表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

164/621

57「レダ対ニュクト」②




「黙れっ、黙れっ、黙れっ! しかたがないじゃないですかー! あのジールについていけるはずがなかったんですー!」


 ニュクトが、涙を流し叫び続ける。


「そもそもレダのせいじゃないですかー! ジールを狂わせてー、追い詰めてー、殺したんですー!」

「もしかしたら、俺にも責任があるかもしれない。俺はちゃんとジールと向き合うべきだったかもしれない。だけど、ニュクトは向き合ったか? 彼のそばにいることだってできたのに、見捨てたんじゃないのか?」

「うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ! 説教してくれなくていいですー! はいー、認めましょうー! わたしはー、確かにジールを見捨てましたー! そりゃー、そうですよー! あいつー、自分のことしかー、考えてなかったんですもんー」


 ニュクトはジールを見捨てたことを認めた。


「だけどー、愛してもいたんですー! 見捨てたからー、想いを自覚したからー、もうジールが死んじゃっているからー、せめて復讐だけでもー、したかったんですー! それのー、どこがー、悪いですかー!」

「俺を憎むのなら、俺の前に現れればよかったんだ。お前のしていることは、復讐じゃない。子供の八つ当たりだ」

「だったらなんだっていうんですかー! 別にー、こんな町の連中がどうなろうとー、知ったこっちゃないですー! 死んだってー、痛くも痒くもないですー!」

「……そうか、ならもういい。最後に説得したかったんだけど、やっぱり無理なんだな」

「無駄でしたねー、わたしはもうー、すべきことをー、決めていますー」

「なら、かかってこい! 俺が相手をしてやる!」

「――っ、はー! 回復魔法が使えるからって、戦えると勘違いしているなら、ただの馬鹿ですー。お前の大事な家族の前でー、八つ裂きにしてやりますー!」


 身構えたレダにニュクトの魔術が殺到した。

 殺傷能力を高めた石の鏃だった。

 レダは、迫りくる攻撃を、障壁と足を使って避けていく。


「逃げ足だけはいいみたいですねー」


 逃げと防御に徹したレダを嘲笑するニュクト。

 だが、そのおかげで、彼女の攻撃の手がわずかに止まった。

 その隙を逃すほどレダはお人好しではない。


「逃げるだけじゃないぜ。――拘束しろ」


 詠唱ですらない短い命令を放つと、レダの掌から魔力で編まれた鎖が数本飛び出した。


「――なーっ」


 レダの反撃に、慌て逃げようとするニュクトだったが、遅い。

 鎖は彼女の四肢に絡みつくように巻かれ、宙に浮かぶ彼女を拘束した。


「いい加減に降りてこい!」


 鎖を握りしめ、力の限りニュクトを引っ張る。

 動きを拘束されてしまったニュクトは、レダの腕力に負けてしまい、冒険者ギルドの屋上へ落ちた。


「――ぐっ、あっ、な、なんですかー、これー」

「単純な拘束魔法だよ。ただし、俺の魔力をこれでもかってほどつぎ込んであるから、簡単に逃げられるとは思わないことだ」


 じゃらじゃら、と音を立てて、鎖の本数を増やし、ニュクトの拘束を硬くする。

 もうこれで、宙に逃げることは許さない。


「っ……忌々しいですー。本当にー、この鎖からー、逃げるのは難しいみたいですねー」


 もがくニュクトだが、レダの言葉が嘘じゃないとわかったのか、大人しくなる。

 代わりとばかりに、ニュクトがレダを睨んだ。


「それでー、動きを封じてどうするんですかー? 降伏なんてしませんよー」

「だろうね。なら、意識を刈り取らせてもらうよ」

「できるものならどうぞー」


 強気のニュクトであるが、彼女は今までずっとレダたちと距離を取り続けていた。

 浮いているだけでも魔力を消費するというのに、彼女は常に宙にいたのだ。

 かつて一緒に行動していたからわかる。

 彼女は接近されるのを嫌がっていた。


 理由は簡単だ。

 ニュクトは、魔術以外がからっきしなのだ。

 体力は少なく、体術も苦手。

 接近されて魔術を封じられてしまうと、途端になにもできなくなる一面を持っている。


 かつては、ニュクトが手をかけたといったロザリーが、盾役として彼女のことを守り、傷つくとレダが回復していた。

 だが、今のニュクトはひとり。補う手段ない。


「少し乱暴になるから謝っておくよ」


 そう告げ、彼女の意識を奪おうと近づく。

 次の瞬間、ニュクトが邪悪に笑った。


「馬っ鹿ですねー、レダー! 勝ったと勝手に勘違いして近づいてくるのを待っていましたー! 今度はこちらの反撃ですー!」

「――っ!」

「奥の手を使わせてもらいますねー!」

「なにを」

「――邪神の眷属よー、我に力を与えたまえー! 我が肉体ー、命ー、魂をー、すべてをー、ささげましょー! だからー! 憎きこの男とー! その家族にー、復讐の鉄槌をー!」


 ニュクトの叫んだ刹那、彼女の体は深い闇によって包まれるのだった。





がうがうモンスター(https://futabanet.jp/monster)様にて、コミカライズ連載スタートしております!

原作小説と一緒にお楽しみいただけると幸いです!

どうぞよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 三章 57「レダ対ニュクト」② 更新ありがとうございます。 [気になる点] お互い相手の手の内を知っているからこそ、やりにくかったり、奥の手は見せないわけですが…。 ニュクトの奥の手は…
[気になる点] うわ、さんざんやりたい放題やっておいて 魂ささげるとか言って死に逃げするのか…… 地獄で苦しんでも被害者からしてみれば何の救いにもならないんだがなぁ……
[気になる点] 予想通りの甘さからくる手加減からのピンチ まではよくある流れだからいいんだけど、こんな一々語尾伸ばして邪神云々叫んでる間ずっと何が起こるか眺めていたんだろうか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