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モンスター・ファクトリー1~3巻が発売中です。
書店で見かけた際には、ぜひ手に取っていただけたらと思います。
また、Web版第4章は、毎日投稿の予定です。
改めてよろしくお願いします。
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積み上げた土嚢の一部が決壊するほどの大雨は、次第に収まり、更に監視の人数を減らして自警団で交代で様子見することになった。
だが、俺とバルドルは、騎士としてこれを監視し続けなければならない。
「コータス、疲れているだろ。先に戻って休んで良いんだぞ」
「俺は、【頑健】の加護があるからこのくらいは、大丈夫だ。前の時みたいに気苦労がないだけマシだ」
以前の魔の森の境界の監視を行った時に比べれば、どうってことはない。
「そうか。なら、俺は先に休ませて貰うな。昼頃に戻ってくる」
そう言って、バルドルは、元密偵でバルドルの婚約者となったシャルラと住む借家に帰っていく。
俺も一人監視を続けるが、雨も止み、濁流もこれから落ち着いてくると思われる。
監視する分には、問題ないが――
「少し、魔力を使いすぎたか」
ブラックバイソンを引き上げる際に、ロープに魔力を通して物理強度を上げたが、その際に、体に蓄えられていた養分を魔力に変換したので、軽い空腹を覚える。
また朝から昼過ぎまで監視が続きそうなので、朝食抜きになりそうだ、と感じる。
そして、お昼が近づき、川の濁流も落ち着き、俺の監視が不要になる頃、町の方からレスカとリアカーを引くペロがやってくる。
「コータスさん、お疲れ様です。朝食を食べてないので、軽い軽食と温かいお茶を持ってきました」
「レスカ、すまない」
「そこは、ありがとう。って言って欲しいですね」
微苦笑を浮かべるレスカに俺は、改めて、ありがとうと言って、自警団の人たちに一言
言ってから休憩に入る。
俺は、近くの軒先を借りて、レスカから受け取ったバスケットを開ける。
中に入れられたお絞りで汚れた手や顔を拭き、サンドイッチを食べ、温かなお茶で流し込む。
「レスカ。チェルナは、どうしている? それに、何故外出を」
「今は、ヒビキさんとマーゴにお願いして見て貰っています。それに、忘れたんですか? 今日は、配達の日ですよ」
すでに配達後なのかリアカーに載せられているのは、空の液体保存の容器だけだ。
「雨、結構降りましたね。凄い濁流です」
「毎年こんな感じなのか?」
「いえ、いつもはもう少し穏やかですよ。ただ、川の上流で大量発生したスライムたちが水路に詰まって、水が溢れそうになるのは、風物詩だったりしますね」
今も速い流れの濁流の上から濁流と同色に変化したスライムが流れてくる。
夜明け前からの作業で気づかなかったが、そんなスライムの川流れという風物詩を俺とレスカが眺めながら、レスカの魔物のうんちくを聞く。
雨により森の養分と水分を吸ったスライムたちが成長し、分裂、増殖した結果、飽和したスライムたちが川の流れに流されて、一気に広範囲を移動するようだ。
「それに、森の養分を吸ったスライムが下流の方に流れることで広い範囲に栄養が分散しますし、なにより余分な水を吸ってくれるので、山などは土砂災害を抑えてくれるので、スライムの存在は、魔物の生息する環境の最底辺を支える大変重要な要素だとされているんです」
「そうなのか。以前、グリーンスライムを見たが、スライムは奥深いなぁ」
ぽつりと呟く俺の言葉に、レスカは、自信に満ちた表情を向けてくる。
「コータスさんは、スライムに興味があるなら、叔父の書庫にあるスライムの論文の本を読むと良いですよ! これから雨が続くので室内での読書に是非!」
「ああ、借りさせてもらおう」
体を一日中鍛えるわけにも行かないので、そんな過ごし方も悪くないと思う。
そして、差し入れのサンドイッチを食べた俺は、レスカに先に戻っていいと伝えたが、俺がバルドルと交代するのを待ってくれる。
そんな俺の姿を楽しそうに見ているが、なにか楽しいことがあるのだろうか、と首を傾げる。
「コータス、すまんな。任せて。おっ、レスカの嬢ちゃんも川の様子を見にきたのか?」
「バルドルが居ない間、問題はなかった。後は任せて良いか?」
