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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
三章

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49「アムルスの危機」④




「ナオミ、あんた……そんなこと」


 ことの成り行きを見守っていたルナが唖然とした声を出す。

 まさか、ナオミが自分に許してほしいと願っていたとは知らなかった。


「……ルナ。私はただ強い人と戦いたかっただけなのだ。でも、そのせいで、ルナの過去をレダに教えてしまったのだ」

「……そうね」

「ルナがそのことをずっと怒っていたことは知っていたのだ。だから、ずっと謝りたかったのだ」

「……別に、謝らなくたって」

「私は戦うことが好きなだけで、よく馬鹿と言われるのだ。そのせいで嫌われることもたくさんあったのだ」


 勇者として、単純に強すぎるナオミを忌避するものがいないとは言わない。

 むしろ、多いだろう。

 人間は、良くも悪くも強いものを畏怖する。

 勇者として、魔王さえ倒したナオミが多くの人にどう思われるかなど、想像するに容易かった。


「私は勇者としてこの町を守るのだ。それ以上に、ルナの大切な場所を守りたいと思っているのだ!」

「どうしてよ?」

「……それはきっと、私がルナと友達になりたいと思っているからなのだ」

「――っ」


 突然の告白に、ルナが目を丸くした。


「だから、私は償うのだ。勇者ナオミではなく、ただのナオミ・ダニエルズとして!」

「待ちなさいよ! だからって、あの数に、いくら勇者として強くたって、無理があるでしょ!」

「ルナに賛成だ。ナオミが強いことを疑ったりはしない。だけど、あの数に突っ込んで無事に済むとは思わない」

「ふふん。ルナもレダも、私の本当の力を理解していないから、心配するのだ。あれくらいなら、どうってことないのだ!」


 五千のモンスターの群れを、ナオミは「あれくらい」と言った。

 こんな状況下で、冗談を言うとは思えない。

 だからと言って、彼女の言葉を鵜呑みにして、死地に送り込むこともできなかった。

 レダとルナは、真剣な顔をしてナオミに問う。


「本当にいいんだね?」

「もちろんなのだ」

「あんた、偉そうなこと言って死んだらそれこそ許さないわよ!」

「――そんなことありえないのだ!」


 ナオミはそう言うと、大剣の柄に手を置き、屋上の縁に立つ。


「待ちなさいよ!」

「……ルナ?」

「言っておくけど、別に、あんたのこともう怒ってないから」

「そうなのか?」

「ええ、そうよ。もう、怒るのも疲れたし、あんたのことどうしても憎めなかったし。だからとっくに許してるわ」


 誕生日会でもそうだったが、それ以前から、ルナはナオミを許していたと思う。

 始めこそ、怒りを抱いているのはレダの目から見ても明らかだったが、一緒に暮らすようになってからだんだんと態度は軟化していった。

 ルナはもともと優しい子だ。

 ナオミに悪意がないとわかれば、怒りを継続できなかったのだろう。


「なら、嬉しいのだ! ならば、今度は友達になってもらえるように戦ってくるのだ!」


 とっくに許されていたと知ったナオミは、嬉しそうに破顔する。


「あと、レダにお願いがあるのだ」

「なんでも言ってくれ」

「じゃ、じゃあ、そのなのだ、私が、モンスターを倒したら、褒めてくれるかな?」

「――なんだ、そんなことか。もちろんだ、嫌ってほど褒めてやるよ!」


 もうレダはナオミを止めるつもりはなかった。

 一緒に暮らした時間は短くとも、家族と呼べるほど深く付き合っておらずとも、大事な仲間だ。それはかわらない。

 ならば、信じて待つだけだ。

 万が一、怪我をしたら、自分が治すだけだ。


「だけど、無理したら怒るからな。勝てないと思ったら戻ってくるんだ。いいね。そうしたら、みんなで勝つ方法を考えよう」

「わかったのだ! 無理はしないのだ! その上で、勝利をレダとルナ、そしてミナとヒルデガルダと、みんなに捧げるのだ!」


 ナオミはそう言い放って跳躍した。

 冒険者ギルドの建物から、町の外へ向かって、軽々と家の屋根を伝っていく。

 その姿を見送りながら、レダたちはナオミの無事を祈った。





がうがうモンスター(https://futabanet.jp/monster)様にて、コミカライズ連載スタートしております!

原作小説と一緒にお楽しみいただけると幸いです!

どうぞよろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[一言] 漢前(おとこまえ)だねぇ…。いや、女の子だけどなw
[一言] みんなでがんばって敵を倒す いいですね!
[良い点] 三章 49「アムルスの危機」④ 更新ありがとうございます。 [気になる点] 信じる思いが力になり…!? [一言] 次回の更新も、楽しみにしております。
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