夢見るヴァンプ
僕は夢見る。
人を、人間を、僕の友達を殺す夢。
まるで僕が吸血鬼のように彼の細い首筋に歯を突き立てて血を啜り、彼を殺すという夢。
僕は決して加虐趣味はないし、その友人に対して殺したいという憎悪を抱いたことはない。
彼とはいい友人同士で喧嘩の一つもしたことないし、彼にはいつも僕は助けられている。
なのに、なのに……なんで?
怖い、怖い……なんでこんな夢見なくちゃいけないんだ。
僕はそんなことしたくないのになんで彼の首に歯を立てるんだ。
なんで彼を殺してしまうんだ、どうしてどうしてと問う僕に無情にもやってくるのは朝の目覚め、目をはっと覚まして天井を見上げる。
なんの変哲もないような白い天井。
夢、か……ホッと安堵するけれど未だに心臓がうるさく跳ね上がっている。
手を胸において深呼吸して落ち着かせる。
あれは夢、本当に彼を殺してたりなんかしない。
僕は吸血鬼でも化け物でもない。
ごく普通の平凡でどこにでもいる、子供なんだから。
能力すらもない、ただの人間。
出来損ないの、力もない、ただの子供だから。
日比野 双葉、15歳。
異能力を持つ人間を管理することができる都市、プネルターム。
そこに住む能力なしの一般人なはずの彼はなぜかこここにいる。
理由は不明、政府による情報隠蔽の可能性は低くはない。
しかしそれと同じくらい隠蔽されていない可能性もあるため我々の詮索は不可能。
なので彼女を監視役に任命。
これから知ることになるのは意味のない時間の浪費か、いつしか世界を脅かす存在の証明か。
ガジリ、と口のなかで赤いキャンディを砕き、舌で弄ぶ。
ストロベリーの匂いが鼻腔をくすぐり、甘ったるいいちごの風味が口のなかに残る。
少女は赤い瞳を尖らせて、じっと一人の少年を遠いところから見つめていた。
「人殺しはできない、僕なんかにできるわけない?
本当にそうかしらね」
少女はふ、と鼻を鳴らして自分の肩まで伸びた薄い桃色の髪を払う。
特集能力秘密調査部隊、能力を持たない平凡な少年を監視するという役目を負った彼女はかすかに笑みを浮かべて、飴が付いていないただの真っ白いない棒が宙へ浮かんだ。
「狂気はきっと彼にある。
ああ、ラッキー!クソみたいにくだらないこの任務案外美味しい上玉ぽそうだわぁ!
ふふ、じゃあこれからよろしくね、ヴァンプくん。」
桃色の髪と赤の瞳、小さな顔に整ったパーツたち、まるで仮想世界に存在するように美しい容姿をした彼女には存在がない。
彼女の名前はA。
存在のない一人監視者は怪しく笑う。
彼を見つめる、何かを探るように。
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