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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
三章

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25「回復ギルドの事情」③




「あら? じゃあ、あんたも悪党ってことでオーケー?」


 ルナの容赦ない一言にネクセンの顔の苦味が増すのがわかった。


「私は悪党ではない……と、思いたい。悪くは言ったが、師匠だって根っからの悪人ではないはずだ」

「今までの話を聞いていると、そうとは思えなんだけど、ねえパパ?」


 娘に話を振られてしまい、レダは困ったように肩を竦めた。

 レダは回復ギルドをそもそも好きではない。

 しかし、回復ギルドに所属している治癒士であるユーリやネクセンのように、こうして一緒に働いてくれる人もいることは事実だ。


(今まで偏見を持ちすぎていたのかな?)


 実際、治癒士の請求する高額治療費のせいで苦しむ人はいる。

 お金が足りないからと治療ができないと諦めてしまう人もいる。

 その原因が回復ギルドと治癒士にあることは間違いない。

 だからといって、頭ごなしに全員を悪党だと決めつけるのはよくないと反省した。


 聞けば、冒険者ギルドに保護されているアマンダ・ロウも、今は態度が別人のようらしい。

 かつてのあの傲慢さは鳴りを潜め、ちゃんと話を聞くという。

 ミレットが言うには、冒険者ギルドへの助言もくれたというのだから、変われば変わるものだ。

 こうしてアマンダだってきっかけがあれば変わることができたのだ。


「師匠は確かに金に汚く、悪どいこともしていた。そんな師匠のようになりたくないと思ったこともある。だが、師匠は恩人だ。住むところと、温かい食事を与えてくれて、優しくしてくれた。私を治癒士として育ててくれた人だ」

「あのさぁ、それって自分と同じ治癒士にだけ優しいってことじゃないの? それも十分、最低なんですけどー」

「かもしれん。だが、俺は、恩人である師匠をただの悪党にしたくない。なにか理由があるはずだと考えている」


 かつてネクセンも生きていくのに困るほど貧乏に苦しんだ過去を持っていると聞いている。

 二度と貧乏生活に戻りたくない一心で、治癒士として頑張り続けたことも。

 そんな行動理由を持つ彼は、当然のように治療費を高めに設定していたが、それでも根はいい人間なのだろう、一般的な治癒士にくらべれば安くはあったのだ。


「単純にお金が好きって可能性だってあるじゃない」

「そうかもしれないな。だが、俺はそれが悪いとは思わん。私だって金のために治癒士になったんだ。もちろん、それで苦しむ人間が出るのは、いけないのだろうがな」


 ネクセンは自分が請求する治療費に反感を持つ人がいたことを思い出したのか、なんとも言えない表情を浮かべている。


「べっつにー、回復ギルドのじじぃたちのことなんてどうでもいいんですけどー。あたしのパパは尊敬できる立派な治癒士ですからー」

「……そうだな。私も見習うとしよう」

「あら、素直じゃない。ま、せいぜいあんたもパパのような善人になれるように精進なさい」

「なぜお前から、そんな上から目線で言われなければならないのだ!」

「なによ、文句あるの!?」

「あるわ! この小娘め!」


 口喧嘩するルナとネクセンに「なんだかんだと仲がいいなぁ」とレダは苦笑すると、ふたりの間に入った。


「はいはい、喧嘩しないの。まだ患者さんはいるんだから。ほら、ネクセンも治療に戻ろう。ルナも引き続きお手伝いをよろしくね。ユーリを見習ってよ、あんな無心で治療しているじゃないか」


 休憩中のレダたちに代わって治療を続けているユーリと、彼女を手伝うヒルデガルダに視線を向ける。

 だが、感心しているレダに対して、ルナとネクセンは若干引いたような顔をしていた。


「……呼吸を荒くして恍惚とした表情を浮かべているのは無心と言わないだろう」

「患者さんも引いてるけどね」

「……そこは見なかったことにしてあげて。治療は真剣にしているんだから」


 三人の視界のなかでは、はぁはぁ、と息を荒らげながら、恍惚の表情を浮かべて治療するユーリの姿があった。

 間違いなく魔術を使えて興奮している。

 患者も、少女治癒士が興奮しているのをわかっているのか、若干距離がある。


「……はぁはぁ、回復魔法楽しい。この傷が治っていく光景は最高だぁ!」


 ユーリの声を聞かなかったことにして、三人は休憩を終えてそれぞれの持ち場に戻るのだった。





大変申し訳ございませんが、本日も感想へのお返事をお休みさせていただきます。

何卒よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] …うん。変態さんDEATHね…>ユーリ
[良い点] 25「回復ギルドの事情」③ 更新ありがとうございます。 [気になる点] 回復ギルドも、最初期はそうでもなかったと思いますが、だんだんと理想と現実のはざまで歪になっていったのでしょう。 …
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