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58 冒険者登録

タラゼアの町に着いた俺たちは、ナーシャと一緒にいた年配の男に案内され宿をとった。

その際に「宿代は全てノーランド商会に」と言ってくれた。

俺が丁寧に礼を述べると、彼は「お嬢様の命を救っていただいたので、これぐらいは当然です」と言って笑っていた。うすうす感じていたが、ナーシャは大きな商会の娘らしい。案内された宿も、かなり上等な部類に入る。

部屋は少し広い個室と、かなり広い四人部屋になった。桜花たちは五人部屋を用意するように言っていたが、何とか押しきった。その時に見た女中の微妙な表情が忘れられない。

予想外にフカフカのベッドで眠ることができ、俺は寝床に就くなり熟睡してしまった。


朝、目が覚めると俺の脇には何故かアクアが立っていた。


「・・・何してんの、お前?」


「護衛」


そういえば原初の大森林で洞窟暮らしやゴブリン・インテリジェンスの集落にいる頃から、アクアは朝になると脇に立っていたな。睡眠が必要ないのはスライムの時から変わっていない。彼女にはカギとか無意味なんですよね。

朝食のために部屋を出ると、いかにも不機嫌そうな顔をした桜花たち三人が立っていた。アクアだけズルいと言って収拾がつかなくなったので、結局五人部屋にすることになった。

女中さん、そんな人間のクズを見るような目は止めてください。俺の身体はキレイです。



朝から一悶着あったが、朝食が終わると俺たちは冒険者ギルドに向かった。

理由は冒険者登録をするためだ。

冒険者になるつもりは今のところ無いが、町に入るには身分証が無いと結構な金額を支払わなければならない。しかも武器の持ち込みができない。手っ取り早く身分を証明できる物が冒険者登録した時に渡されるカードなのである。町に滞在したり出入りすることが簡単にできるよう冒険者登録をすることにしたのだ。


ちなみに教えてくれたのはクローズだ。彼はDランクの冒険者で、ランクとしては中堅どころらしい。もうすぐでCランクになるそうだ。

というわけで、俺たちは冒険者ギルドにたどり着いた。場所は宿の従業員に教えてもらっていたが、チャーリーさんのマップ機能があったので迷うことは無かった。


剣と盾の看板が掲げられた建物に入る。営業が始まって少しぐらいの時間に来たのだが、既に何人かの冒険者が座っていた。掲示板のようなものを見ている奴もいる。座っている連中は鋭い眼差しを俺たちに向けていた。気にせず受け付けに向かう。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。

 クエストの受け付けですか? 依頼ですか?」


営業スマイルの受付嬢が対応してくれた。


「冒険者登録をしたいのですが」


「何名様ですか?」


「五人です」


「少々お待ちください」


そう言って、彼女は受付の奥に消えていった。それと入れ替わるように、スキンヘッドの厳ついオッサンが俺の近くに歩み寄ってきた。

顔が赤いな。朝から飲んでるのか?


「冒険者だぁ?

 お前みたいなガキんちょが、綺麗所を何人も連れて大層なこったな」


俺は驚いていた。

テンプレって本当にあるんだ。感動した。


「んん~、なに黙ってんだ~?

 ビビってんなら、家に帰ってママのオッパイでも・・・うっ!?」


オッサンの目の前に木刀が突き出された。突き出したのは、もちろん桜花だ。


「・・・死ぬか?」


こえーよ。

タツマキと紅葉、腕捲りをするな。アクアを見習え。静かに怒るだけにしろ。それでも怖いか。

突き出された木刀が速すぎて見えなかったからだろうが、スキンヘッドの男は尻餅をついたまま、すごすごと自分の席に帰って行った。そしてまた絶妙なタイミングで受付嬢が帰ってくる。


「お待たせしました。こちらのステータスプレートに触れてください」


懐かしいな。

ブリトニア王国で見たものとは大きさが少し違うが、ステータスプレートだ。

俺は少し迷ってから、ステータスプレートに触れた。まあチャーリーさんが上手くやってくれるだろう。



個体名:ダイチ

種族:人族

レベル:39

B級スキル

<身体強化1><身体強化2><魔力強化1><魔力強化2>

A級スキル

<金剛><韋駄天><天馬><短距離転移><閃光拳><鑑定>



・・・ん?

レベル39って、けっこう高くないか?



Answer.

ポイズンウルフの大群を撃退していますので、あまり低いステータスですと怪しまれます。



なるほど、確かに。

苦労かけてスマンね。



Answer.

