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 朝食の席、俺たちは、その日の予定をレスカから聞く。


「今日は、動く野菜の畑に支柱を立てるのと、収穫できる野菜は採っちゃいましょう」

「あー、そういえば、動く野菜ももう勝手に動かなくなったな」


 俺がこの辺境の牧場町に来た頃は、動く野菜たちは、自身の根や茎、葉っぱなどで自重を支えて移動できた。

 現在では、大分生長して、自重を支えるために根を張っているので以前ほど活発に動かないが、葉っぱや蔦を動かすくらいはしてくる。


「あー、あの畑ね。それで私たちは何を手伝えばいいの?」


 パンを千切りながら質問するヒビキにレスカが答える。


「そうですね。私とコータスさんで野菜を収穫するので、ジニーちゃんとヒビキさんには、支柱を立ててもらいましょうか

「……そう言えば、お祖母ちゃんが言ってたよ」

「リアお婆さんが?」

「うん。そろそろ、鳥とかが野菜を狙ってくるから獣避けの匂い薬を用意するべきだろう、って」

「あー、アレですか。あれ臭いんですよねぇ。それにペロが嫌がりますし」


 苦笑いを浮かべるレスカは、今日の仕事の段取りを確認した。

 そして俺たちは、日々の日課となるレスカの牧場仕事を終えた後、牧場町でレスカが借りている畑の一角に来ていた。


「それじゃあ、始めましょうか」


 そう言って、音頭を取るレスカに俺や手伝いに来たジニー。居候のヒビキも頷く。

 少しずつ気温が上がる中、動く野菜たちの畑を見れば、俺がこの牧場町に左遷されてきた当初に比べて、地面に根を張り、今では勝手に動き出すことはなくなった。


「それじゃあ、ジニーちゃんとヒビキさんは、支柱の必要な動く野菜に支柱を立てて下さい。私とコータスさんは、収穫時期の野菜を収穫しますね」

「わかった。あたしが木の棒を突き刺す」

「了解。なら、私がこの紐で支柱と茎を結べばいいのね」


 そう言って、ジニーが支柱の棒を突き刺し、ヒビキが茎のある野菜に紐を結ぶ。

 また、蔓を伸ばす野菜に支柱を立てれば、自分から蔓を巻き付け体を支える。

 俺たちは、地下に根を張り巡らし、容易に動けなくなった動く野菜たちは、地表に出ている部分を揺らし、支柱を立てるジニーとヒビキの服の裾を引いて、支柱を立てて貰えるように急かす。


「なぁ、レスカ? 動く野菜に支柱って必要か? 同じ植物系のトレントには必要ないんじゃないか?」

「トレントほど、茎の強度がないんで、やっぱり支柱は必要だと思いますよ」


 そう言って、自身の考えを口にするレスカ。

 ジニーとヒビキが支柱を立てる一方、俺とレスカは、そんな話をしつつ、今がちょうど収穫期で保存性の高いジャガイモ、タマネギなどを引き抜いている。

 少し葉や茎が枯れ始めたジャガイモの茎を引っこ抜けば、ブチブチと小気味のいい音と共に根に付けたジャガイモが地中から姿を現す。

 他にも、タマネギも同様に引っこ抜き、地面に置いていく。


「よっと……すげぇ、ゴロゴロとジャガイモが出てくる」

「立派な野菜が採れますね。今夜はジャガイモパーティーですよ」


 動く野菜であるために収穫には、激しい抵抗があるかと思ったが、意外とそうでもなかった。

 根っこや枯れ始めた茎には、動く力が無いのか、これと言った抵抗はなく、またジャガイモに手足となる芽が生えていないのか、普通の野菜だ。


「なぁ、レスカ。これって来年も植えると動く野菜になるのかな?」

「どうでしょうか? 【魔の森】の中で魔物化したものの種や種芋などから育てたので、二世代、三世代と【魔の森】と違う環境にあるので、普通の野菜化するかもしれませんね」


