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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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13「ユーヴィンの現在」①





「――これは、酷いな」


 ローデンヴァルト伯爵領にあるユーヴィンに到着したレダは、手入れが行き届かず蔦だらけの壁を潜ると、目に入ってくる光景に眉をしかめた。

 それもそのはず。アムルスの町よりも整備された中規模な町には、力なく横たわる人々がいた。

 性別関係なく子供から老人まで、怪我をしている者、していない者が様々だ。


 アムルスから数日の移動をして疲れたレダたちでは比べ物にならないほど、目に入る住民たちから覇気も生気も感じられない。

 道路にはゴミが散乱し、悪臭を放つ。冒険者として各地を転々としてきたレダ、テックス、ナオミや、過酷な状況下で生活したことのあるミナとルナ。場慣れしているユーリとティーダはさておき、貴族出身のヴァレリーや王族出身のアストリットは耐えられない臭いだろう。

 路地裏には娼婦と思われる女性が立っている。冒険者風の男性に声をかけるも、その声に力が入っていない。声をかけられた男性も、娼婦を相手にすることができるのかどうかも怪しいほど痩せていた。


「……いくらなんでも、これは」


 お人好しで、けが人がいれば放っておけないレダでさえ、なにをどうしていいのかわからず硬直してしまうほどだった。


「報告を受けて知っていたが、実際に目にすると想像を超えている。まさか、これほどまでにマールドが無能だったとは……アムルスにかかりきりだった私も悪いが、なぜ報告をもっと早く! いや、このような状況を問題なしとして放置できたのだ!」


 ティーダが怒気を吐き出すが、領主でありながらユーヴィンを親類に任せていた自分も悪いのだと承知しているため、それ以上の怒りの言葉を飲み込んだ。


「……おとうさん」

「辛いなら見ないほうがいい」

「ううん。平気。でも……早く助けてあげないと」

「そうだね。だけど――」


 ミナの訴えに、つい「どうやって?」と口にしそうになったレダが慌てて口を噤む。

 ひとりひとり治療をしていたらキリがない。

 そもそも路地で寝転がる人がけが人なのか、病人なのか、それとも金がないのか判断ができず。間違いなく、見えない場所に弱った人々がいるだろう。

 その一方で、健康体と思われる冒険者や商人が遠くに見えるので、ユーヴィンに住まう全員が全員助けを求めているわけではない。


「まずは、この街を任せているマールドの屋敷に行こう。その次に、協力を求め冒険者ギルドだ」

「ティーダ様、なんなら俺がギルドと話をつけてきてもいんだが? ナオミ嬢ちゃんを貸してくれれば、あっという間だ」


 テックスの提案は間違いなく力で解決してようとするものだった。

 一流冒険者でありながら、多くの冒険者に慕われ信頼されるテックスらしくない手段だが、彼の目にもこの街がひどく映っているゆえだろう。


「そうしてくれ、とは口が裂けても言えん。そんなことをすれば、すでに信頼を失っている私が身動きできなくなる。だが、最悪の場合は、すまないが任せたい」

「ああ、任せてくれ」

「まかせろ! どーせこんな街にロクなギルドはないのだ! ぶっ潰したって誰も文句は言わないのだ!」


 ナオミの推測は合っているのかもしれないが、憶測で物を言っても始まらない。

 レダたちは、急ぎ、この街を仕切っているはずのマールド・ローデンヴァルトの屋敷に急ぐのだった。





投稿日を間違えたまま気付きませんでした。

間が空いてしまいましたが、最新話です。


14日にコミカライズ5巻の発売となります。

何卒よろしくお願い致します!

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