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53 会議をしてみた

「それでは第一回の会議を開催します」


俺は主だったメンバーを集め、今後のことを話し合うために会議を開いた。各種族の族長と俺の側近(自称)であるアクア、桜花、紅葉の三人も参加している。

彼らは拍手をして盛り上げようとする俺の気持ちも知らず、神妙な顔で俺の言葉を待っていた。

みんな真剣だ。ふざけるのは、ほどほどにしよう。


「さて、色々と解決しないといけない問題が山積みだ。順番に片付けていくぞ」


俺の言葉に全員が頷く。


「先ずは対魔族についてだな。攻めてくると思うか?」


シャドーウルフの族長、ウルフェンが挙手した。


「魔族領に放った斥候の報告では、間違い無さそうです。奴らの主力である<魔導人形>が多数、起動を開始しているとのことですから」


<魔導人形>とは、魔族の主力兵器である。

魔族は生まれながらに高い魔力を有するが、現状で戦える者は魔公を除いて数えるぐらいしかいないのだという。もともと少数の種族であったが、最近では血も薄まり人間との混血も多いのだとか。

人間を卑下しているのは魔族の中でも貴族クラスの連中で、庶民階級の魔族は人間たちと交流のある者も少なくないらしい。難民として魔族領に流れてくる者も多いらしく、労働力の足りない魔族には人間の協力が不可欠なのだそうだ。

しかし表だって交易をしないのは、やはり<魔王>の存在があるかららしい。<魔王>はモンスターを従える力を持ち、例外なく人間に敵対する。上流階級の魔族たちは人間たちから世界の覇権を奪い返すことを悲願としているので、国同士の付き合いというわけにはいかないらしい。


そんな彼らが軍隊を組織できるわけがない。数が少ない上に、こと労働力は人間に頼っている状況で兵役など課せば魔族の生活はたち行かなくなる。

そこで彼らが主戦力として据えたのが<魔導人形>である。

なんでもチェスの駒のような形をしており、ポーン、ルーク、ビジョップ、ナイト、クイーンの計5種類が存在する。強さはポーンから順番に強くなっていく。

最弱のポーンすら堅い装甲で守られており、Cクラスのモンスターと同程度のレベルなのだという。ちなみにCクラスというのは、クレイジー・モンキーぐらいを想定してほしい。


<魔導人形>の生成にも起動にも大量の魔力が必要となるが、そこは生まれながらに高い魔力を有する魔族である。彼らの魔力があれば、何千もの魔導人形を生産し、維持することができる。


「数は分かるか?」

「・・・魔公全員が軍備を整えているようです。10万は下らないかと」


わお。

こっちの戦力は約4万。半分以下か、かなり厳しいな。


「こちらも準備を整える必要があるな。装備については、どうだ?」


俺の言葉に挙手したのはゴブリン・インテリジェンスの族長エルゼフだった。彼は各地に点在するゴブリン・ハーフたちを保護し、ゴブリン・インテリジェンスの代表となっていた。


「我らゴブリン・インテリジェンスの装備は魔物の革から作った軽装の鎧が大半です。武器は弓矢が基本ですが、原初の大森林で命を落とした冒険者の装備を何点か使用しております。

 しかし他の種族全体に行き渡らせるには圧倒的に数が足りません」


「だよな~」


現状では普段生活するための衣服ですら足りていない。あれは目に毒だし、環境的にも良くない。


「後は防衛の拠点だな。この集落も流石に限界だ」


俺たちは今、エルゼフたちの住むゴブリン・インテリジェンスの集落に住んでいる。

元は百名足らずのゴブリン・ハーフたちが住んでいただけだったのに、鬼人族やサーベルタイガー、さらにシャドーウルフが居を構え出している。その上、各地のゴブリン・ハーフたちも保護を求めて集まり出しているので、村の回りは難民キャンプのようになっている。


「こうなったら全員で引っ越しするしかないな。場所の候補はあるか?」


「僭越ながら、発言をよろしいですか?」


挙手したのは、正式に妖弧族の族長となった白葉である。


「いいぞ」


「これだけの人口となれば、魔都ルシフェルアークの跡地ぐらいしか無いと思われます」


「やっぱりか」


魔都ルシフェルアーク。

かつて原初の大森林を平定し、魔族やインテリジェンス・モンスター、果ては人族すらも従えたという真の魔王。堕天の魔王ルシファーが建てたとされる都だ。

確かにあそこなら原初の大森林でも中心部に当たるし、水瓶であるサラサ湖とアス湖からの治水もある。開けた場所だから少し手を加えるだけで済むし、かなりの数が住めるだけの土地もある。