 非常に実験的な試みであるために、予測でしかない、と答え、ジャガイモやタマネギを拾い集めるレスカ。

 レスカが回収して、ジャガイモは木箱に詰めて、冷暗室で長期保存。タマネギは、軒先に吊して乾燥させ、こちらも長期保存が可能だ。


「収穫した野菜で何を作りましょうかね。他の野菜にも少ないですが大きくなり始めたピーマンやキャベツ、去年作ったドライトマトも使ってどんな料理を作りましょうか」

『キュゥ~』


 ウキウキしつつ収穫した野菜を詰め、俺が地中で取り残したジャガイモを掘り返して、拾い上げる。

 そんなレスカの楽しそうな声に合わせて、俺の後頭部にしがみついていた暗竜の雛・チェルナが尻尾や羽を動かして機嫌良さそうにしている。


「レスカ姉ちゃん。後で、美味しいものをお願いしたい」

「任せて下さい! 小さな収穫祭ですよ! 本当は秋の小麦の収穫時期ですけど、やっぱり取れたての野菜で祝いたいですよね」

「はいはーい。それじゃあ、お姉さんには、揚げ物食べたい! フライドポテトとか!」

「いいですね、植物油はありますから少ないけど作れますよ」


 そう言って、箱に詰めた収穫したジャガイモやタマネギ、他にもこの時期が旬のキャベツやキュウリなどを収穫してリアカーに乗せる。

 食べ頃な旬の野菜は、動く野菜たちが、自分の葉っぱや蔦で教えてくれるので鮮度や味がいいのが採れる。


「それじゃあ、私とペロは一度、牧場で野菜を置きに行きます。あとでお昼を作ってこっちに持ってきますね」

「なら俺は、空いた畑を耕して、次の作付けの準備をするか」


 一度牧場に戻るレスカとリアカーを引くオルトロスのペロを見送り、俺は、鍬を背負い、背中に暗竜の雛のチェルナを貼り付けて作業する。

 途中、チェルナも飽きたのか、畑の合間を飛び交う虫を追ったり、体力がなくて途中で休憩するジニーとヒビキと戯れている。

 そして、太陽が真上に差し掛かった頃、お昼を持った戻ってきたレスカと共にお昼を食べ、また、農作物を狙う野鳥に備えてジニーとヒビキがリア婆さんから獣避けの匂い薬を買って畑に蒔き、そろそろ終えようとしていた頃に、先任騎士のバルドルがやって来た。


「よっ、精が出てるな」


 動く野菜たちじゃ手? と言うか蔦の届かない場所に生える雑草抜きなどを行う俺とレスカは、手を止めて立ち上がる。


「どうしたんだ? なにか合ったか?」

「あー、まぁ、様子見、と相談っと言うか……」


 なんとも歯切れの悪いバルドルの物言いだが、視線の先にチェルナがいるのを見て、真竜関連、もしくは、王宮関連の話を予想できた。


「その相談ってのは、俺だけに話す内容か?」


 騎士としての守秘義務の関係で民間人であるレスカやジニー、ヒビキには話せない内容かと尋ねるとバルドルは首を振る。


「いや、むしろ、レスカの嬢ちゃんたちにも話に加わって欲しい」


 そう言うと、話の重要度を感じ取ったのか、レスカたちも頷く。


「なら、今日はこれで休みましょう。もう少ししてくると一番熱中症で倒れやすい時間帯に入りますから」


【頑健】の加護で体が丈夫な俺は耐えられるが、子どものジニーや農作業に慣れていないヒビキに合わせて休むことに納得する。


「それで、バルドルの話ってのは、すぐがいいのか?」

「いや、すぐじゃなくていいぞ」

「それなら、身を綺麗にした後でいいですか? それにお話が長くなるなら、夕ご飯も一緒に食べませんか? 今日採れ立ての野菜でお夕飯を作ろうと思うんです」

「なら、レスカの嬢ちゃんのご相伴に預かるとするか」

「あたしもお祖母ちゃんにレスカ姉ちゃんの家で夕飯貰うこと伝えないと」


 そう言うジニー。

 とりあえず、全員が湯屋に向かい汚れを落として着替えてから夕方の気温が下がり始める時間帯にレスカの牧場に集まることになった。

 レスカは、楽しそうに台所で作り始め、ジニーがそれを手伝う一方、俺とバルドルは向かい合って座り、ヒビキがその話を横から聞く体勢をしている。


「さて、何から話せばいいか……」


 そう前置きしてバルドルは話し始める。


9月20日、オンリーセンス・オンライン13巻と新作モンスター・ファクトリー1巻がファンタジア文庫から同時発売します。興味のある方は是非購入していただけたらと思います。

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