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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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57「エルフとダークエルフ」①




「ここがレダの職場なのねぇ」


 診療所を見渡すフィナは、尖った耳をぴこぴこと揺らしながら興味深げにあちらこちらに視線を向けている。

 すでにレダは仕事に戻って一緒にはいない。

 ミナもレダの手伝うために、診察室にいる。

 残されたのはルナだけだ。


「……気まずいんですけど」


 ルナがそう呟くのは無理もない。

 顔見知りが多い診療所で、褐色の肌と尖った耳を持つ美少女がうろちょろしているのだ。目につかないはずがない。

 さらにフィナはレダの名を何度か口にしているため、関係者だと患者たちも察した。

 今日は軽傷者や、軽い症状の病気、腰や肩の痛みなどの患者が多く、また知り合いと雑談している治療済みの人や、もともと元気な人もいる。

 つまり、待ち受けにいる人たちは、フィナに興味を持つ余裕があるのだ。


「あの、お義母様。よかったら、家のほうでお茶でも」

「あら、お邪魔かしら? できれば、レダの職場をちゃんと見たかったんだけど」

「邪魔ってわけじゃ」


 気の強いほうだと自負しているルナも、愛する夫の母だといまいちいつも通りに出られない。

 義母であることもそうだが、見た目はあどけない子供だ。なにかとやりづらかった。

 ルナがフィナを母と呼んだことで、患者たちの興味がざわつきに変わる。

 しまった、と舌打ちしたときには、もう患者たちがはっきりとフィナを認識していた。


「……先生の嫁かと思えば、母親とは」「なるほど、先生の趣味の理由がね、うん。よくわかる」「幼女幼女!」「かわいらしいお母様ね」「……レダ先生のパパになりたい」


 いくつかひっかかる言葉があったが気にしないことにした。

 診療の邪魔にならないが、明日はフィナを一目見ようと野次馬が来院しそうな予感がする。

 基本的に、怪我人以外も来てもいいようになっており、お茶なども用意されているが、喫茶店ではないのだ。


「困ったわねぇ」


 頬に手を当て、どうしようかしら、とルナは考える。

 義母に嫌われたくないので普段通りに対応できないのが困る。

 フィナも迷惑をかけているわけではなく、邪魔にならないように気にしながら待合室を見ているだけなので、あまり苦言もしたくない。


「……ヴァレリーに丸投げしようかしら。得意そうだし。いや、だめよ。パパの最初の奥さんとしてお義母様に気に入られないと。実家の味とか教えてもらいたいし」


 ルナが意気込んだ時だった。

 診療所の裏手から、ヒルデが慌てたように現れた。


「ルナ! レダのお母様がいらっしゃったと聞いたがどこにいる? ご挨拶をしたい!」

「あんたね、院内ではお静かに、でしょ」

「……おっと、失礼した。それで、お母様はどこに」

「ここよー」

「ん?」


 どこから聞いたのか、ヒルデはフィナに会いに来たようだ。

 周囲を見渡すヒルデに、ルナが指差し、フィナが手を上げる。


「――――――」


 ヒルデはしばらくフィナを凝視すると、目を丸くして大声を上げた。


「なぜこんなところにダークエルフがいるのだ!?」





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― 新着の感想 ―
[良い点] 六章 57「エルフとダークエルフ」① 更新ありがとうございます。 [気になる点] エルフとダークエルフは仲が悪いという設定なのでしょうか? [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。…
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