恐る恐る振り返ったシュシュリーの目に映ったのは、二十代半ばと思われる青年が浮浪者の腕を掴んでへし折った姿だった。


「ぎゃぁあああああああああああああああああああ!」

「女の子の顔をナイフで傷つけるなんて……っと、ヒール」

「俺の腕っ、俺の腕がぁ……あれ?」


 くの字にへし折れた腕が一瞬にして治った光景に、浮浪者だけではなく、シュシュリーも唖然とする。

 詠唱もなく、まるで呼吸するように治癒をするなど、やれと言われてできるものではないのだ。


「今日は依頼が上手くいかなかったから機嫌が悪いんだ。痛い目に遭いたくなかったら、さっさと消えるんだ。いいね?」


 そう言って青年が火球をいくつか浮かべると、浮浪者たちはナイフを捨てて、蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。


「畜生! 魔術師かよ!」

「死んじまえ!」

「……口が悪いな」


 口悪く罵る浮浪者たちを「しっしっ」と追い払うように手を振る青年は、シュシュリーと姉に近づくと、しゃがみ込んで笑顔を浮かべた。


「怖かったね。最近、金のない冒険者が浮浪者の格好をして、身元を隠して貴族や金持ちを襲うって事件があるって聞いていたけど……災難だったね」

「はい。あの、お姉ちゃんを」

「よかったら、俺に見せてくれないかな。俺は冒険者なんだけど、回復魔法が使えるんだ。傷が浅ければ、治療をさせてほしい」

「い、いいんですか?」


 シュシュリーは少し不安になった。

 治癒士が高額な治療請求をすることは知っている。

 笑顔を浮かべる優しそうな青年でも、出会ったばかりなのだから、いい人なのか悪い人なのかわからない。

 そんなシュシュリーに気付いたのか、青年は困った顔をする。


「俺は治癒士じゃないから、お金なんて請求しないよ。それよりも、お姉さんがいつまでも痛い思いをするのはよくないからね。さあ、見せて」


 やや強引に話を進めることに抵抗があったが、背に腹はかえられないと思いシュシュリーは姉に声をかけた。


「お姉ちゃん、治癒士様がみてくださるって」

「やめて! 傷ついた顔を殿方に見られたくないわ!」

「でも」

「ごめんね。嫌かもしれないけど、早ければ早いだけ跡は残りにくいし、治りやすいから」

「やめ」


 青年は無理やり姉を抱き寄せた。


「……大丈夫、このくらいの傷なら、跡を残さず消せるよ。少し、我慢してね。――ヒール」


 青年が無詠唱で治癒をすると、姉の顔の傷が巻き戻るように回復した。


「すごい」

「このくらい誰でもできるよ。ああ、でもよかった。こんなに可愛い顔に傷が残らなくて」


 青年は安心すると、立ち上がり、懐からハンカチを出した。

 「血は消えてくれないからね。よかったら使って。」


「ありがとう、ございます」


 姉が震えるてでハンカチを握るった時だった。


「――お嬢様ー! お嬢様! こちらにいましたか、お嬢様!」


 専属メイドと護衛の騎士が見つけてくれたようで駆け寄ってきたのを確認し、シュシュリーが安心したように肩の力を抜く。


「迎えが来てくれたようでよかったよ。もう大丈夫だね」


 青年は安心した様子で、背を向けた。

 冒険者は貴族を好まないと聞いたことがあるので、これ以上関わるのをよしとしないのかもしれない。


「あ、あの、お姉ちゃんを治してくれてどうもありがとうございました! あなたのお名前は?」

「レダ・ディクソン。じゃあね、可愛らしいお姉さんと妹さん」


 青年は手を振り、表通りに出ると喧騒の中に消えてしまった。





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― 新着の感想 ―
[一言] レダ・ディクソンはクールに去るぜ
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