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16 レベルアップしました

Report.

レベルが1から9にアップしました。



チャーリーの報告を受け、胸を撫で下ろす。

レベルが上がったということは、無事に戦闘を終えたということだ。しかもレベルが一気に8段階上がっている。

さすがは竜種だな。


「す、すごい」


レベルアップと<新月>の威力に半ば呆然としていた俺は、リンの言葉で我に帰った。


「大丈夫か?」


「う、うん。足にまだ力が入らないけど、怪我はしてないよ」


「そうか」


目立った外傷もないし、無事なようだ。

安心した俺は、張り詰めていた気持ちが抜け落ちていくように、その場に座り込んだ。


「お兄ちゃん!?」


「大丈夫だ。ちょっと魔力を使いすぎただけだよ」


思えばスキルを使いっ放しだったからな。よく魔力が尽きなかったものである。

しかし───

俺は<魔剣:新月>を見た。

凄まじい、いや凄まじ過ぎる威力だったが、それ以上に燃費が悪い。

おそらく使い慣れていないせいだろうが、魔力の消費量が半端ないのだ。


(しばらく使えそうにない、か)


敵を倒しても、戦えないような状況になるのはマズイ。ここはモンスターだらけの魔境なのだから。

俺は少しふらつく足で立ち上がった。

魔力はB級スキル<魔力回復促進>があるから、少し休めば回復していくだろう。

そう思っていたのだが、



CAUTION!

敵性反応レッド

後方200メートルです。



なに!?

俺は実戦モードを解除していない。

魔力は消費しているが、それでも敵性レベルがレッドということは、地竜を上回る脅威ということである。

最悪のタイミングだった。場合によってはリンだけでも───


「・・・マスター」


暗くて深い井戸の底から這い出るかのような声に背筋が凍る。

リンも「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。

<威圧>のスキルは感知していない。

幼い頃、古井戸から這い上がってくる幽霊が出てくる映画を見たことがあるが、その時に感じた恐怖と似ている気がした。

俺は恐る恐る後ろを振り返る。

怒りというエネルギーが目に見えるということを初めて知った。笑顔だが、凄まじいオーラを放っているアクアが立っていた。


「・・・何度も何度も念話で話し掛けたのに」


「え~っと」


「何度も何度も待ってって言ったのに」


「いや、その・・・」


「マスターのバカ。【アクア・クリエイト】」


俺の頭上に大きな水溜まりが浮かんだかと思ったら、落ちてきた。水でビショビショになる。


「反省して」


「はい」


俺は母親に怒られる子供のように小さくなった。。

というか、アクアに敵性反応レッドって、おかしくないか?



Answer.

知りません。



チャーリーさんも怒ってるよ!?

いや、確かに思いっきり無視したけど!

そういえば俺が消耗して、後の行動が危険になるようなことをチャーリーがさせるとは思えない。アクアが近づいていたから、問題ないと判断したのだろう。

う~ん。

こいつらを怒らせるような行動は自重した方が良さそうだ。


「あなたは大丈夫?」


「・・・へ?

 あ、大丈夫です! 大丈夫です!」


なぜ二回言った?


「そう。なら、いい」


それで自分の用事は終わったとばかりに、アクアは目を閉じた。


・・・まだ怒っているっぽい。


とりあえず俺はリンに背を向けて腰を落とした。


「傷は無いみたいだが、歩けないだろ? 住んでいる場所まで送って行ってやるよ」


「あ、ありがとう」


ちなみにアクアに濡らされた服は魔法で乾かしている。

乾燥機も真っ青である。

そもそも、俺が学生服一着で過ごせているのも、魔法を使えば一瞬で洗浄できるからだ。

魔法マジ便利。


「どっちだ?」


「あっちの方」


チャーリー、どうだ?



Answer.

約1300メートル先にゴブリン・ハーフの集落があるようです。



そんなに遠い距離じゃないな。



CAUTION!

