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41 桜花VSカイザー

紅葉の視線から逃げるように、俺は桜花と<カイザー・コング>ことカイザーの戦いに目を向けた。


「ぬははははははははっ! なかなか良い動きだな、女!」


桜花は防戦に回っていた。

カイザーの嵐のような攻撃を時に躱し、時に受け流している。

カイザーは大きな図体の割りに素早く、四方八方から自慢の拳を繰り出していた。

だがそれを、桜花は危なげ無くさばいている。


「くははははっ!

 まさかオーガすらも凌駕し、<金剛>の派生スキル<剛腕>を使うオレ様の攻撃を、ここまで捌くとは思わなかったぞ!」


A級スキル<金剛>は魔力を身体に流し、筋力全体を強化するスキルである。流す魔力量が多いほど、その効果は高い。身体機能を強化するスキルの中では、最も基本とされるスキルだ。


その派生スキルである<剛腕>は、全身に巡らせる魔力を腕に集中させることで腕力を爆発的に高めるスキルだ。ただでさえ腕力の強いカイザー・コングがこれを使用すれば、俺の【シミュレーション】でクレイジー・コングがしたように、半魚族の戦士すら一撃で戦闘不能に陥るだろう。


「だが守っていてばかりでは、オレ様には勝てんぞ。

 それとも責められるのが好きなのか!?」


あの猿、ちょいちょい下ネタを挟むんだよな。桜花が苦い顔をした。


「そのよく回る口を閉ざせと忠告したはずだが・・・」


「くはははは! ならばオレ様を倒してみることだ!」


「では早く、その<剛腕>というスキルを使って見せろ」


「なんだと?」


カイザーの表情が変わる。


「<剛腕>ならば、先程から使っておるわ!」


「なんだ、それでこの程度なのか?

 ならば早く言っていれば終わらせていたものを」


「何を言って・・・って、なにぃ!?」


カイザーは大きく目を見開いた。両腕を組んで打ち下ろした攻撃を、桜花が片手で防いだのだ。


「ば、ばかな・・・ゴフウッ!?」


カイザーは突然、その場に腹を抑えてうずくまった。桜花がガラ空きだった腹に一発、拳を叩き込んだのである。


「えらく脆いな」


桜花的にとっては殺さないように手加減した一撃だったのだろう。それでここまで痛がっているのだから、ちょっと焦っている。「あれ、死なないよね?」みたいな感じで。


「て、てめー・・・なにを・・・なにを、しやがった?」


「腹に一発、入れただけなんだが・・・大丈夫か?」


「ふ、ふざけんじゃねぇ!」


怒りに任せてカイザーが桜花に飛び掛かる。

しかし、


「ぐはあっ!?」


余裕で避けた桜花が脳天に木刀の一撃を叩き込んだ。


・・・。

え、木刀?


「この程度でオーガを凌駕するだと? ふざけるなよ、貴様」


「な、な、な!?」


「来い。調教してやろう」


「ウガアアアアアッ!」


木刀の切っ先を向けて宣言した桜花にカイザーは拳を振り上げる。


「おそい!」


しかし拳を降り下ろす前に距離を詰められ、顔面に一撃が入る。


「一撃だけだと思うな!」


顔面を抑えたカイザーに容赦のない一撃が腹に加えられる。

っていうかアイツ、武器なんか使えたのか?



Answer.

鬼人族は武器の扱いと、それを強化する魔力の扱いに長けた種族です。



そうだったのか。そういえば桜花はキング・オーガとの戦いの時に大剣を振り回してたな。

それにしても桜花に刀か。アリかもしれないな。


「そらそら、どうした!? 動きが鈍くなっているぞ!」


「ひいいいい!!」


「ここも! ここも! 隙だらけだ!」


「ぎゅあああああああああっ!!」


カイザーが泣きそうな声を上げている。


突っ込めばヒラリとかわされ、無防備な箇所に何発も木刀を打ち付けられる。

防御に回れば瞬時に接近され、守っていない部分を狙い撃ちにされる。

進むも地獄、退がるも地獄。カイザーがボロボロになるまで五分とかからなかった。


あれ、木刀だよね?



Answer.

魔力を込めて強化しています。



あ、やっぱり?

オーガ族―――今は鬼人族か。

鬼人族は魔法が得意じゃない。それはキング・オーガとの戦いの時に俺が指摘している。

しかしそれは、魔力の扱いが下手ということじゃない。


魔力には<放出系>と<練気系>で扱いが変わる。

主な攻撃用スキルや魔法は<放出系>の部類に入るが、<金剛>のような身体強化系のスキルは<練気系>の扱いに長けていないと使いこなせない。また一般的に<練気系>の魔法やスキルは身体にかかる負担が大きく、ある程度の筋力量が無いと意味がない。


オーガ族は、この<練気系>の魔力を扱うことに長けていた。

それこそが、彼等オーガ族が原初の大森林で最強と言われる所以である。確かにオーガとクレイジー・コングでは基礎的なステータスに差は無いが、戦いにおいて重要なのはスキルの活かし方である。

はっきり言ってカイザーも白葉も慢心していて隙だらけだし、魔法やスキルの扱いが悪い。


例えば、俺が白葉なら<狐火>を弾幕にして【ダークミスト】とかいう闇の霧を発生させる魔法を放ち、魔力関知に優れたアクアを翻弄しながら戦う。

カイザーなら<剛腕>に頼らず、<金剛>で手数を増やして追い詰める。


ちなみに<剛腕>は俺も持っているが、使わない。

腕の強化なら<金剛>の魔力を腕に集中させれば足りるし、腕だけ強化しても他の部分を強化できなければバランスが悪く、カイザーのように隙だらけになるからだ。桜花もそこを突いて攻撃していたしな。


あ、カイザーが動かなくなった。ケツだけ高く上げて、ピクピクしている。


「ふん! この程度のシゴキで、情けない。<皇帝種>が聞いて呆れるわ!」


木刀を仕舞い、桜花が不満そうに言った。

あ、すかさずアクアさんが【アクアプリズン】で拘束している。

仕事早いね~。


「お待たせしました」


桜花が俺に向かって頭を下げた。

原初の大森林における最強種の二体を簡単に無力化するとか、かなり強いよね。向こうで半魚族と牙狼族の代表二人がドン引きしてるし。

それじゃあ仕上げに取り掛かろう。上手く黒幕が出てきてくれることを願って、な。




H28.7.27

前話までの内容に合わせて修正しました。

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