・・・ただな~。

俺の配下たちは、俺を何故か魔王だと思っている。なんとか否定しているが、真の魔王とも呼ばれるルシファーの建てた都の跡地に町を造れば、周囲が俺を魔王にしてしまうだろう。

しかし他に選択肢が無いのも事実だ。北西部にある今の集落ではブリトニア王国に近いし、魔族領からは遠すぎる。


「仕方ない。そこに移住するか」


俺の言葉に、少しだけ緊張の空気が和らいだ気がした。

ウルフェンさん、尻尾が暴れてますよ。サーベルトに白葉さんよ、耳が嬉しそうにグルグル動いてますよ。


「けど、町を造るにせよ装備を整えるにせよ、俺達だけでは無理があるな」


ゴブリン・インテリジェンスたちは狩猟を中心に生計を立てていたし、インテリジェンス・モンスターたちは獣と変わらない生活をしてきていた。町づくりの知識なんてないし、衣服も簡単なものしか作れない。


「というわけで、人間族の町に行って、技術者をスカウトして来ようと思う」


この言葉に、少し動揺する空気が会議室を満たした。


「ニンゲンを配下に加えるのですか?」


鬼人族の族長である王牙が挙手と同時に質問する。


「配下っていうか、協力者だな。

 俺たちが生活していくには、人間との関わりは避けて通れないだろ」


「具体的には、どうなさるおつもりですか?」


「オレ様が拐って来ようか? どうせ拐うなら、女が良いよな?」


魚人族の族長魚正宗と猿武族の族長カイザーが順番に口を開いた。


「・・・カイザー、桜花のシゴキ決定な」


「な、なんで!?」


「協力者って言っただろうが! 拐って脅すのは人間との関係を悪くするだけだ」


桜花に睨まれ、カイザーが小さくなる。


「とりあえず俺が人間の町に行って、協力してくれそうな人物を探してみる」


「お待ちください」


挙手したのはライトニングタイガーの族長サーベルトだ。


「主がお一人で行かれるつもりか?」


「そうだけど?」


「それはイカンな」


「だめ」


「私もお供します」


声を上げたのは、紅葉にアクアに桜花だ。俺は彼女たちに向き直った。


「人間の町に行くのに、お前らモンスターを連れて行けないだろ」


従魔ということなら連れて行けないことはないが、彼らの姿は目立ちすぎる。紅葉なら獣人で誤魔化すことはできるだろうが、九尾の尻尾は目立ちすぎる。


「そんな理由か」


「それなら大丈夫」


「ダイチ様を一人で行かせるわけにはいきませんからね」


言うが早いか、彼女たちは身体から光を放ち、その姿を変えていった。


紅葉は九本の尻尾を一本に。桜花は頭の角が無くなった。

一番変化が激しかったのはアクアで、スライムの身体が色彩を持ち、完全に人間の少女となった。


「お前ら、それって・・・」


「ライトニングタイガーやシャドーウルフのA級スキル<獣人化>から派生した<変化>のスキルじゃ。チャーリー殿に頼んで、我らにコピーしてもらった」


何をするんですか、チャーリーさん。


「これなら町に入っても問題ない」


ちっ。

俺に拒否権は無さそうだ。


「・・・問題を起こすなよ」


「わかっておる」


「当然」


「問題ありません」


本当だろうな?


「こいつらも連れて行くことになった」


「そうですか。お三方がついているのでしたら、心配ありませんな」


俺は心配だけどね。


「じゃあ、明日に出発する。エルゼフ、どこの町がいいと思う?」


「ここからでしたら、エスペランサ王国にあるタラゼアの町が良いかと。首都を除けばエスペランサ王国で一番に大きな町ですし、亜人種にも寛容であると聞いています。また、少ないですが我らと交易もあります」


ゴブリン・ハーフたちは魔物の素材をタラゼアの商人に売り、薬や食料品、生活雑貨などを手に入れていたらしい。そういった商人なら話を聞いてもらい安いだろう。


「なら明日の朝にはタラゼアの町に向かう。森の出口まで案内を頼む」


「心得ました」


「じゃあ、そんな感じで・・・」



CAUTION!

敵性反応を感知。

真っ直ぐこちらに向かっています。



・・・なに?

誰だ!?



Answer.

鑑定を妨害されました。

鑑定不能です。



鑑定不能!?



CAUTION!

衝撃きます。



っ!


「全員、伏せろ!」


俺の言葉と同時に衝撃が建物を揺らした。



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