俺、合宿に同行する。(初日前編)
『よう、カガミ。よく来たな』
「何してんのハツノ」
「PC型音声発信機を作ったんだ。コイツで、合成音声を作れるんだよ」
「そんな暇あるなら勧誘でもしろや」
最近は、チーム内で名前を呼び合うようにしている。
親しみやすくするためだ。まあ、苗字よりは親近感があるな。
『今日はレンキがお前に頼みがあるってよ』
「普通に喋れ!…で?何だ?」
『んーっとね。学院の事で依頼があるの』
「お前もか!」
この二人がまたくだらないボケをやってるのはおなじみになってきた。
スサノヲのいいアピールキャラクター達だな。
「強化合宿?卒業試験?」
「うん。毎月、上位二学年が参加する合宿があってね。
それは最高学年の卒業試験でもあるの。参加条件が面倒でね…」
「条件?合宿に?」
「これに合格で卒業なの。で、条件だけど、現役冒険者を連れてくるのが条件」
は?なんだと?参加しなきゃ卒業できない?しかも条件付き?学院はなに考えてる?
「俺じゃなくて、アマノ連れてきゃいいだろ」
「アマノは罰を受けてるから無理」
「その罰の一つで連れて行けば…」
「遠距離型はそろってるの、うちの班員は」
くそ!反論が通じない!
「プラチナの俺が参加できんの?」
「ランクは関係ないし」
「いいけどさ…。女子専用学院の合宿に何故俺が…」
恨みがましく言う俺の言葉を無視して、レンキは許可が出たことを喜んでいた。
『よかったな。レンキ』
「うん!ハツノ、付いてきてくれてありがと!」
『ふふん。日本の恋のキューピットとは俺のことよ!』
「ハツノ、普通に喋れ」
そうとう気にいった発明らしい。うるさいんだけどな…。
―――(1週間後)
よろしくおねがいしまーす!!
「はいよろしく」
大きな声で挨拶する面々。学院の女子達だ。
聞いてはいたが、レンキの班含め、一つの班の人数は8人前後らしい。
「カガミ サナダ。一応、レンキのパーティメンバー」
「レンキ コオリサキ。班長で、両手持ち銃使いよ」
「ブロッサムです!二丁拳銃使ってます!」
「マリンです!ダガ―使いです!」
「サーナっす!ハルバートと盾を使ってるっす!」
「コードですわ。鎌と魔法使い。平民の方々、前衛でわたくしを守ってくださいな」
「リュナだ。刀と拳銃を扱う。期間中、よろしく頼む」
「イグナイトよ。魔法を使うの主ね。よろしく」
「…ルシフェルです。短剣を二刀流で使ってます」
俺含め9人。うるさいの、生意気なの、おとなしいの。個性あふれるメンバーらしい。
最後の奴が気になるが、気のせいか?
軽く挨拶して竜車で出発。俺は走った方が速い。
3時間程度で到着した。
「へえ。山が近いな」
「ここはフォレストでは結構有名な合宿所よ。
あとで、スノーボードでもやってきたら?雪あるし」
「え!?今夏だぞ?」
「ここは雪が解けないエリアなのよ」
まじか。後でやりに行こう。
夏はスノーボードできないから、結構うれしいな。
「合宿は1週間です。あとで日程を確認して、時間通りに行動してください」
はい!!
元気な挨拶が響く。皆張り切ってんな。卒業もかかってるし当然か。
午前中は荷物を宿の部屋に運び、整理する。
それで、部屋の設備を確認して着替え。
訓練所に向かい、引率冒険者と手合わせして、課題をみつける。
その後昼食で、休憩。訓練所に戻る。
課題の克服をして、訓練終了。
その後は夕食。自炊だってさ。材料は用意されているらしい。
自前のも使っていいから、遠慮なくやらせてもらおう。
風呂入って、すぐに消灯。就寝。
これが初日の日程だ。
手合わせか。強い奴いるかな。
レンキに手加減するようには言われたので、怪我させないようにしよう。
「そういや。俺は部屋どうすんの?」
「え?同室よ?」
ブッ!な、なんだと!?おかしいだろ!女8に男1だと!?寝られるか!
「大丈夫よ。カガミだって、いつも私と同じ部屋じゃない」
「クジでそうなっただけだろうが…!」
何故か俺だけは部屋をクジ引きで決めさせられた。レンキと同室になったんだよ!
ノブナガめ、覚えてろ。お前の飯は他より少なくしてるからな!
「イフ助けて」
『救出成功確率0%。不可能です。よってスリープとなります』
生徒たちは着替えて、訓練所に向かった。
「訓練開始!!」
教官らしき姉御が叫んで、訓練スタート。
経験者と戦って己の弱みを知るのが初日の目標だってさ。
―――(1時間後)
ぜーはーぜーはー
少女たちが俺の前で倒れている。疲れたらしい。
魔法使わせまくって、動かしまくって、こうなった。
少女たちは俺に返り討ちに遭い、何度も吹き飛んだわけだが。
レンキだけ平然としてる。多少呼吸は荒くなってるが。
彼女はいつも俺や先輩と手合わせしてるので、この程度慣れてるのだろう。
「おらどうした!午前の訓練もうすぐ終わるぞ!全員でかかってこい!」
俺は彼女たちに渇を入れた。
全員でかかってきたが攻撃は俺に当たらず。訓練は終了した。
「よし昼食だ!食堂まで行き、各自食え!いいか。絶対に残すな!」
時間は2時間。どこのグループも息が上がってる。
「容赦ないな…」
「つらい…」
「ここで食べたら吐きますわ…」
「オエっ…」
「ここで吐くな…私も限…ウエッ…」
などと、皆つらそうだ。吐いてる奴いるし。
初日はとんでもなく荒れそうだな。ハハハ。
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