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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
三章

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55「レダとニュクトの再会」④




「ルナ?」

「無駄だよ、パパ。黙って話を聞いてたけど、この女の頭はおかしいって。相手にするだけ無駄だと思うんだけど」

「だけど」

「ルナに同感する。元恋人を失ったことで暴走しているのだろうが、あの男は死に値することをした。そして、それはこの女も変わらない」


 ルナに続き、レダに諦めるよう言ったのはヒルデガルダだった。


「レダが、この女を止めたいのは痛いほどわかるが、諦めたほうがいい。この女は、とうに壊れている」

「言ってくれますねー。じゃあー、わたしのこともー、ジールのようにころしますかー?」


 壊れていると言われながら、ニュクトは笑顔だった。

 レダには、怒りもしない彼女が本当に壊れている気がした。


「俺はニュクトを殺したりしない。だけど、捕まえて、しかるべきところに突き出させてもらう」

「あははははー。それってー、殺すのとどう違うって言うんですかー?」

「あら、あんた。一応、自分がしたことが、死刑に相当するくらいの理性は残っているのね?」


 驚いたようにルナが言うと、「もちろんですー」とニュクトは返事した。


「一線を超えた自覚はありますー。でもー、この町の人間が全員死ねばー、罪にはならないかなーって。ほらー、裁く人がいなくなればー、罪も罪じゃないと思うんですよー」

「……やっぱ駄目ね。あったまおかしいわ」


 お手上げだとルナが肩を竦めたあと、ニュクトを見上げて、問うた。


「ねえ、あんた」

「なんですかー?」

「会話は一応、できるみたいだから聞いておきたいんだけど」

「どうぞー、死ぬ前に好きなだけー、なんでも聞いてくださいー」

「あんたさぁ、ジールのそばにいなかったけどぉ、どこにいたの?」

「どういう意味ですかー?」

「だからそのままの意味よ。あの馬鹿男がこの町を襲撃したときに、あんたはいなかったじゃない。だからどこにいたのって思ったのよ」

「わたしはー、そのときはー、フリーの冒険者をしていましたよー」


 ニュクトの応えを受け、「なぁんだ」と、ルナがくすりと笑った。


「なんですかー、それー。どんな意味がー、あるって言うんですかー?」

「べつにぃ。ただぁ、あんただって、元恋人が落ちぶれているときに離れていたんじゃない。それって、ロザリーとかいう女と同じように、見捨てたってことでしょう?」

「――違う」

「あれ? なに余裕のない声だしちゃってるの? あ、まさか隠してたとか?」

「黙れ!」

「うざったい間延びした声はどうしたのよー?」

「黙れ黙れ!」


 嘲笑とも取れるルナの態度に、ニュクトの顔から表情が消えた。


「ていうか、あんたさぁ、パパに復讐だなんだとか言ってるけど、あんただってジールっていう馬鹿についていけなくなって見捨ててるんでしょ。なら、自分に復讐すればいいじゃない」

「黙れ黙れ黙れ黙れっ!」

「あはっ――図星突かれたら余裕なさすぎて笑えるんですけど!」

「だまれぇえええええええええええっっ!」


 度重なるルナの挑発に、ついにニュクトが絶叫した。


(……きっと、ニュクトはジールから離れたことを後悔しているんだろうな)


 ジールを見限った理由まではわからない。

 だが、ニュクトは、ジールの死を知り、後悔したはずだ。

 そして、怒りや悲しみの感情を持て余し、ロザリーやレダに復讐することにした。


(八つ当たりしなければいられなかったんだろうけど、とても許されることじゃない)


 同情するつもりはない。

 ジールは一線を超えてしまった故に死刑になった。

 最期まで反省もしなかったと聞いている。

 たとえ、反省していたとしても、家族を襲ったジールをレダが庇うことはなかっただろう。


 ニュクトも同じだ。

 逆恨みの復讐をするくらいなら、ジールの傍にいればよかったのだ。

 もしかしたら、ニュクトがいればジールが堕ちていくのを止められた可能性だってある。

 最善を尽くさないであとで文句を言うことは、誰にだってできる。


 レダに復讐するだけならまだ許せた。

 しかし、ニュクトはこの町を巻き込んだ。

 もう許す、許さないの問題ではない。


「はぁはぁはぁ……あはははー、ついー、ムキになっちゃいましたー。さすがー、レダの娘だけありますねー、実に腹立たしいですー」

「あら、ありがと」

「わたしをー、怒らせたんですからー、楽に死ねると思わないことですー! お前たちも殺してー、レダに復讐してやりますー!」


 ニュクトはそう言うと、レダたちに向けて魔法を放った。





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― 新着の感想 ―
[一言] ・「うざったい間延びした声はどうしたのよー?」 どうせならうざったいー間延びした声はーって徹底的にまねするかと思ったら最後だけだったw あいかわらずジールといいこのバカ女といい自分に都合の…
[一言] ギリギリCランク冒険者ニュクトVSエルフの集落一の戦士ヒルデガルダ、元暗殺者ルナ、実質赤魔導士レダ。 特攻かな?
[良い点] よし! ルナちゃん良く言った!! 拍手喝采であります! [一言] ご褒美としてレダと結婚していいよ! あとはトチ狂ったイカレ魔女を叩き潰すだけだね(=゜ω゜)」イテモウタレー
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