ゴブリン・ハーフの集落より敵性反応多数。こちらに向かってきます。



・・・は?

なんで?



Answer.

先ほどの魔力を感知したからではないでしょうか。



なるほど。

あんな魔力を探知したら、様子見に人を出すのは当然か。


「リン。お仲間が迎えに来てるみたいだぞ」


「ほえ!?」


「さっきの魔力を感知して、偵察に来るみたいだな。もう大丈夫じゃないか」


リンは「なんでそんなことが分かるのか」と言いたげだった。

敵性反応はリンを引き渡せば消えるだろう。と言っても脅威レベルはイエローだし、全員レベルは40に満たない。

大したことには、ならないだろう。

そう思っていたのだが・・・


「キサマ、何者だ!?」


木々を伝って陣取り、俺を包囲すると、ゴブリン・ハーフたちは武器を構えた。

肌の色は緑っぽく、リンと同じように痩せているが、体格は成人男性と同じぐらい。

その表情には、怒りと焦りが見てとれた。

なんか追い詰められたような顔を一様にしているが、そこまで神経質になることだったのだろうか?


「み、みんな、落ち着いて!」


「リン!? おまえ何をやってるんだ!?」


「ボクは・・・」


「早く、そいつから離れろ! 危険だ!」


「ボクの話しを・・・」


「リンを人質にとる気か!?

 我らをゴブリンの半妖種と思って侮るなよ! 全員、構えろ!」


「ちょ、レブンおじさん!?」


あ~。

人の話しを聞かないタイプの性格か?


いや、これは・・・怯え?


たかが魔力の一撃ぐらいで、そこまで過剰に反応せんでもいいと思うが、攻撃されれば反撃するしかない。

実戦モードから模擬戦モードに戻しとこうかな?


「・・・うるさい」


そんな俺の思考は、アクアの一言で吹き飛んだ。

アクアが<覇王の威圧>に似たスキルを周囲に放ったのだ。たしかA級スキル<海の厄災>だったか。


『っ!?』


数名が気絶する。

おいおい、やり過ぎだろ。


「なっ!? 化け物め!」


「話しぐらい聞いて」


アクアの身体から水の触手が伸び、一瞬でゴブリン・ハーフたちの目の前に鋭い鎌のようなものが突き付けられた。

その動きで流石に実力差を思い知らされたのか、レブンというリーダー格の男の動きが止まった。


「レブンおじさん!? ちょっと、アクアさんストップストップ!」


「止まるのは向こう」


「そうだけど!

 みんな、早く武器を下ろして! この人たちは敵じゃないから!」


リンは俺の背中から降りると、レブンの前に立って訴えるように叫んだ。そして、俺の方を真っ直ぐに見る。


「ヤマモトお兄ちゃん、ごめんなさい」


「まあ誤解が解けるならいいが、こいつら余裕無さ過ぎだろ。本当に大丈夫か?」


「い、いつもは冷静で、穏やかな人達なんだよ!

 ちょっと、いろいろあって・・・」


「いろいろ、ね。それはリンが魔仙草を一人で取りに来ていた理由と関係があるのか?」


「魔仙草を一人で!? リン、本当なのか!?」


「うん」


「どうして、そんな危ないことを!?」


「お父さんの怪我を治したかったんだ」


「っ!?

 だが、あの湖はヒュージ・スライムが大量にいるから危険だと言っただろう。スライムは気配察知に優れているから、お前の<忍び足>でも見つかってしまう」


「ごめんなさい。でも、スライムたちは怖くなかったよ。お兄ちゃんが助けてくれたから」


「この男が・・・?」


「しかも、地竜タイラント・ドラゴンに襲われたボクを助けてくれたんだ。タイラント・ドラゴンを一人で倒しちゃったんだよ」


「なっ!?」


レブンというゴブリン・ハーフの口は、開きっ放しだった。


「ヤマモトお兄ちゃん」


「なんだ?」


「お願いがあります。ボクを・・・ボクの村を助けて」




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