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96話-晩、ジョゼットさん

 フィル様と昼食を取って、一息ついているとジョゼットさんが入ってきました。


「あら、意外と元気ね」


 ジョゼットさんはサラリと家族を批判しています。お母様やフィオーレ姉様と一緒にいて平気だったわね、と言っているのです。

 フィル様は気づいていないのか、気にしていないのか、涼しい顔でお茶を飲んでいました。


「なら、私は散歩がしたいわ。夜の町を歩くのって好きなの。だから、屋敷で夕ご飯を食べてから出かけましょう。それまでは荷造りでもしておけばいいんじゃないかしら?」

「ありがとうございます。甘えさせていただきますね」

「じゃあ、また後で」


 約束通り町に出ます。大通りには、昨日リーリエと出た時と同じくらい人がいましたが、ジョゼットさんが歩くのは人気の少ない場所ばかりでした。

 町の喧騒が良い音楽に聞こえるくらいの距離です。彼女は物静かな場所が好みのようでした。


「貴方たち3人は似ているわね。とっても優しいもの」


 ずっと黙っていたジョゼットさんが急に言いました。それでも私には3人が誰かわかります。私とリーリエ、そしてトオルのことでした。


「あら、トオルの話をしても私を睨まないのね。まさか心変わり? リーリエより私の方が好きになった?」

「いえ。ただ、ジョゼットさんが悪い人だと思えないだけです」

「それじゃダメ」

「ダメですか?」

「リーリエですって即答しないと。私のこと何か気にせずにね。まさか、本当に私のことを気に入っているわけじゃないでしょう?」


 答えを待っていたので、私は口を開きましたが声が出ませんでした。

 イノ家の方々は私の知っている貴族より、よっぽどまともでした。スケールの違いはありますが、道徳観が欠落しているわけではありません。

 ジョゼットさんは、むしろイノ家で最も常識敵でした。フィル様やフィオーレ様と同じくらい優しい人でした。皮肉っぽい所はありますけど、家族のことを思っているとよくわかります。

 少なくとも、根っからの悪人だとは思えないのでした。

 トオルにしたと思われる仕打ちと、私の見たジョゼットさんとは、ほとんど重ならないのです。

 だから、答えられないのでしょう。

 そんな私を見て、やっぱり優しいのね、と言ってジョゼットさんは微笑みました。


「そう難しい顔をしないの。私の味方をするぐらいなら、リーリエを守ってあげてほしいだけ。だって、貴方はリーリエのためにと思ってくれているんでしょう? なら、そのように振舞って」


 ジョゼットさんは笑みを絶やしませんでしたが、悲しい顔をしているように見えます。

 彼女はそれを隠そうとするように、言葉を重ねました。


「例えば、あの子が私を恨んでいるなら、それに同調してあげるの。人として間違っていることであれば、正して欲しいけどね。けれど、何かで迷うのなら、私とリーリエとで迷うぐらいなら、あの子の味方でいて欲しい。セネカはリーリエからすれば、ようやく得られた味方だもの。また失くすことを本当に恐れているから。それに、私ではあの子に何もできないってわかったから、貴方にお願いするの」


 例えば、と言いましたがジョゼットさんはリーリエに恨まれているという前提で話していました。

 でも、そんなはずはありません。私がジョゼットさんを悪く思っていない以上に、リーリエは今でもジョゼットさんを大事に思っているでしょう。

 私が否定しようとすると、彼女は首を振って制します。


「この話はやめましょう」


 ジョゼットさんはいつものニタニタとした笑みを浮かべます。歯を見せず唇だけ曲げて


「私じゃリーリエに敵わないけれど、お母様たちは本気かもね」

「何がです?」

「貴方のことよ。セネカのことを本気で欲しがっていると思うわ」


 この人は毎度、このような事を囁いてくるのでした。

少なめですが、あげさせてください……。明日も同程度の文量だと思います……。明後日には戻りますので。

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