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95 三島順平と迷宮

リーゼロッテ姫に忠誠を捧げた翌日。三島順平はアイオーン山脈の迷宮に向けて出発した。


クラスメイトたち、特に冴や委員長、草壁といった近しい面々に注意を向けてみたが、悪意に呑まれているような感じは受けない。元の世界で付き合いの薄かった赤井や青木、結城や黒澤は判断のしょうがない。その他のクラスメイト、特に女子となると順平には皆目見当もつかない。

正体不明の状態異常に晒されているのは不安だが、今のところ出来ることは警戒ぐらいである。


順平たちが向かうことになったのは、アイオーン山脈にある大迷宮だった。黒澤は「迷宮! まさに異世界ファンタジーだね!」などと言っていた。山本大地も、その場に居れば、そう言っていたかもしれない。


アイオーン山脈は原初の大森林と並ぶ魔境地帯である。その違いは、インテリジェンス・モンスターという知性のある魔物が種族として成立していないことだろうか。モンスターのランクはBクラスが多く、AクラスやSクラスも見受けられる。また竜種以外で空を飛ぶ鳥類系のモンスターが多く棲息していることも特徴の一つだ。。


アークノギアでは空を飛べる種族というのは圧倒的なアドバンテージを有する。空を飛ぶ種族は竜種か鳥類型のモンスターぐらいだからだ。

<飛行>以上のスキルを持つ者なら空は飛べる。しかし消費する魔力が大きいため、実質的には魔族ぐらいにしか扱えない。同様に<天馬>も不意討ち程度にはなるが、これで空中戦を仕掛けるようなバカはいない。

空を飛ぶモンスターへの対抗手段は弓矢か魔法による射撃。これが基本だ。しかし空を高速で飛び回るモンスターに攻撃を当てることは容易ではない。


そんなわけでアイオーン山脈のモンスターは、空を飛ぶ鳥類型のモンスターに対抗できるような高レベルのモンスターが生き残っていることになる。このため地上にも空にも警戒が必要で、足場は山道のため悪く戦いに向かない。

アイオーン山脈が原初の大森林以上の魔境と言われる所以である。

この山脈が壁となり、ブリトニア王国とガスパリア帝国は正面から衝突ができない。間に挟まれた国々がリーザニア連合を結成した理由の一つともなっている。


しかし原初の大森林と比べ、この魔境に足を向ける冒険者は多い。その理由が大迷宮の存在である。


アークノギアには定期的に『迷宮』が発生する。

規模はまちまちだが、その迷宮内には財宝が眠っているのだ。

迷宮が発生するメカニズムや財宝の出所については解明されていない。重要なのは、そこに財宝が眠っているという事実だ。


この迷宮は突然、何の前触れも無く発生する。

最奥には迷宮を守護するガーディアンが待ち構えており、財宝を守っている。このガーディアンを倒すと、数日後に迷宮は消滅する。このことからガーディアンの誕生=迷宮の発生との説が有力である。


アイオーン山脈にある大迷宮はアークノギアで最大。しかも月を跨ぐと迷宮の内部が変形するため、最高難易度の迷宮と言われている。

その最奥には見たこともないような財宝が眠っていると言われており、冒険者なら誰もが一攫千金を求めて、この大迷宮に挑戦するのだ。


しかし財宝が眠るというだけでは、貴重な素材が数多い原初の大森林と比べ博打的な要素が強い。

それでも冒険者が迷宮に殺到するのは、迷宮の危険地帯が明確だからだ。


原初の大森林でAクラスやSクラスのモンスターとエンカウントする確率は完全にランダムである。流石に浅い地域でのエンカウント率は低いが、それでもゼロではない。またクレイジー・モンキーのようなモンスターに遭遇すれば高いクラスの冒険者でも全滅する危険性は捨てきれない。


しかし迷宮では浅い階層には比較的弱いモンスターがエンカウントし、深い階層になるほどモンスターのレベルが上がっていく。迷宮に眠る宝箱も、迷宮が存続する限りはリポップされることが判明している。このため迷宮を敢えて攻略せずに存続させることで繁栄している町もあるぐらいだ。


要するに危険性が段違いに低い。

新人の冒険者は迷宮で腕を研く者も多く、規模の小さい迷宮を上級冒険者が攻略することが禁止されているぐらいだ。


これはアイオーン山脈の大迷宮でも例外ではない。

ダンジョンの内部が定期的に変わる以外は、他の迷宮と同様に浅い階層では低レベルのモンスターしか発生しない。

迷宮で出現するモンスターは、ゴブリンやオークといったモンスターを除けば、その地域に応じたモンスターが多い。アイオーン大迷宮でも下層になればアイオーン山脈に棲息する高レベルモンスターがエンカウントする。無論、鳥類型モンスターもだ。


しかしダンジョン内で鳥類型モンスターに遭遇しても、その脅威は一気に下がる。

鳥類型のモンスターが出現する場所は広い空洞が多いが、それでも場所は限定される。追い詰めた後に逃げられる心配も無い。よって鳥類型モンスターの貴重な素材も手に入れやすい。

これがアイオーン大迷宮が数百年と攻略されず存続している理由でもあるのだ。


アイオーン大迷宮の入り口は三ヶ所。

一つはガスパリア帝国。もう一つは獣人国家ジャルロッカ王国。最後の一つがブリトニア王国にある。

このうちガスパリア帝国とジャルロッカ王国の迷宮入り口は一般に公開されているが、ブリトニア王国のものは王家の直轄とされており一般の冒険者が入ることは許されていない。

この理由とされているのは、ガスパリア帝国とブリトニア王国が迷宮を通じて繋がっているから、というものだった。迷宮への入場を制限することでガスパリア帝国の間者が入りにくくするというものだった。


しかし入り口が通じていると言っても、同じ階層で繋がっているわけでは無い。迷宮は広大で同じ階層でも別の階層からでなければ入れないことも多く、内部は月を跨げば変わってしまう。

そんな状況で入り口とは別の出口を探すのは、下に下りる階段を見つけるよりも難しい。

つまり、ブリトニア王国は迷宮の資源を独占しているのである。

また迷宮は高レベルのモンスターがいないブリトニアでは、絶好のレベリングポイントとなっていた。故にブリトニア王国の迷宮入り口は軍関係者の宿営地にもなっている。

ブリトニア王国を出発して七日目。

順平たちは大迷宮の入り口に着いた。


「ここがアイオーン大迷宮か」


「迷宮都市とか期待したんだけどなー」


黒澤和樹の場違いな指摘が飛ぶ。

ちなみに、これまで説明したようなことを順平たちは知らない。

迷宮があり、危険だから軍が管理していると言われているだけだ。迷宮都市ならジャルロッカ王国に実在する。


七日間の移動で疲れていることもあり、迷宮探索開始は明後日ということになった。その間にパーティー編成を行い、迷宮にいるモンスターの特徴を頭に叩き込むようアーレス軍団長から指令を受ける。

パーティーは六人を4グループとし、異世界人が四人、軍関係者が二人で組むように言われていた。

グループのリーダーは三島順平、一条冴、木内知子、結城琢磨が任命される。


順平の班には天堂光輝と黒澤和樹が、冴の班には草壁護が、琢磨の班には赤井と青木が入ることとなった。


順平と琢磨の班は遊撃部隊である。前方を進み、迷宮のモンスターを迎え撃つ。

智子の班は後衛担当。回復などのサポートを担当する。

冴の班は最後尾を守り、後方からの敵に備える。


そして迷宮探索開始の日を迎えた。


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