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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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15「ユーヴィンの現状」③





「この街ユーヴィンでは、僕はなにも権限を持っていないんだ」


 マールドの言葉に、レダたちは理解できず、ティーダはさらなる怒りで体を震わせる。


「なにを言っている! 仮にも、領主の名においてこの街の管理者に任命した貴様に権限が何もないとは言わせないぞ!」

「本当に権限などないんだ! 僕には、この街に対してどうこういうことさえできない!」

「まさか冒険者ギルドに街の運営を丸投げしているのか!」

「違う!」


 初めてマールドが、大きな声を出した。

 ティーダが言葉を待つと、マールドは震える声で吐き出した。


「この街は冒険者ギルドが運営しているんだ」

「だから、貴様が放棄したからではないのか!」

「そうじゃない! この街は、ユーヴィンは――冒険者ギルドに、いいや、冒険者ギルド長ベニーに支配されているんだ!」


 屋敷のエントランスに響く声に、誰もが目を見開く。

 伯爵家の領地にある、貴族の在中する街で、いくら冒険者ギルドの長とはいえ貴族をないがしろにして街を支配するなど聞いたことがない。

 もしも、そんなことが実際に起きているのなら、前代未聞だ。


「馬鹿な……貴様と冒険者ギルドの折り合いが悪いことは知っているが、支配など」

「僕だって、ティーダのように住民に愛されたかった。だから、最初は頑張ったんだ。積極的にギルドに顔を出してこの街のために協力し合い、人々と交流し、困っていれば助け、孤児への援助だって。しかし、冒険者ギルドが活気づけば活気づくほど僕の言葉は届かなくなった」

「報告と違う」

「君への報告だって、常にギルドのチェックが入っていたんだよ。このままではいけないと思っていたときに、君が内々でユーヴィンを調べていることに気づいたときには、ようやくこの街が救われると安堵したものだよ」


 事前に聞いていた話では、マールドはユーヴィンを運営するに積極的ではなかったという。しかし、彼の口から出てきた言葉は真逆だ。


「貴様の言葉を信じられるのか?」

「ギルド長に聞いてみろ、と言いたいけど、きっと僕とは逆のことを言われるだろうね」

「あの、お話をさえぎってしまい申し訳ないのですが、ちょっと質問させてください」


 恐る恐るレダが手を挙げて、マールドに問う。

 マールドはレダのことを知らず若干の戸惑いは浮かべたが、すぐに構わないとうなずいた。


「ギルド長にあなたの力が及ばなかったとはいえ、ほかの冒険者にはどうだったんですか? ひとりくらい、話を聞いてくれる人がいなかったんですか?」

「数人はいたが、今は行方がわからない」

「ギルドが消したんですか?」

「いや……可能性がないわけじゃないが、おそらく依頼中に負傷してしまった可能性のほうが大きいだろうね」


 マールドは、悔し気な顔をした。


「俺も冒険者ですが、ギルド長に服従していたわけじゃありません。もっと話を聞いてくれる人はいなかったんですか?」

「欲に目がくらんだ冒険者に僕の言葉が届くはずがないだろう! 君は知っているのか? この街の近くにダンジョンがある可能性があることを!」

「え、ええ」

「ダンジョンを見つければ、ギルドから、国から莫大な金が手に入る! 冒険者たちは目の色を変えて毎日探索しているのさ! 危険があろうと、未開拓の奥深くに入り込み、ときには冒険者同士で足を引っ張りあい、あっという間にけが人だらけさ!」

「待て! ダンジョンに関してはないものと諦めたのではなかったのか!」


 ティーダの叫びに、マールドは肩をすくめた。


「ギルド長のベニーが諦めるわけがないだろう! 奴は、王都で失態を犯してユーヴィンに飛ばされたギルドの人間だ! ダンジョンを何が何でも見つけ、その功績で返り咲きたいんだよ! そのためなら、数いる冒険者がどれだけ犠牲になっても構わないんだ!」

「まさか、ベニーギルド長が」

「残念なことに、ダンジョンを何が何でも見つけたいのは僕ということになっているんだよ。わかるかい? 僕がダンジョンを見つけろと、冒険者ギルドに無理やり動かしている状況になっているんだ! 欲にくらんだ冒険者はもちろん、そうでない冒険者も僕に不信感を持って話など聞いてくれない! 気づけば敵ばかりで、ユーヴィンはギルドの支配下さ!」





本日14日、コミカライズ5巻が発売です!

何卒よろしくお願い致します!

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