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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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17「ユーヴィンの現状」⑤





「なんてことはないよ。奴は弱い冒険者を切り捨てたんだ」

「切り捨てた?」

「いや、違うか。使えなくなった冒険者を切り捨てたんだよ」


 暗い顔をしてマールドがユーヴィンの過去を明かしていく。


「回復ギルドから治癒士が派遣されなくなって、冒険者たちは慎重になった。それはそうだ。高額でも回復してもらえるなら生きていけるが、治癒士がいなければどれだけ金を積んでも怪我は治らない。医者はいるが、怪我人や病人の数が多すぎる。荒くれ者たちから医者を守るという名目で、ギルドが囲ってしまい高額請求が始まった。回復薬もすべてギルドの管理下だ」

「――なんということだ」

「そんな状況下だ。冒険者たちは今まで以上に慎重になる。パーティーによっては、拠点を変えた。しかし、それは、ダンジョンを探そうとしているベニーにとって容認できない。そこで、危険度の高い依頼の成功報酬を釣り上げた」

「そんなのに引っかかる冒険者も冒険者よねぇ」


 ルナが呆れた声を出すが、誰も反論しない。

 冒険者に危険は付き物だし、命を簡単に失うこともある。

 だからこそ、成功報酬で依頼を受けるのではなく、依頼を精査して自分の実力で問題ないか判断する必要がある。

 しかし、金に余裕がなければ、そんなことを考える暇はないし、それなりに強ければ自信もあるので金を第一に考える冒険者は多い。


「ルナ嬢ちゃんの言うことはわかるが、冒険者っていうのはそんなもんだ。慎重な奴らなら、あるのかわからねえダンジョンを探して躍起になったりしてねえって」


 肩をすくめるテックスに、レダも同意するように頷いた。

 冒険者は多種多様の目的がある。

 単純に生活費を稼ぐ者。一攫千金を狙うことや、いずれ貴族や大きな商人になりたいと野望を抱く者たちもいる。

 他には単純に未知を求めて冒険する者も多い。

 魔術が使える、剣の腕に覚えがある、自分が強者だと示したい者も少なくない。

 貴族や王族に抱え込まれ安定した日々をもとめるために、冒険者になって名を売ろうとする者だっている。

 他には、夜盗上がりや、騎士や兵士がなんらかの事情で冒険者に身分を変えることもある。


 堅実な冒険者なら、そこそこの実績を稼いで貴族のお抱えや、商人と専属契約を結ぶなどしている。

 ユーヴィンにいる冒険者の全員ではなくとも、大半が、ダンジョンを見つけて一攫千金を狙う者たちなのだろう。


「ギルドはダンジョンがあるかもしれない危険地帯に冒険者を送り込み、少しずつ開拓していった。だが、ダンジョンは見つからず、怪我人は増えていく一方だ。成功報酬こそ払っていたが、怪我人や冒険者業を営めない者はあっさり切り捨てていく。声を大にして文句を言おうものなら、ギルドから恩恵をもらっている冒険者によって始末されるか、売られておしまいだ」

「人身売買までまかり通っているのか! お前はなにもしなかったのか!」

「何度も言うけど、僕には手も足も出なかった! 権力がどうこうではなく、人を動かす力も、魅力も、そして抱えている戦力も、すべてが上まっていた。そんな相手になにをどうしろと言うんだ!」


 ティーダの言っていることも、マールドの言っていることもわかる。

 それでもやりきれない。


「使えない冒険者たちの惨状は見ただろう? 彼らに声をかけて、安い労働力として雇って使い潰す商人もいれば、女性冒険者なら娼婦として働かされることもある。路上で生活できているだけなら、まだマシだよ」

「――貴様」

「僕だって、なにもしていないわけじゃない。監視がついているので、君に連絡できなかったが、証拠は集めてある。領主のティーダなら、ベニーを断罪できる! 僕は、君にユーヴィンの状況が伝わる日を待っていたんだ!」




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書籍、コミック1〜4巻とそろってお楽しみいただけると嬉しいです!

何卒よろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] これは…ついにレダさんの治癒魔法が拷問に活用される時がきましたな…
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