恐縮です。



受付嬢は少し驚いていたが、書類の書き込みを終えると「次の方」と声を掛けてきた。

なんでも騎士や貴族が身分を隠すために冒険者登録をすることがあるらしく、レベルの高い人間が冒険者登録をすることは稀にあるそうだ。余計な詮索しないのはマナーである。


「冒険者について、ご説明致しますか?」


「お願いします」



では冒険者について、まとめよう。

冒険者にはランクがあり、上からS、A、B、C、D、E、Fと7段階ある。

一番下のFランクは、要はビギナークラス。冒険者として登録した瞬間に与えられるランクである。想定されているレベルは10以下。

ランクはレベルが想定レベルに達した後に、1ランク上の依頼を達成することで上がる。ただしBランク以上からは試験がある。

Eランク以上の想定レベルは以下の通りだ。



Eランク:想定レベル10~20

Dランク:想定レベル20~30

Cランク:想定レベル30~50

Bランク:想定レベル50~70

Aランク:想定レベル70~100

Sランク:想定レベル100以上



これはモンスターのランクにも当てはめることができるが、モンスターにはSSランクというSランク以上のランクが存在する。

ランクは一つ下のモンスターであれば個人で対応できる範囲、ということらしい。レベルや状況によって変わるのであくまで目安ということだが。

特にBランクを超えるモンスターは同じランクであってもパーティーで挑むことが推奨されている。


ちなみに昨日出会った冒険者のクローズはレベルが28。対するポイズンウルフのレベルは20~25で同じDランクである。同じランクであるものの、一対一の勝負ならなんとかなる相手ではあるらしい。が、多数が相手になれば対処できなくなるのは昨日目にしたばかりだ。

ちなみに原初の大森林では最低でCランク。Bランクの魔物が多く、Sランクの魔物も徘徊している。タイラント・ドラゴンとか。チャーリーさんがいなければ確実に死んでいただろう。


ブラフステータス上、俺のランクはCランク後半に入った辺りということになる。これぐらいならポイズンウルフを数匹相手にしても戦えるレベルなのだそうだ。

もちろん大群を瞬殺するようなレベルではないが、目撃者はクローズやナーシャぐらいだし、彼らが誇張して伝えているのだと周囲は思うだろう。

あと初期登録時にレベルが30以上だった場合、ランクはFからではなくEから開始できるとのことだ。これは即戦力になる冒険者を低ランクにしておく余裕がギルドにない、というのが理由らしい。


冒険者の主な仕事はモンスターを狩って素材を集めることだが、やはり死亡率は高い。レベルに合った仕事を割り振りたいということだろう。

俺たちの場合、Cランクまでは一つランクが上のクエストを受ければランクが上がっていくことになる。あと例外はあるが、原則として二つ下のランクにあるクエストを受けることは禁止されている。Cランクまで上がった場合、Eランク以下のクエストは受けられなくなるというわけだ。


「よく分かったよ、ありがとう」


俺は受付嬢に礼を言うと、カウンターから離れた。隣で話を聞いていた紅葉も後に続く。アクアと桜花は少し離れた位置に立っていた。タツマキは椅子に座ってくつろいでいた。話を聞いとけよ。


「終わったか?」


俺を見ると、タツマキは嬉しそうに駆け寄ってきた。


「ああ。全員分のカードも、もらったよ」


「じゃあ、次はどこに行くんだ!?」


「そうだな・・・」


昼前にはナーシャの住んでいる屋敷に向かうことになっている。少し時間があるわけだが・・・


「ちょっとイイか?」


そこで40歳ぐらいの渋いオッサンに声を掛けられた。


「俺はこの冒険者ギルドのギルド長、バナスだ。お前さんがダイチか?」


「そうですけど」


「クローズから報告を受けているんだが・・・お前さんの意見を聞きたくてね。時間があるなら奥のギルド長室まで来てもらえないか?」


ふむ?


「別に構いませんよ」


俺はタツマキたちを見た。


「ギルド長室は広くないから、できればお前さんと、もう一人ぐらいでお願いしたい。あ、待っている三人には俺から飲み物をプレゼントしよう」


バナスさんが受付嬢に合図を送ると、彼女はカウンターの奥に消えていった。


「ってことだけど、どうする?」


「そういうことなら妾が行こう」


「む、紅葉。抜け駆けする気か?」


「ならば問うが、お主たちが小難しい話を聞いて、主様に助言できるのか?」


「むぅ・・・」


「役割分担というやつじゃよ。今回は妾に譲るがよい」


「仕方あるまい」


桜花が折れた。タツマキは運ばれてきたジュースに喜んでいる。アクアは静かに立っていた。


「じゃあ、ついてきてくれ」


三人を残すことに一抹の不安を感じたが、俺はギルド長の後を追った。



テンプレって大事ですよね。


ブックマーク件数が500件を突破しました~。

この場を借りて、御礼申し上げます。


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