表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

260/620

17「娘の好み」




 ルナの母親エルザの来訪という慌ただしい出来事があり、ルナの新しい一面を知ることができた。

 その後、患者達を同僚と協力して治療しながら、町の人たちの交流も進めていく。

 診療時間を終え、いつもの夕食の席につくレダだったが、彼の最大の試練はここからだった。


「それでね、ミッシェルくんがね」


 夕食を囲む食卓で楽しそうに今日の出来事を語ってくれるミナ。

 娘の一日を聞くことができてレダも嬉しくある。

 ただ、問題もあった。


(さっきから、ミッシェルくん、ミッシェルくんって、その子が彼氏なのかぁああああああああ!?)


 ミナの親友である宿屋のメイリンの話で始まった会話も、気づけばミッシェルくんの独壇場だ。

 彼が何者なのか怯えるレダは、家族が作ってくれた食事の味もわからないほど緊張していた。


(ま、まさか、言われちゃうのか……ミッシェルくんが彼氏だと、お付き合いしていると?)


 気づけば背中に嫌な汗をかいていた。

 喉が渇く。

 心臓が走ったあとのようにうるさい。

 これほど緊張したことはあっただろうか。

 いや、ない。


(ていうか、嫌な予感しているのって俺だけ? どうしてみんなニコニコできるんだ!?)


 レダ以外はミナの話に耳を傾け、笑顔で相槌を打っている。

 ときおり、質問を混ぜながら、みんなで楽しく談笑しながら食事が進む。

 だが、レダはそうはいかない。

 彼氏ができた疑惑がある娘から、ひとりの少年の名が何度も飛び出すのだ。

 冷静ではいられなかった。


(このままでは駄目だ。勇気を出して、ミッシェルくんのことを聞くんだ。レダ・ディクソン。お前ならできる。もしミナの彼氏でも祝福してやればいいじゃないか! そうだ! それが父親ってものだろう!)


 自らを必死に叱咤して、震えるてでグラスを掴むと勢いよく水を飲み干した。


「み、ミナさんや」

「おとうさん? どうしたの?」

「も、もしかして、ミッシェルくんはその、なんというか、きっとあれなんじゃないかな?」


 あれ、ってなんだよ、と自分の情けなさに泣きたくなる。

 彼氏という単語が口から出てくるのを拒絶してしまった。

 だが、娘には伝わったのか、ぱぁっと顔を明るくしたミナが大きく頷く。


「あ、おとうさん、わかっちゃったの?」

「わ、わかるとも、わかりますとも。ええ、父親ですから」


 にこにこしている娘に対し、レダは胃痛を感じ、冷や汗を流している。

 ミナの返答次第では、心が砕けてしまう可能性もあった。


「あのね……ミッシェルくんってメイリンちゃんのことが好きなんだよ」

「――へ?」


 まるで予想とは違った娘の言葉に、間の抜けた声が出る。


(ミッシェルくんってメイリンちゃんが好きなの? ミナじゃなくて? どういうこと?)


 訳がわからず助けを求めるように、女性陣に視線を向けると、呆れた顔をされた。


「あの、レダ様。ミナちゃんのお話を聞いていましたか?」

「ミッシェルくんがミナの彼氏なんじゃないの?」

「レダったら、なにも聞いてないじゃないの。私たちは、ミナに最近仲のいい男の子がいるのねって話をしてたのよ」

「えっと、その男の子がミッシェルくんでしょ?」

「どうやらメイリンちゃんを好きなミッシェルくんが、親友のミナちゃんにいろいろアドバイスをもらっていたそうですわ」

「え? それって、つまり」


 レダの疑問に、ヴァレリーとアストリットが頷いた。


「やれやれ。それを見たケートが勘違いしてしまったようだな。まったく、あの子は早合点がすぎる」


 嘆息したのはヒルデガルダだった。


「あれ? じゃあ、ミナに彼氏は?」

「もぉ、おとうさんったら。わたしに彼氏なんてまだはやいよ!」


 最大の疑問は、娘本人から否定された。

 レダが満面の笑みを浮かべる。


「そ、そっか、そっか! うん。ミナにはまだ彼氏とか早いもんな。うん。まあ、でも、ミナは将来美人になるのは間違いないから、いつか素敵な彼氏を見つけるんだぞ」

「……このおっさん、彼氏がいないとわかるとこの態度って」


 呆れた声を出したのはアストリットだ。

 しかし、ヴァレリーもヒルデガルダも同じように苦笑いだ。

 レダはそんな女性たちの視線など気にせず、上機嫌だった。

 少なくとも、今はどこの馬の骨とも知らぬ少年に娘を奪われることがないとわかっただけで上々だ。


「ところでぇ、ミナはどんな子がタイプなのぉ? お姉ちゃん知りたいなぁ」

「こら、ルナ! 余計なことは言わなくてもいいの!」

「私も聞きたいわ。ミナってどんな男の子が好きなのかしら」

「ちょっと、アストリット様まで!」

「いいじゃない。せっかくだから、今後のためにいろいろ聞いておきましょう」


 ルナとアストリットのせいで、女性陣の興味はミナの異性への好みに移った。

 こうなると唯一の男であるレダはなかなか会話に参加しづらい。

 しかし、


(ミナの好きな男の子のタイプか……父親として知っておくべきかもしれないな)


 レダも興味がない訳じゃなかった。

 ミナはしばらくかわいくもじもじすると、ちょっとだけ照れたようにはにかんだ。


「うーん、とね。おとうさんみたいな人がいいな!」

「――ミナ」


 この日、レダは初めて男泣きを経験した。

 同時に、娘のいる生活が幸せだということを、これでもかというほど噛み締めるのだった。





がうがうモンスター(https://futabanet.jp/monster)様にてコミカライズが6話まで公開中ですので、ぜひぜひご覧ください!

ニコニコhttps://seiga.nicovideo.jp/comic/49125)でも公開中です!


【お知らせ!】

書籍1巻2巻、コミカライズ1巻は好評発売中です!

何卒よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] レダにつかの間の平穏が訪れた〜 皆んな寝てから赤提灯でおでんを味わうレダパパでした。
[気になる点] 親馬鹿ですね(。-∀-)ニヒヒ [一言] にゃーん♪  ∧∧ (・∀・) c( ∪∪ )
[良い点] 17「娘の好み」 更新ありがとうございます。 [気になる点] ミナもやりますなあ(苦笑) レダ、メロメロ?! [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