表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

221/620

46「王都から来た嫌な男」②




「ふん。さすが田舎だな。貴族の屋敷が、まるで犬小屋だ」


 唾とともに吐き捨てたのは、金髪を伸ばし、真ん中で分けた二十代前半の青年だった。

 使用人が呼びにいくよりも早く、勝手に屋敷の中庭にまで入り込んでしまった青年――オランド・ケラハー。

 背丈は高く、すらりとし、容姿も甘い雰囲気を持つ、美青年といえるだろう。

 しかし、彼は、その整った顔を歪めて、ハンカチで鼻を押さえている。


「王都と違って、田舎臭くてかなわないな。よく、こんな場所にいられるな、アストリット」

「……オランド」


 アストリットがオランドを睨みつけた。


「なにしに来たの?」

「おいおい。元とはいえ、仮にも婚約者だった俺に、ずいぶんつれない態度じゃないか」

「いいから、なにをしに来たのか聞いているのよ!」

「せっかちな奴だ。未来の夫が、わざわざこんな田舎臭い辺境まで迎えに来てやったというのに」


 呆れた、とばかりに肩を竦めるオランドに、アストリットが柳眉を歪めた。


「夫ですって? あなた、私の婚約者から外されたことを覚えていないの?」

「もちろん覚えているさ。キャロライン様も馬鹿なお方だ。俺のような優良物件を自ら手放すとは……なにが気に入らなかったんだか、理解に苦しむ」


 髪をかき上げながらそんなことを言ったオランドに、アストリットは唖然とし、この場にいた誰もが信じられないと目を丸くする。


「――えぇ? この男馬鹿じゃない? 自分のこと褒めすぎてきもいぃ」

「うん。なんかやだ、おえってなるかも」

「私の好みとは程遠いな。むしろ、嫌悪のほうが強い」


 ルナ、ミナ、ヒルデガルダの順で、それぞれオランドに対する感想を言い放つ、三人娘たち。

 普段、誰かを悪く言うことのないミナでさえ、かわいらしい顔をしかめて、嫌悪を露わにしていた。


「――私にあんなことを言っておいて、よくものこのこと顔を出せたわね!」

「あ? なんのことだ?」


 怒りを露わにし、今にも掴みかかりそうなアストリット。

 対し、オランドは心当たりがないようで首を傾げている。


「――っ、私を不良品と言ったことよ!」

「なんだ。そんなことで怒っていたのか?」

「そんなことですって!?」

「お前が、不良品だったのは事実だろう?」

「――な」


 アストリットが絶句する中、誰もが耳を疑う。

 オランドが、アストリットに対し、『不良品』と暴言を吐いたことは知られていたが、まさか悪びれることなく、改めてもう一度、しかも本人を前にして平然と言って退けるとは思わなかった。


「だが、優秀な治癒士のおかげで、顔は元どおりだ。よかったな、アストリット。お祝いに、また婚約者に戻ってやるよ。今のお前なら、俺の妻にもふさわしい」

「はっ。よくもそんなことがいえるわね! 私が今さら、あんたなんかと結婚するわけがないでしょう!」


 アストリットが体を震わせ、顔を真っ赤にして、大きな声を上げる。

 しかし、オランドは気にするどころか、むしろ余裕の表情を浮かべていた。


「意地を張るのはよせよ。お前は、昔から俺に惚れていただろ? 口でどうこう言おうが、俺のことを拒めるわけがない」

「――ぷ」

「ぷ?」


 アストリットが再び体を震わせた。

 だが、今度は怒りに震えてではない。

 むしろ、その逆だった。

 彼女は、お腹を抱えると、オランドを馬鹿にするように、


「ぷっ、ぷふっ、ふふふふっ、ふはっ、あははははははははははははははっ!」


 大笑いしたのだった。





がうがうモンスター(https://futabanet.jp/monster)様にてコミカライズが4話まで公開中ですので、ぜひぜひご覧ください!


ニコニコhttps://seiga.nicovideo.jp/comic/49125)でも公開中です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  いきなりでなんですけど、サブタイトルを”王都から来た嫌な男”から”王都から来たバカ男”もしくは”王都から来た咬ませ犬”(レダと彼の家族たちの絆が深まるための、って感じの)にしませんかぁ………
[良い点] 四章 46「王都から来た嫌な男」② 更新ありがとうございます。 [気になる点] 国王様、速やかに極刑を課してください、とお願いしたくなるレベルのアレですね。 [一言] こんなのは、はやく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