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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
三章

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51「動き出したニュクト」




 迫りくるモンスターの大群に向けて、ナオミは聖剣の一撃を放った。

 真紅の炎が斬撃と化した一閃は、先頭のモンスターを五百体以上、一瞬で両断し、灰にした。


「まだまだなのだ!」


 にぃ、とナオミは笑う。


「私にとって、この程度のことなど、危機でもなんでもないのだ!」


 再び、炎の斬撃。

 一度、攻撃を放つたびに、多くのモンスターを巻き込んで焼いていく。

 その力はまさに勇者にふさわしいものだった。


 手助けなど必要ない。

 自警団や冒険者が、そんなことを考え棒立ちになってしまうほど、ナオミの力は圧倒的だった。


「――私を倒したければ、魔王でも連れてくるのだ!」


 三度目の攻撃は、さらに強力なものとなる。

 炎の翼がナオミの背から生える。

 彼女は地面を蹴ると、天高く舞い上がった。

 そのまま、空から急下降し、モンスターの群れの中心にまるで砲弾のように降り注いだ。


 轟音が響く。

 熱波がモンスターたちを焼き尽くしていく。

 群れの中心で、ナオミが翼を広げ、羽ばたくたびに、近くにいたモンスターが消しとんだ。

 これで、群れの半分が消滅した。


 残っているのは、それなりに強い個体たちだ。

 しかし、ナオミにとって、警戒する敵に値しない。

 緋色の勇者は、聖剣を振り回し、一度の斬撃で十数体のモンスターを両断していく。


 ――その姿は、まさに無双。


 ものの数分で、モンスターは残り三分の一となってしまう。

 無論、モンスターたちもただでやられるわけではない。

 中にはナオミを倒さんと、咆哮を上げて襲いかかってくる個体がいた。

 その個体は、アムルスにいる平均的な冒険者なら、数人がかりでようやく倒せる実力を持っていた。

 しかし、相手が悪かった。

 個体は、ナオミに近づいただけで、炎の翼に焼かれて一瞬で灰になる。


 モンスターの中には、ついに逃げ出す個体も出始めた。

 だが、ナオミは逃亡を許さない。

 周辺のモンスターが集まっているのなら、すべてを駆逐してしまえば町は安全なのだ。


 いずれモンスターの数は増えて元に戻るだろうが、しばらくの間だけでも、町の脅威は減ることになる。

 自分を受け入れてくれたレダたちが住うアムルスのために、ナオミは手を抜くつもりはなかった。


「まだまだいくのだ! 勇者なめんなーっ!」




 ◆




 ナオミの快進撃を離れた場所で宙に浮き、眺めている者がいた。

 ニュクトだ。


「うわー、まさかー、勇者が戦うとは思いませんでしたー。これじゃー、町をどうこうできませんねー。残念ですー」


 あまり残念に聞こえない彼女の口調だが、それを指摘する人間はいない。

 かつての友人は生贄に、名ばかりの協力者はモンスターに喰われてしまった。

 実に容易くふたりの命を奪っていながら、ニュクトに罪悪感は微塵もない。

 所詮、裏切り者と、救いようのない悪党なのだ。

 死んだほうが世のためになると考えていた。


「でもでもー。これでよかったのかもしれませんー。レダの近くにー、勇者がいたらー、それはそれでー、面倒だったのでー」


 ニュクト程度の実力では、勇者を相手にしても瞬殺されただろう。

 規格外が服を着て歩いている存在に、喧嘩を売るほどニュクトは短慮ではない。

 なによりも、勇者などどうでもいい。

 狙いはレダなのだから。


「邪魔なー、勇者がー、モンスターを相手にしている間にー、わたしはレダを殺すとしましょー」


 もうモンスターでアムルスを窮地に追い込む作戦は捨て、レダだけを標的として動きは締める。

 彼女は、魔法によってレダの姿を捉えていた。


「よかったですー。間抜けにもー、外にいてくれてますー。ちょうどよく、娘さんもいますしー、みんな仲良くー、あの世いきにー、しましょー」


 浮遊していたニュクトは、歪んだ笑みを浮かべると、アムルスの街へ向かい飛んだのだった。





がうがうモンスター(https://futabanet.jp/monster)様にて、コミカライズ連載スタートしております!

原作小説と一緒にお楽しみいただけると幸いです!

どうぞよろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] V2ガンダムの光の翼を連想したw>炎の翼で無双する姿 そして、ナオミ無双…はっ、KOEIの手先!?(ちゃうわw ※レダさん&ミナちゃんたち、逃げて~!!
[一言] ブラック企業に使い潰される社員のような環境にいた主人公だが、人並みの感性を持ちながらもここまで異常な人間の性に気付かなかったのかと疑問は残る…
[良い点] 三章 51「動き出したニュクト」 更新ありがとうございます。 [気になる点] 『「よかったですー。間抜けにもー、外にいてくれてますー。ちょうどよく、娘さんもいますしー、みんな仲良くー、あ…
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