39 アクアと桜花
炎が俺を包み込んだが、まったく熱さを感じなかった。
術式がなってない。魔力を単純に炎に変換しただけでは、大した威力にはならないのだ。
実力差を分からせるために何度か後ろからはたいてやったのだが、まるで理解していない。
アホなんだろうか?
アホなんだろう。
炎が収まり、無傷で立っている俺を見て案の定驚いてるし。
・・・ん?
よく見ると、俺を包み込むように水の膜が張られていた。
アクアの【ウォーターシールド】だろう。魔力障壁は張っていたが、少しも熱さを感じなかった理由が分かったよ。
「マスターに手を出さないで」
「邪魔をするな!」
「断る」
「ならばキサマから焼き付くしてやる!」
おーおー。
血気盛んなヤツ。
「ダイチ殿」
多尾狐の紅葉が話しかけてきた。
「なんだ?」
「あの精霊、白葉と戦う気のようだが、止めなくて良いのか?」
「いいんじゃね。本人も戦る気みたいだし」
実はアクアから、護衛らしい仕事をさせてもらっていないと釘を刺されていた。
よく考えると、タイラント・ドラゴンの時もキング・オーガの時も、ほったらかしだったからな。
そろそろ俺も戦いの経験を積んできたし、配下に戦闘を任してみて、どの程度戦えるか確認しといた方が良いだろう。
チャーリーさんに確認したら問題ないって言ってたし。
「テメー、オレ様のことを忘れているな?」
おっと、カイザー・コングが俺の後ろに回り込んできた。デカイ図体の割りに、意外と速いな。
「クレイジー・モンキーたちの落とし前、つけさせてもらうぜ」
上からパンチを降り下ろして来る。
落とし前って、お前クレイジー・モンキーを壁にして白葉の魔法を防いだだろうに。まあ俺のオリジナ・ルスペル【シミュレーション】の中の話しだけど。
あ、俺は動かないよ。動く必要が無いからな。
「なに!?」
カイザー・コングの拳は桜花の手によって受け止められていた。
「ゴミめ。ダイチ様に手を上げるとは、万死に値する」
おい、殺すなよ?
「ほぉう。オレ様の拳を素手で受け止めるとは、なかなかやるな。オレ様の嫁にしてやろうか?」
「その臭い息を吐く口を即刻閉じろ。本当に殺すぞ?」
いや、だから殺すなよ?
「面白い! やってみろ!」
こっちでもバトルが始まってしまった。
おっと、今回はひょっとして、俺の出番は無い?
まあ後で魔力を使わないといけないし、【シミュレーション】で魔力の消費も大きかったから、次に備えて休ませてもらうことにしよう。
H28.7.27
前話までの内容に合わせて修正しました。




