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75 突撃

映し出される映像を俺は半開きにした口で眺めていた。それに対して、各族長たちは得意気だ。


「あいつら、なかなかヤルじゃねーか」


「ふむ。急こしらえの陣形としては、なかなか上手くいっているようだな」


「幻術と火術に担当を分けたのは正解でしたね。ここまでハマるとは予想外でしたが」


「あの子たち、ダイチ様が見てるから張り切っています~」


「人化した状態でも問題なく戦える、か。早急に任務の割り当てを組み直すことにしよう」


「あ奴等、武器の性能に頼りよって。戦が終わったら、一から鍛え直してくれる!」


「新しいスキルを使いこなせているようだな。だが鬼人族との連携には少し課題が残りそうだ」


・・・なにこれ?

なんで、こんなに圧倒的なんだ?

え、ひょっとしてチャーリーさんには予想通りですか?



Answer.

そうですね。

計算通りです。



なんですと~?


俺は原初の大森林の地形を生かしたヒット&アウェイ戦法を考えていた。

当初は森の地形を生かしたゲリラ作戦を考えていたが、魔導人形にはレーダーのようなものが内蔵されているらしく、隠れても見つかってしまう。

ならば一撃離脱で敵戦力を削れるところまで削り、あとは本陣を囲む障壁で防衛に回れば良いと考えた。


しかし蓋を開けてみればインテリジェンス・モンスターたちは魔導人形を圧倒しており、いまのところ被害は皆無だ。重症を負っても即死しなければチートポーションで回復もできる。とりあえず皆には死なないようにだけ厳命したのだが。


「ダイチ様。敵、魔導人形の約20%を殲滅致しました。いかがいたしますか?」


「え、もうそんなにやっつけちゃったのか!?」


これは正直、計算外だ。

魔導人形は七割ほどを残して、この戦いが終わった後の魔族領防衛に当てなければならない。既に目標の半数以上を倒してしまっている。


「よし、撤退だ。防衛戦に切り替えるぞ」


『はい!』



Report.

敵陣より、高魔力反応が向かってきます。



ん?



Answer.

おそらくクイーンでしょう。



ここにきてクイーン投入か。確かに現状だとイタズラに被害が増えるだけだし、クイーン相手では流石に普通のインテリジェンス・モンスターたちでは荷が重い。撤退命令を先に出しておいて良かった。

本来なら防壁を利用した防衛戦で敵を消耗させ、クイーンを誘き出す予定だったが、まあ良いだろう。


「エルゼフ以外の族長はクイーンを迎え撃て。俺たちは敵の本陣を強襲する。いいか、絶対に死ぬんじゃないぞ!」


『了解!』


族長たちが防壁の外に飛び出していく。クイーンは9体、族長たちは7人。数の面で不利なことは分かっているので、俺たちが如何に素早く本陣を叩けるかが重要だ。


この戦いの後、魔族たちには対帝国への防衛力を残しておいてもらわなければならない。そうしないと、帝国が魔族領に攻め入る可能性が高くなるからだ。

現状、原初の大森林はガスパリア帝国に接しているのは北西部、死霊たちの住まう地域の一部だ。もともと危険な原初の大森林でも、特に危険な地帯である。帝国が原初の大森林を攻めようとすれば、この北西部を突破する必要がある。言わば自然の防波堤だ。

しかし魔族領が帝国の手に渡ると、南西部が帝国と接することになる。

将来的にブリトニア王国と対立する可能性が高い俺の現状からすれば、背後に帝国が陣取るのは都合が悪いのだ。


というわけで魔導人形は、できるだけ破壊したくない。しかし魔導人形は命令されたことを忠実に守る。前に進めと言えば、引くことも止まることもしない。たとえ足だけを破壊したとしても、這って前に進もうとするので質が悪い。白葉の指摘は最もだった。


だから俺たちは、キングを狙うことにした。魔導人形はチェスの駒と似ているし、そういう特性があるのではないかと考えたのだ。

そしてそれは当たりだった。魔導人形たちのキング―――それはつまり、魔公たちに他ならない。


あれだけの数の魔導人形が、どう動いているのか不思議だった。魔石を原動力にしているとはいえ、この数は賄いきれるものじゃない。

その原理は、こうだ。


まず魔族領の町には、魔力を込めると別の魔石に魔力を送ることのできる装置がある。有事で魔導人形を動かす場合、魔族領にいる魔族たちが、この装置に魔力を送り続けるのだ。

そうして魔石に集められた魔力を、魔導人形たちに分配するのである。


では、その役割を担うのは誰か?

各魔公である。

つまり魔公を倒せば、魔力の供給が切れて魔導人形たちを無力化できるのである。


「よし、俺たちも行くぞ!」


「ダルい」


「はっ!」


「妾の秘術、とくと見せてくれるわ」


「腕が鳴るな!」


アクア、桜花、紅葉、タツマキの四人が、それぞれの反応を見せる。


魔公たちは敵陣の奥に、それぞれの陣を構えているようだ。このため敵陣の背後を取れば、直接魔公を叩くことができる!


「なら行くぞ! 【ゲート】オープン!」


転移魔法の【ゲート】を発動し、予め設置しておいた転移ポイントに一瞬で移動する。


「よし、上手く敵陣の背後を突いた! 各自、魔公を各個撃破だ! 以上!」


「ダイチさま!?」


「おい、抜け駆けか!?」


桜花とタツマキの声を無視し、俺は<高速飛行>で飛び出した。目指すは敵の本陣である。


「あそこか!?」


全速力で飛行すると、あっと言う間に本陣が見えてきた。結界で覆われているようだが・・・


「おらあああああ!」


<高速飛行>を解除し、慣性の法則と重力によって俺は結界に突撃する。

そして、結界に向かってA級スキル<破壊槌>を叩きこんだ!


パリン!


ガラスが割れるような音が響き、俺の身体は本陣に雪崩れ込む。


「何者だ!?」


男の叫び声が聞こえる。

砂埃が晴れると、俺と対峙するように黒い鎧の男と小柄な老人が立っていた。

その後ろには、何かの装置を操作する魔族たち。おそらく技官だろう。ということは、目の前の二人が魔公か。


「俺の名前はダイチ。ダイチ・ヤマモトだ!」


高らかに宣言した俺の言葉に、目の前の二人が警戒感を強めたのが分かった。



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