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01 始まりの朝

※お知らせ

平成28年5月25日の初投稿より3カ月にわたって連載してまいりましたが、

作品の大幅なプロット見直しのため無期限の休載としております。


おそらく新規連載として書き直すことになるかと思われます。

平成28年9月11日の98話投稿分を最後に休載となります。

完結しておりませんので、申し訳ありません。

この点にご留意していただき、お楽しみいただければと思います。


リリリリリリリリリ!!


けたたましい音を立て、目覚まし時計が俺の安眠を遮る。

時計の位置を確認することなく、俺は手を伸ばして停止ボタンを押した。


「う~ん」


ダルい。

朝には必ずと言っていいほど抱く感想だが、あまりのんびりもしていられない。

俺は少し気合いを入れて布団から出ると、思いっきり身体を伸ばした。


「ぬああああああああっ!」


ついでに奇声を上げる。


「よし!」


そして準備を始めた。

トーストを焼いてバターを準備し、コーヒーをセットする。

その間に手早く顔を洗い、焼けたトーストにバターを塗って食べ始める。

ただしイスには座らず、冷蔵庫から昨日の晩飯の残りを取りだし、弁当箱に詰めていく。ちなみに野菜炒めである。野菜は大事ですよ、と。

そうしてトーストを食べ終えると卵を取り出し、慣れた手つきで卵焼きを仕上げる。

ちなみに砂糖は入れない。俺はコーヒーもブラック派だ。

起きるのと同時ぐらいに炊けるようにセッティングしておいた米を弁当に詰め、ふりかけをかける。あとは着替えて身支度を整えた後、家を出るだけだ。

少し時間には余裕があるので、コーヒーを飲みながらテレビのニュースを見る。「お前は本当に高校生か?」と言われそうだが、世間の関心を知っておくのは大事だろう。

ニュースでは全国の校舎が老朽化してきており、補強工事が始まっていると言っていた。

うちの高校も古いのだが、大事だろうか?


コーヒーを飲み終えて洗い物を片付けると、ふと自分の机に目がいった。昨晩、描いていたマンガの1ページが目についた。

ファンタジー世界で、刀を持つ剣士が活躍するマンガ。

ありきたりな設定だが、今はとりあえず好きなものを描いて絵や構図の勉強を続けていた。

確か高校生がプロの漫画家として活躍するマンガがあったが、現実はもちろん甘くない。

俺の作品なんて、同人誌でも売れないだろう。

っと、いかん。

のんびりしすぎたようだ。


「行ってくるよ。母さん、加奈」


デスクの上で微笑む母と妹の写真にそう言って、俺は家を出た。




今日も快晴である。

学校までは徒歩五分程度。朝のことを考えて、学校に近い物件を選んで正解だった。

自転車や徒歩で通学する学生たちの間に、見知った後ろ姿を発見する。


「おはよう。三島」

三島順平。

俺が友人と呼べる中の、数少ない一人だ。


「おはよう、大地。・・・眠そうだな?」


そうか?

少々の疲れは自覚しているが、顔に出るほどだろうか。


「またマンガか」

「まあな」

「今日の五時間目は古文だからな。寝るなよ」

「あれは眠りの呪文だろ?」

「マメ球にそう言え」


そんな話をしている内に、門の前まで辿り着いた。


「文化祭まで、あと一週間か」

「ウチの出し物は喫茶店だったな」

「無難なところだよな。メイド喫茶なら、まだヤル気も出るんだが」

「またオタクと罵られるぞ?」

「メイド喫茶はオタクだけのもんじゃないだろ」

「その言葉が連中に届けばいいな」


靴を履き替え、教室に向かう。

その途中、

「山本くん」

声を掛けられて振り替える。


長いストレートの髪をした小柄な眼鏡女子と、ベリーショートの髪型で170cmある俺より少し身長の高い女子が立っていた。


ストレートの方が木内知美。我がクラスの委員長だ。


ベリーショートが一条冴。確か文化祭の実行委員をしていたはずだ。


「おはよう、委員長。一条さん」

「おはよう。ちょっとだけ、いいかな?」


チラリと時計を確認する。ホームルームまで少し時間はある。


「いいよ」

「ありがとう。一条さん、いいって」

「すまないね、山本。実は、アンタに描いてもらった絵なんだけど」

「あれがどうかしたのか?」


ケーキとコーヒーのメルヘンな看板をデザインしてやった話しか。

ちなみに萌え絵ではない。というか、俺の描くマンガ自体が萌え絵ではない。だが萌え絵が嫌いなわけではない。


「塗りがイマイチ上手くいかなくてね。手伝ってくれると助かるんだ」

「そんなことか。いいよ」

「本当かい!?」

「ああ」

「家の方はいいのか?」


三島が気を使って言ってくれる。


「一人暮らしだからって、暇が無い訳じゃないさ。俺は帰宅部だからな。文化祭はクラスのイベントだろ?」


ちなみに、わが校にマンガ研究部は無い。

あっても入らなかったと思うが。


「イイこと言うじゃないか!」

「なら、俺も手伝うか」

「サッカー部の方はいいの?」


これは委員長だ。


「大会は近いが、山本の言うように文化祭も大事なイベントだからな。ノータッチってわけにもいかんだろ」

「三島も言うじゃないか! 実は作業が少し遅れていてね。助かるよ」

「じゃあ、放課後に」


そう言って、委員長は頭を下げると去っていった。

一条も後を追う。


「良かったのか? キャプテンだろ?」

「クラスの出し物をサボっていい理由にはならないさ」


文化祭ではクラスで一つ、出し物をすることになっている。だいたいは展示作品が多い。文化部はクラスの出し物への協力は免除されるし、冬に大会を控えているサッカー部も同様だ。

俺の担当は先ほど述べたように、大看板のデザインと下書きだった。一人暮らしで大変だろうという理由で、その後の準備作業は免除されていた。

チャイムが鳴り、周囲が慌ただしく席に向かう。

俺は欠伸をすると、自分の席に向かった。





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