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15「辺境の町アムルス」




「ようこそアムルスヘ。身分書などはお持ちですか?」

「えっと、ギルドの冒険者登録書でいいですか? あ、一応、紹介状ももらっていますけど」

「はい、構いませんよ」


 目を覚ましたミナは、居眠りしてしまったことが恥ずかしくて、レダと手を繋ぎながら俯いてしまっている。

 そんな彼女に苦笑しつつ、レダはアムルスの町の入り口に立つ、門兵とやりとりをしていた。


 建造中の城壁の前には、三十人ほどの列が並んでいる。

 レダのように町の中に入りたいという冒険者をはじめとした人間から、荷馬車や商隊を率いている商人まで様々だ。

 少々警備が厳重のような気がするが、貴族が暮らしているせいだろうと考える。


「へぇ、王都からわざわざ。お仕事ですか?」

「できれば移住をしたくて」

「実は、私も移住組なんです。アムルスは発展途上ですがいい町ですよ」

「それならよかった」

「そちらのお嬢さんは娘さんですか?」

「いえ、違います。俺が保護者なのは変わりませんけど。あ、身分証明するものはないんですよね」

「保護者と一緒なら構いませんよ。誰もが身分を証明するものを持っているわけじゃないですからね。ただ、この子がなにかしたときは、責任をとっていただくことになりますのでご注意ください」

「もちろんです」


 門兵と会話しながら、名簿に名前を書いていく。

 ミナの名前を書こうとして、家名をどうしようかと迷って、手を止めてしまった。


「どうしたの?」


 不思議そうに首をかしげる少女に、


(まあ、いいか)


 なんでもないと言うと、レダは名簿に『ミナ・ディクソン』と書き記した。


「……あっ」


 字が読めたのだろう。

 レダが書いた自分の名前を見て、ミナが驚いた顔をする。

 だが、とくになにかを言うことなく、握っていた手に、ぎゅっと力を込めた。

 少女の行動がなにをしているのかは不明だが、嫌がっていないならいいとレダも手を握り返した。


「はい、こちらで結構です。レダ・ディクソンさん、ミナ・ディクソンさん、よい生活をお送りください」

「どうもありがとう」

「……ありがと」


 門兵に見送られて、ふたりはアムルスの門をくぐった。


「……これが、アムルスの町か」

「うわぁ……たくさんの人がいる」


 発展途上の辺境の町は、想像以上の人々で賑わっていた。

 まだ建造中の建物が目立つが、メインストリートには露店が多い。

 いずれは商店が立ち並ぶのだろう。

 道具屋、簡単な食事を提供する飲食店、お土産屋まである。


「すごいすごい! レダ、見て! ほら!」


 モルレリアの町とは全然違う活気に、ミナも興奮気味だった。

 手をつないでなければ、ふらふらと興味にそそられたまま歩いていってしまいそうだ。


(俺も町の散策をしてみたいけど、まずは冒険者ギルドにいかないと。今夜の寝床も確保しないといけないし)


 門兵の話によると、移住登録はギルドでも行なっているという。

 本来は町の行政の仕事なのだが、領主とギルドの関係は良好で、人々が多く行き来するため手伝っているらしい。

 王都ではギルドと貴族は仲が悪かったり、金のつながりが第一だったりしたので、少し新鮮に思った。


「こらこら、慌てなくていいから。とりあえずギルドにいってすべきことをしちゃおう。そのあとに、ごはんだ」

「うん、わたし、ちょっとおなかへったけど、まだだいじょうぶ」

「実は俺もお腹減ってるんだけど、先に用事を済ましちゃいたいからね」

「じゃあいこう?」

「ああ」


 ギルドは簡単に見つかった。

 赤煉瓦の三階建ての大きな建物の入り口に、『冒険者ギルド アムルス支店』と看板が掲げられていた。

 すでに陽も傾きつつあるが、冒険者と思われる人々が多く出入りをしているのが伺われた。

 人見知りのミナが、少々警戒心を出していたものの、手を繋いでいることもあってか比較的落ち着いた様子のままギルドの中に入れた。


「いらっしゃいませ。冒険者ギルド、アムルス支店へようこそ」





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[気になる点] 15話まで読みましたが、主人公、いい人すぎてクビになるだいぶ前から「お前は大したことない」って言われ続けてきたのを「いつも言われてるから確かにそうだ」って真に受けちゃったんでしょうね …
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