7「手紙と驚きの内容」②
「ちょっとパパ!? どういうこと!? ミナの母親が見つかったって、なんで国王のおじさんがそんなことを手紙で!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
動揺するルナを落ち着かせ、レダは手紙を読み進めた。
そして、ルナ以上に動揺してしまう。
額から汗が伝い、顎を濡らす。
「――そんな馬鹿な」
手紙に書かれていた内容はとてもじゃないが、信じがたいものだった。
(ミナの母親が聖女様? しかも、今、この町に向かっているって、どういうことだよ!?)
心臓の音がやけにうるさい。
手紙を持つ手が震えてしまう。
ルナの母親が現れたときは、心の準備をする間もなかった。
しかし、今回は違う。
レダ自身、ミナの母親を探していたというのに、なぜこうも不安なんだろうか。
(――そうか。俺は、今のみんなの関係が崩れてしまうことが怖いんだ。ミナの母親がどんな人なのか知らない。だけど、引き取りたいと言われたら、俺はどうすればいい?)
「おとうさん?」
「パパ!」
「……すまない。驚いちゃったんだ、ごめんごめん」
「それで、ミナの母親はどんな人なの?」
「え? わたしの、おかあさん? え? どうして?」
レダとルナが受け入れ難く動揺しているように、ミナもまた驚きを隠せていないようだ。
(思うことはたくさんある。だけど、ミナにとってはいいことだ)
「ミナ」
「お、おとうさん?」
レダは娘と目の高さを合わせ、ゆっくりと告げた。
「ミナのお母さんが見つかったんだ」
「え?」
「そして、この町に来るそうだよ」
「……どうして?」
「どうして、って、それはミナに会いにくるためだよ」
まさか「どうして?」と返されるとは思わなかった。
少し驚いたが、伝えるべきことをミナに伝えなければならない。
「で、でも、わたしにおかあさんはいないって」
「うん。ずっと探していたけど、見つからなかったから。だけど、いたんだ。ミナ、よく聞いて。お母さんがいたことは喜んでいいことなんだよ」
「――や」
「ミナ?」
「いや!」
「ど、どうしたんだ、ミナ?」
突然の拒絶にレダが驚いた。
まさか母親の存在を嫌がるとは思わなかった。
ルナの母であるエルザが現れたときだって、ふたりの仲がよくなることを願っていた子が、まさか自分の母親を拒むとは思いもしなかったのだ。
「わたし、このままでいい! おとうさんたちだけでいい!」
大声でそう言い放ったミナはレダに背を向けて走り出してしまう。
「待つんだ、ミナ!」
レダが手を伸ばすが、娘を止めることはできなかった。
追いかけようとするレダの腕をルナが掴む。
「落ち着いて、パパ。あたしに任せて」
「だけど」
「あたしだって突然ママが現れていろいろ動揺したし、悩んだりしたんだからミナの気持ちはわかるわ。それに、お姉ちゃんらしいことをさせて」
「――頼む」
「お任せ!」
ルナは笑顔を浮かべると、地面を蹴って妹を追う。
彼女の足ならミナに追いつくことは容易いだろう。
それに、レダと違い、血を分けた本当の姉妹だ。話もしやすいだろう。
この場で娘たちが帰ってくるのを待ちたかったが、診療所での仕事がある。
レダは唇を噛みしめ、診療所の中に入っていくのだった。
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