俺、合宿に同行する。(4日目)
「最下層…。やっと試練を受けられるな」
「女体化してる時点で試練っぽいけどね」
俺達は10層にたどり着いた。
女体化してるので、行動しにくいが、なんとかここまで来ることができた。
「よし。準備はいいか?できてなくても行く!」
問答無用で試練の部屋に踏み込んだその刹那。
俺とルシフェルとレンキは何かに貫かれた。
「ゴハッ…な、何だ!?」
「こ、これは!?」
「み、皆…何のつもり…」
「あら。まだ気づいてなかったの?案外間抜けなのね、貴方達?」
「お、お前…何故ここに…」
「さ、サツキ……どうして……」
俺達が後ろを向くと、そこには二人の人影があった。
一人は青い髪の少女。
もう一人は、月島 皐月。クラスメイトの一人だった。
「ああ。そういえばそういう設定だったわね」
「設定……どういう事だ」
「要するにね…クラスメイトの月島 皐月という人間は存在してなかったのよ」
存在してなかった。この言葉に俺は引っ掛かった。
こいつの言ってることはまるで…
「初めからお前がこの世界の人間だったみたいな言い方だな」
「鋭いわね…。正解よ」
この女は初めから俺達のクラスメイトを装っていただけだった。
そして、俺達を殺すために正体を現したのか。
「今回はレンキに用は無いわ。用はあなたにあるのよ、真田君」
「俺に…?」
俺が顔をしかめると、その女は笑顔で言い放った。
「あなたを殺すわ」
レンキは巨大な龍を召喚した。
「なっ…龍!?」
「ヴァンプワイバーンよ。アンデットだから、普通の攻撃では倒せないわ」
ヴァンプは吸血鬼の能力所有者のことだ。
おまけにアンデットだという。これは曲者だな。
「アンデット…疲労と言う概念がないモンスターか」
「そういうこと。貴方に倒せるかしら?」
龍はブレスを吐いてきたが、俺はすかさず避けた。
「グォッ…!」
「手負いの状態で戦いきれるのかしらね」
ダメージを負っているので、出血がヤバイ。
「他の奴らはどうした!?」
「ぜーんぶ彼女の演技よ。私達の脅威になるものは、何年かけても排除しなければならない」
さっきからなにも言わない少女が、六人分一人で演じてたのかよ…。
「クレイジーバレット!」
「ウガッ…!?」
今度は銃弾が飛んできて、俺は撃ち抜かれた。
さらにもう一発放たれて、ヴァンプワイバーンに直撃した。
そして俺の身体は男の物に戻っていた。
「女体化が解けてる…。これは…」
「クレイジーバレット…。ゴルダグ、貴方の仕業ね?」
後ろに居たのは、サイボーグのような見た目の男だった。
「魔女ファム。やはり貴様が全ての元凶か」
「さすがは番人。迷宮内の事もすでに知ってるようね」
「貴様のせいでどれだけの命が散ったと思っている!」
「私はそもそも何もしていないわよ。仕組んだのは組織の連中」
「組織に手を貸してる時点で貴様も同罪だ!」
組織?仕組んだ?何のこっちゃ、という表情をしていると、
「そもそも何故カガミ サナダを始末する必要がある!」
「今回の器があまりにもモルドレッドに適応しすぎたのよ。
そうなれば、まず器の標的になるのは彼とその周り。彼を誘き寄せるために彼の周りが
犠牲になる。彼をあらかじめ消しておけば、器は決して人を殺そうとはしないはず」
「お、おいおい。何を言ってるんだ?」
サツキはこちらを見て言った。
「そうね。面倒事は後で聞きなさい。生き残れたらね。それと、
私の本名はサツキではなくファム グロリアス。覚えておいて」
改めて自己紹介されると、再びヴァンプワイバーンが動き出して、
レンキとルシフェルを爪で斬り裂いた。
後方に吹き飛んだ二人から、大量の血が流れて、俺にもかかった。
二人が苦しんでるのを見た瞬間。
俺の中で、奴が暴れだした。
「うっ!?こ、ここでかよ…!?」
俺の言葉を肯定するかのように、イフとは別のソレが暴れ続ける。
『ロ、ロード!奴が!』
イフの言葉は、すでに俺の耳に届いてなかった。
俺の意識はすでに奴のものとなっていた。
グ、グルァァァァァァァァッッッ!!!!
まるで、オオカミやライオンの方向が混じったかのような方向が辺りに響いた。
「これは…神獣…」
「フェンリルだと…?」
「カ、カガミ…」
「きょ、教官…?」
俺の身体は、白い毛並みの巨大なニホンオオカミのような獣、
“神獣フェンリル”となっていた。
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