11.degree
ドン・ハウル・スプンフルのもとにディグリーが現れ、切り取ったマッド・マニッシュの腕を献上した。
ハウルはそれをまじまじと見つめる。
確かに見覚えのある、〝LOYALTY〟と刺青されたマニッシュの左腕。
「首はどうした?」
「申し訳ありません。爆殺で……粉微塵に」
「……そうか。わかった。しばらく休め。後でハーツ将軍のところへ行く。同行しろ」
「……はい」
ディグリーは地下の個室に戻った。
室内の僅かな温度差に気づいた時は既に遅し、背後にライサンが立っていた。
背を向けたまま、蛇のように狡猾な目でディグリーは言う。
「同じ臭いがする。ライサンよ。お前も半分はレプタイルズ……俺と同類、仲間だ。稀少な生き残りの仲間を、お前はその手で殺すのか?」
ライサンの脳裏には――コリーナから吸い込んだ記憶……メリーゴーランドで遊んでいたコリーナはその男ディグリーがモルテッドに近づき、噛み殺したのを見ていた――。
……そして父、シグニの死がよぎる。
ディグリーはライサンが放つ心の慟哭を闘気で撥ねのけた。
「レプタイルズが喋れんのは幼少の時だけだろう。ライサン、お前はもう立派な大人だ。言いたい事があるなら声に出して言ってみ……」
次の瞬間、ディグリーの胴体は横真っ二つに切断された。
飛び散る忌まわしい血飛沫。
ライサンは動じず瞼や剣に付着した執念の血を払い落とし、もう一度構えた。
ディグリーの心臓はまだ動いている。荒れ狂った鼓動で邪気が飛び散る。
だがライサンは怖れない。身をよじり髪を振り乱し、ディグリーは顔を向けた。
「……い、いいかライサン、ライトニングに伝えておけ……この国はレプタイルズのものだ……この国を支配するのは……もうじきわかる……フフフ」
胸をえぐる悍ましい声。
「お前の親父シグニを殺したのは……そう、俺だ、ハウルに従ったまでだ……お前は腕の立ついい戦士だ……混血は想像以上の力を秘めているようだな……。だがボス、俺のボスは最強だ、俺の真のボスはハウル・スプンフルでもハーツでもない……その方の力は絶大だ! そう、お前を生かしておくかどうか」
ディグリーは氷柱のような牙を剥き出しにした。
「ついでにもう一つ言っておく……お前の母親ライラも……俺が殺した」
ライサンは瞬時に剣を振り下ろした。
ディグリーの頭蓋から心臓まで、声を押し殺し、渾身の力を込めて叩き斬った……。