「任せろ。それと今度、酒場に付き合え、たまには男同士で話でもするぞ」
一度、湯屋に寄ったのか、身綺麗にしたバルドルと交代する。
その際、酒場に誘われた俺は、考えておくと答えてレスカと共に牧場への帰路に就く。
「はい、コータスさん。これどうぞ」
「レスカ、この袋は……」
「この後、湯屋で温まって下さいね。私は、先に帰って料理を温めておきます」
そう言って、リアカーを引いたペロを連れて先に帰るレスカ。
そして、手渡された着替えの入った袋を見て、俺はしみじみと呟く。
「レスカには、いつも助けられてるな」
こちらが気づかないようにさりげない気遣いをしてくれる。
それがとても嬉しく感じつつ、レスカの牧場に向けていた足を湯屋の方向に向けて、冷えた体を芯まで温めながてからレスカが綺麗に洗濯してくれた衣服で牧場に戻る。
そして――
「レスカ、ただいま戻った」
「コータスさん、お帰りなさい」
雨の日で退屈だったのか、俺の方に滑空して飛んできたチェルナを受け止めると、チェルナを追い掛けて、ヒビキもやってくる。
「こらー、いきなり飛び出すと危ないわよ」
『キュイ?』
「そんな、わからない、って顔したって駄目よ」
チェルナを優しく叱りつけるヒビキもその後、俺にお帰り、と言ってくれる。
今日みたいな天候が悪く、俺もレスカも仕事でチェルナを連れ出せないような時は、家で仕事をしているヒビキやマーゴが居てくれるとなにより心強い。
それに、【賢者】の加護をもつヒビキが無数の防犯魔法を張っているらしいので、レスカの牧場は、俺から離れていても安全の場所だ。
「チェルナは、ちゃんと大人しく過ごしていたか?」
『キュイ!』
「雨で退屈そうにしてたけど、私とマーゴたちで遊んでいたわよ」
そう言って、揺するようにチェルナを抱き直して、元の場所に戻ってチェルナを膝の上に載せている。
「コータスさんの汚れた衣類とか預かりますね。泥とか残しちゃうと、そこからカビが栄えちゃいますから」
『ソンナコト、ワタシ、サセナイ』
レスカの言葉に、コマタンゴの妖精のマーゴが自身の菌糸を操る力でカビを抑えると小さな体で胸を張るように反らすのをレスカが微笑ましく見つめる。
「そうだね。でも、泥は綺麗に落とさないと」
そうして手早く、雨具や着ていた泥を落とし始めるので俺は、何か手伝うことがないか、とうろうろする。
「レスカ、何か手伝うことはないか?」
「大丈夫ですよ。あっ……」
「どうした?」
「そう言えば、この天気なので室内干して、洗濯籠を空き部屋に置いたままでした」
「なら、取りに行ってくる」
「えっ、じゃあお願いします」
俺は、家でもできることがあると分かり、足早に空き部屋に向かう。
客間ではあるが、現状使う人のいない空き部屋の前には、カビ抑制の監視のためにコマタンゴが何匹が集まっていたが、俺が部屋を開けようとすると何故か邪魔をする。
「すまない。洗濯籠を取りに来たんだ」
そのくらいなら自分たちが、と身振り手振りのコマタンゴたち。
マーゴの誕生で大分、知性というようなものが見え始めたが、これは俺の仕事だ、と思い、コマタンゴたちを丁寧に退けて部屋に入る。
「洗濯籠は、これ……か!?」
俺は、床に置かれた空の洗濯籠を見つけ、続けて視線を上に上げると部屋干しに吊るされた衣類を見つけて、言葉を失う。
部屋に張られたロープと吊るされる洗濯物の中に、淡い色合いの布地が吊るされていた。
その形状は、どう見ても女性の下着であり、控えめなフリルが付いてたりする。
「しまった……」
この数ヶ月、互いに注意していたために、このようなことは起こらなかったが、つい気が緩んでいたのかもしれない。
まじまじと見てしまった下着からなんとか目を逸らし、赤くなる顔を押さえながら、洗濯籠を持って戻る。
「……レスカ。もってきた」
「はい。コータスさん、ありがとうございます。……どうかしました?」
振り返ったレスカは、視線を逸らして顔を赤くする俺を見て、小首を傾げる。
だがすぐに洗濯物へと意識を集中するので気づかれなかったようだ。
レスカは、今日のような寒い日にお湯を沸かした残りで、泥などの汚れを落とし、衣類を綺麗にして水気を絞り、洗濯籠の中に入れていく。
「レスカ、ありがとう。助かった」
「いえいえ。雨具と衣類は、軽く汚れは落ちましたよ。今日は、部屋干しですが、明日は晴れてくれれば、そっちで干しましょう」
