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68話-アルーシェ・フォル・レイズ

 砂漠を抜け、トオルたちはフォルドアの町についた。

 まず目につくのは、フォルドアの住人達だろう。砂漠地帯に住んでいるのだから予想できたことなのだが、皆、ものの見事に肌が小麦色に焼けている。服装もカンドゥーラやガラベーヤ、ターバンを巻いている人が多くいる。薄いドレスや白い外套のような服、まさにトオルの頭にあった砂漠の象徴ばかりだった。


「一つしか町がないからか、すごい盛況だな」


 トオルたちが入ってきた門から伸びている道は大通りなのか、道の両端には店が立ち並んでおり、かなりの人が行きかっていた。


「露店は日ごとにやっている人が違うので、掘り出し物が多いんですよ。一応、東西南北にあって、それぞれ大まかに売っているものが分けられています。ここは南通りで、主に服飾ですね」


 トオルはステラに言われよく見てみると、確かに服ばかり並んでいる。その様子はバザーという単語を連想させるものだった。


「興味はあるけど、仕事から済ませようか。えっと、取引する人がいるんだよね」

「私はその人から、いつも魔石を買い取らせていただいてるんですよ。フォルドアでの滞在場所も提供してくれていて」

「親切な人だなあ」

「そうですね。トオル様も会えば気に入ると思うのですが


 ステラが口ごもったので、トオルは彼女の顔色を確認すると、暑さのせいか顔を真っ赤にしていて辛そうだった。


「大丈夫か?」

「も、問題ありません」


 慌てた話し方であったが、そう言うのであれば聞きすぎるのも野暮だと思って、トオルは気に掛ける程度で留めた。

 フォルドアの町は白く特徴のない家や店が多く、砂漠の青々とした空、土のベージュといった濃い色で構成されていて、見ていて清々しくなる景観であった。

 建物の特徴が少ないので、覚えにくく迷いそうだが、ステラは黙々と進んでいく。

 彼女が止まったのは変哲もない家だった。


「アルーシェ、ステラです」


 ノックと共にステラが名乗ると、すぐに扉が開いた。そこから大きくも鋭く力強い紫色の瞳の女性が出てくる。


「待ってたよ。おや?」


 トオルの方を見て、女性は目を煌めかした。利発そうな顔で、彼女が微かに表情を作るたびに腰まで伸びた綺麗な金髪が揺れた。

 

「外でお待たせして話すのも何ですから、入ってください」


 ステラと共にトオルは女性の部屋に入る。汚くはないが、綺麗でもない生活感の溢れた部屋だった。それなりに整理整頓はされているので、無秩序というわけでもない。

 ジュ―ブルが日本家屋だったので、フォルドアも何か違いがあるだろうか、と思ったがネメスのものと変わりはなかった。特徴と言えば、床が石というのはあるが、ネメスでも板が多いだけで珍しいという訳ではない。

 それよりも、女性の格好がすごかった。

 上半身は胸部しか隠しておらず、チュールスカートのような透けた素材の布をつけているだけだった。

 どちらも独特な構造をしていた。上半身は首元から真っ直ぐ伸びた布で縦に胸を覆い、それを後ろで結んでいる。下半身はスカートと呼ぶにしては短すぎる布には、短冊のような藍色の布が別についていて、面積は狭いもののそちらの方が衣類として役立っているほどだ。いくら暑いとはいえ、ほとんど裸に等しい格好である。

 否応なしに目が行ってしまうが凝視するわけにもいかず、他にネメスとの違いはないか、とトオルは目を動かす。

 そんな彼女を見て、女性は左右対称に口を割った。


「ステラ、顔つきが変わりましたね」

「そうですかね」

「ええ。それで、こちらの少女がその原因ですね? ようこそトオルさん」


 トオルは自分の名前が知られていることに驚きつつも、よろしくお願いします、と返事をした。


「トオル様の容姿を話したことがなかったのに、何故わかったんですか?」

「さっきも言いましたが、顔ですよ。貴方の顔つきがよくなってます」

「わかってしまいますか」


 ステラは口元を抑えて笑った。穏やかな雰囲気で無駄話をするくらいには仲がいいらしい。

 トオルはそんな彼女らを観察していると、女性が目を合わせてお辞儀をした。


「置いてきぼりにしてすみませんでした。私はアルーシェ・フォル・レイズです。よろしく」

「ご丁寧にどうも。既に知っておられるみたいですが、トオルです」

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