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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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56「若き治癒士ルルウッド」②





 胸に手を当てて真っ直ぐな瞳で見つめてくるルルウッドに、レダは疑問に思う。


「なぜ、そこまで俺、いえ、私の弟子になりたいのですか? ルルウッド様はここユーヴィンで治癒士として活躍してくださったと聞いています。わざわざ私の弟子にならずとも良いのではないでしょうか?」


 ティーダの言葉からルルウッドが貴族だと理解しているので、レダはできるだけ丁寧な話し方をする。


「ディクソン殿。私のことはルルウッド、とお呼びください。あなたのお言葉も普段のようにしてくださって構いません。私は貴族の出身ではありますが、今は治癒士のルルウッドとしてここにいます。どうか」

「……わかりました。それでも、俺は聞きたいんです。なぜあなたが俺の弟子になりたいのか、を」

「……そうですね。いずれお話しする予定でしたので、ここで聞いてもらうのもいいかもしれません。少し情けない話も混じりますが、できれば最後までお聞きください」

「はい」


 どのような話が出てくるか不明だが、レダは真摯に受け止めようと思った。


「私は、あえて名を出しませんが貴族の生まれです。と言っても後継ではなく、好き勝手に生きてきただけの子供でした。そんな私に両親は呆れ、放置していましたが、数年前に――治癒士の適性があることがわかったのです」

「……貴族は決まりこそないが、魔法適性を調べるのが通例だ。魔法使いは重宝されるからね。一族から魔法使いが出たとなれば、下世話な話にはなるが金になる」


 貴族だから金があるわけではなく、貧しい貴族もいれば、金を使ってのしあがりたい貴族もいる。金に困っていない貴族は、それこそ王家や公爵家くらいらしい。


「ローデンヴァルト伯爵のおっしゃる通り、それはそれは見事に両親の目の色が変わりました。私自身、金に困ったことはなく、好き勝手やっていた馬鹿息子でしたが、そんな私を目覚めさせるには十分なほど、両親の目は欲深かったのです」

「それが悪いとはいえないけどね」

「もちろん、理解しています。小さな領地は祖父が管理し、問題ありません。金に困っていないはずの家だったはずが……少しずつおかしくなったのです」


 まず、始まりは兄たちを押し退けてルルウッドを次の当主にしようと母親が言い出したらしい。対して父親は、王家や公爵家に婿に出して繋がりを得たいと言った。

 ルルウッドは、兄と仲がよかったので彼らの立場を奪いたいと思ったことはない。ならば、父の言うように貴族としての責務として婿にいくことを選んだ。

 しかし、どこから嗅ぎ付けてきたのか、魔法使い、しかも治癒士の適性を持つルルウッドを婿にしたいとあらゆる貴族から縁談の申し出があった。さらに、いくらまでなら出せるという金額付きだ。両親は目の色を変えて金勘定をする。

 まるで自分が売られていく家畜かなにかになったような感覚を覚えた。


「それで私はすっかり人間不信です。同情してくれた兄や家人の助けもあって、回復ギルドに登録し、ギルドに守ってもらおうと思いましたが、これまたギルドも腐敗してて笑ってしまいました。それでも、知識と技術だけは学べたので我慢していたのですが、アマンダギルド長が現れ、改革してくださいましてね。ようやく居心地がよくなったのです」

「……個人的にはご両親の気持ちもわかると言っておこう。綺麗事だけでは貴族は続けられないからね」

「もちろんです。今の私には両親のことを少なからず考える余裕がありますが、当時は無理でした。と、言うのが私の簡単な身の上です。こんな感じで家から逃げてがむしゃらに治癒士として家に頼らず、独り立ちしようとしている私の耳に、よくレダ・ディクソン殿の話が届いていたのです」

「俺の?」

「ええ」


 最初は、とある冒険者チームに優れた魔法使いがいるが、いいように利用されているという嘲笑だった。

 次第に、実は治癒士ではないかと噂され、いくつかの貴族が動いていると言う。

 しかし、話題にならないと思ったら、しばらくして王都から離れたアムルスで良心的な治癒士がいると噂になった。

 ルルウッドは疑念を抱いたが、次から次へ噂が、事実だとして情報が届く。

 ついには、アストリット王女まで見事に治癒したというのだから驚きだ。


「お会いしたことはありませんですが……私の理想の治癒士がレダ・ディクソン殿でした。アマンダギルド長もことあるごとにあなたのことを褒めていましたし、協力者である王子殿下もあなたの話題を出していましたので……初めてお会いしたのに、以前から知っているような感覚です」

「……それはなんというか」

「兄は私の好きなようにやりなさいと、言ってくれました。両親を隠居させ、当主となってくれたので、私は本当の意味で治癒士に専念できます。そんな折、ローデンヴァルト伯爵領へ治癒士を送りたいという話が出ていたので飛びつきました。


 再びルルウッドは膝をつき、胸に手を当てた。


「どうか、私を――レダ・ディクソン殿の元で働かせていただきたい。私は私が理想とする治癒士になるため、あなたに弟子入りしたいのです!」





 ルルウッドくんは割と熱血な子です。


 コミック最新7巻が10/13発売となります!

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