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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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28「治療の時間」②




「お父さん!」

「パパっ!」


 ローデンヴァルト伯爵家別邸に、再会した恩人ローゼスと、彼女の妹分ロロナ、そして裏路地にひっそりと隠れる人々――総勢四十人を連れて戻ってきたレダに、ミナとルナが抱きついてきた。


「お父さん、おかえりなさい!」

「つーか、パパぁ。まだこんなに患者がいたの? ……あれ? もう治しちゃった?」

「ただいま。うん、連れてくるにも怪我をしているからね、その場で治したよ。彼らには、お風呂、食事、服をお願いね」

「はーい!」

「まっかせて!」


 娘と妻の頭を撫でたかったが、衛生面が決して良くない場所で生活していた患者を診たため我慢する。

 ティーダが持ってきてくれた水桶で手を洗うと、礼を言った。


「ありがとうございます、ティーダ様」

「礼には及ばない。それにしても、まだこれだけの人間が裏通りにいたのか」


 ティーダもまた腕捲りをして、患者の面倒を見ている。

 レダがいない間は、ユーリが患者を引き受けていたのだが、彼女は正確なヒールをすることができるが、範囲を広げたヒールを得意としない。できないわけではないが、このような事態であるからこそ、確実に治す選択をしている。

 重傷者から優先になるのは当たり前だが、患者を待たしている間に、患部をきれいにする、どこが悪いのか問診するなど、することは山のようにある。

 怪我ではなく病気のものは、屋敷の別の棟に移動させて待っている医者に診てもらっている。

 怪我には、ディクソン一家とティーダたち。病人は、マールド・ローディンバルトと少ない部下、そしてアムルスから同行してもらった医者と冒険者に任せている。

 ボンボとテックスは、冒険者ギルドがレダたちの動きに感づいて何かしてくると予想して見張りをしている。

 すでに一度、襲撃こそボンボが防いだが、屋敷を囲んでいたため、二度目もあると予想していた。


「はい。怪我人は出てきてくれましたけど、ただ隠れて生活をしている人たちは、俺たちを窺ってはいましたが出てきてくれはしませんでした。おそらく、どうしていいのかわからないんだと思います」

「……無理もない。ここにいる患者たちもほぼ無理やり連れてきたのだ。警戒するのは当たり前だ。このような言い方をしたくはないが、五体満足でいるのなら、後回しにしよう。今は、怪我人と病人を優先することで、彼らが街の中に隠れている人々に我々が悪人ではないことを説いてもらおう」

「そうですね。それにしても、よく冒険者ギルドはこれだけの怪我人を無視してきましたね」


 治療を終えた者、治療待ちの者を含めて二百人近くの人間がいる。

 当たり前だが、ほぼ全員が冒険者だ。

 剣士、魔法使い、と得意分野は違うのだろうが、冒険者ギルドに雇われダンジョンを探していたことは共通している。


「まだ負傷者、病人がいる可能性がある。……だが、まずはこの場にいる者たちからだ」

「はい」

「人手が少ないことが悔やまれる。もっとレダやユーリ、ネクセンのような治癒士がいてくれれば……いや、すまない。こんなことを言っても解決しないのはわかっているんだ」

「気持ちはよくわかります」


 ティーダも疲れているのだろう。

 領主には無礼かもしれないが、友人としてレダはティーダの肩を叩き「頑張りましょう」と笑顔を見せた。

 こうして治療は続いていった。





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