『『ワフゥー』』
部屋干しと聞いて、生乾きの匂いに憂鬱そうに溜息を吐き出すペロ。
そんなペロを慰めるようにマーゴが話し掛けている。
『ダイジョウブ。ニオイハ、ワカラナイ。デモ、カビハ、オサエル』
『『ワフッ?』』
「マーゴがカビとかの悪いものを抑えてくれるので臭わないですよね。すごく、助かりますよ」
そう言って褒めるレスカに、マーゴは嬉しそうにする。
最初は、色々とあったマーゴだが、既にレスカの牧場の一部にちゃんと入り込んでいるので良かったと思う。
「それでは、洗濯物を干したら、コータスさんの遅めの昼食を用意しますね」
そうして、洗濯籠を持ったレスカが洗濯物を干しに部屋に向かう。
そして、一人分の衣類なのでそれほど時間が掛からずレスカは、戻ってくるが、その様子が少しだけおかしい。
ほんのりと顔を赤くして、そわそわと挙動不審にしながら、俺をちらちらと見つめている。
その様子に、俺はまさかうっかり見てしまったことに気づかれたか、と内心冷や汗を掻く。
そして――
「コータスさん、見た?」
「……すまない」
誤魔化すことなく、素直に答えると、ジワジワと羞恥が沸き起こるのか、うー、と唸り始めるレスカ。
そして、大きく深呼吸を繰り返し落ち着いたところで――
「互いに、なかったことにしましょう」
それは、問題解決として正しいのだろうか、と小首を傾げそうになるが、怒っても仕方がないのだろう。
それに、同じ屋根の下で暮らしているなら、偶然で起こる可能性がある、むしろ、互いに気をつけていたために起こるのが遅いのかも知れない。
「黙っていた俺が言うのもアレだが、レスカは、怒る権利はあると思うぞ」
俺は、レスカの淡い色の下着を見たのだ、怒られる覚悟を決めるが――
「コータスさん、今更ですよ。牧場仕事の後で家事を手伝って貰ってますけど、洗濯物を洗うのは、いつも私ですよ! その時、コータスさんの下着とか見ていますから」
「そうか……レスカが良いって言うなら」
そう考えれば、今も洗濯物を洗うのを任せてしまっている。
「だ、だからってコータスさんが私の下着を洗おうとかって話じゃないから! ヒビキさんの下着もあるんだから! コータスさんは絶対に手伝うのダメだから!」
途中、自分の発言で墓穴を掘ったと感じたのか、慌てて言い繕うとするレスカだが、そこまで考えてはいない。
あと、また慌てた時の荒い男口調が出ているので、落ち着くように頭を撫でる。
「だ、だから、なんで撫でるかぁー!」
「いや、つい……」
「あー、甘ったるいわぁ」
俺とレスカは、ヒビキに声を掛けられて、ハッと振り返る。
「コータスとレスカちゃんの二人だけでラブコメ空間を作っちゃうなんて……その雰囲気に当てられる甘くて、口から砂糖吐きそうよ。」
また、角に隠れるように、コマタンゴたちも縦に重なるようにしてこちらを覗き込んでいたりする。
「ラ、ラブ、コメ……? って、訳の分からないことを言わないで下さい! も、もう、この話はお終いです! さぁ、コータスさんのお昼を用意しましょう!」
レスカは、パチンと両手を叩いて、強引に話を断ち切る。
そして、逃げるように食堂の調理場で俺の昼食を用意してくれる。
俺もレスカも何事もないように過ごし、ヒビキもそれ以上言及しないもののニヤニヤしている。
最初は、動きが硬かったレスカも次第に普段通りになり、俺はレスカの淹れてくれたお茶を飲み、ホッと仕事が終わった、という区切りがついた気がする。
そして、俺は、また降り始めた弱い雨が屋根に当たる音を聞きながら、レスカとヒビキ、それにペロやチェルナ、マーゴのいる穏やかな時間を過ごしていた。
魔物図鑑
【アーガイル】
討伐ランク――E+(武装した成人男性一人で倒せるが、やや危険)
ワニのような平べったく頭部とギザギザの歯。そして、魚類の体と大きなヒレを持つ魔物。
ワニ系の魔物であるアリゲーター種と似た頭部の特徴を持つが、淡水魚に属する魔物。
その鋭いギザギザの歯で獲物をガッチリと捕まえて、襲ってくる。
雑食性であり、大きくなると魚類の他に水辺に来た生き物に噛み付き、水の中に引きずり込む。
肺とエラでの二種類の呼吸方法を使い分けるので、陸地でも短時間で活動可能なために、大きなヒレで陸地を這うように移動し、ジャンプ力で獲物に襲いかかることもある。









