6.general hurts
イーグリンズは美しい古都だった。
しかし現在では軍事施設が立ち並び、ハーツ将軍の住む宮殿が栄華を誇っている。
その日、ハーツ将軍は弟であるドン・ハウル・スプンフルを宮殿に呼び寄せた。
彼ら兄弟はここ十年来、距離を置いてきた。
「ハウル。レイヴォンズで警官を殺したのはお前だな? 目撃者が大勢いる」
大理石の広間、ハウル・スプンフルは中央のソファにドカッと座り、葉巻を咥えながら無愛想に答えた。
「ああ、そうだ。俺が殺った。駐車違反でどうたらこうたら……ムカついたから撃ち殺してやった。この国で俺の顔を知らん警官なんざクソくらえだ」
「……まったく」
昔からそうだった。ハーツは弟ハウルの傍若無人振りに手を焼いていた。
椅子から立ち、ハーツは歩み寄る。
「それを何故エルドランドマフィアのせいに?」
「気にくわんからさ。奴らはレイヴォンズの街に潜ってる。調べがついてんだ」
――兄貴も歳をとった……十数年の歳月でかつての威光はない。と、ハウルは目を細め、鋭く視線を投げた。
「……連中は大事な顧客だ、そう言いたいんだろ? 知ってるのか兄さん。ヤクの買い手ビフ・キューズはサンダース・ファミリーの一派だ」
薄ら笑いで言う弟にハーツ将軍は険しい表情で詰め寄った。
「それがどうした」
ハウルは一瞬固まったが、負けじと返した。
「兄貴よ。奴らと組むつもりか?」
「サンダースを一掃しろと、スモウクスタックに指示したらしいな」
「え?」
「ハウルよく聞け。軽はずみな行動をとるな。無益無意味な争いを起こすな。お前にはセントウォータースを任したがそれ以上は私が決める。将軍の私が神としてこの国を治めている。血を流し、戦いに明け暮れる武族の時代は終わったのだ。好きに暴れて何の策もなく私の邪魔をするんじゃない」
ハウルは黙って聞いていた。
沸々と煮えたぎる血を感じながら……。