13.howl and hurts
ドアが開き、ハーツ将軍が姿を現した。
二人の側近を連れている。ドアの向こうは静かだ。
護衛たちの姿が見えない――と思いながらハウルはちらりと従者ディグリーに視線を投げる――わかっているな? ここで奴を片付ける。しっかり援護しろ、いいな? ……と。
ハーツが歩み寄る。天鵞絨のマントに赤い装甲服を着込んでいる。
腰に剣を、豪気を漲らせて。
目の前に立つハーツはかつての勇猛な闘将を思わせた。
側近たちは仮面を被り、表情が窺えない。一人は何やら黒い皮袋を下げている。
どれだけの兵を率いてきたのか、何故自分の護衛たちは現れないのかとハウルは考えながらも両手を広げ、平静を装い、兄を歓迎した。
「やあ、兄さん。穏やかではないな。賊でも入り込んだのかい?」
「いや。ただお前に話があってな」
「それはそれは……俺の方も大事な話が。一先ずそいつらを外してもらえないかな?」と武装した側近たちを睨みつける。
「……よかろう」
ハーツはそのように指示した。
皮袋を置き、二人の側近は部屋を出て行った。
ハーツはじろりとディグリーを見て、またハウルに顔を向けた。
ハウルは訊く。
「先ずは兄さんの方から。どういったお話で?」
「〝NPC〟……リガル・ナピスと組んで何を企んでる?」
ハーツの威圧にハウルは表情を変えない。
「新兵器開発のためですよ。兄さんのお手伝いです」
「ナピス。奴は敵だ。〝実体を見せない悪魔〟とも聞く。到底信用できない。クレイドルズから追い払う」
「それは残念だ。だが……俺も、あんたを信用できない」
「何?」ハーツは首を傾げた。
ハウルは一体のコレクションを指差した。
台座の上にのっているそれは――マッド・マニッシュの腕。
「奴はあんたのスパイだった。俺を監視し、密告し、失墜させようという魂胆だろう? わかっていたんだ」
野望の炎が燃え盛る――今しかない! と、ハウルはハーツの胸元に詰め寄った。
ついにハウルの手が背中に隠した拳銃に伸びる……しかし、背後に忍び寄っていたディグリーがそれを奪い取った!
「う、うぐっ、何をするディグリー!」
次の瞬間ハーツ将軍はがしりとハウルの顎を掴み、強引に引き寄せた。
「ぐっ!」凄まじい腕力にハウルは青ざめる。
「そう、ハウルよ。お前に見せたいものがあるんだ」
硬直したハウルは突っ立ち、次にハーツは右手で自らの左腕を引きちぎってみせた。
しかし武装された腕の中身は空洞――それをハウルに見せつけ、今度は腕の切り口からみるみると、まるでトカゲの尻尾のように腕を新たに再生させた。
ハウルはまた口を塞がれ目を見開いた。
――こいつは……兄貴、ハーツじゃない!!




