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異世界行ったら普通じゃなくなった少年  作者: パツキン緑ベルト
地上に出たよ。新しいヒロインも出たよ。
24/38

俺、グローリーと戦う(前編)

「助けて?どういうことだ?」

「それを私達に聞く君は馬鹿なのかね」

失礼な。俺だって高校生だ。中学は出てるんだ。


俺は白海が言ったことについて考えていた。

「助けて」彼女は間違いなくそう言った。口を動かしただけだが。


「ロード。彼女には特殊な凍結処理がされていました」

「凍結処理?」

「どうやらあのグローリーという男、彼女の感情を凍結してるようです」

衝撃の事実をカミングアウトされた。

感情を凍らせる、すなわち自我を奪うも同然だ。

あのクソイケメン一体なにしてんだ。


「どうやら彼は精霊持ちのようですね。おそらくその能力かと」

「能力?」

「たとえば私はすべてを蒸発させる熱量が能力の一つです。他にもありますが。

 彼の精霊はあらゆるものを凍らせる能力。たとえそれが実体の無いものでも凍結します」

えげつねえ。なんだそれ。じゃあ、スキルも凍結すんのか。イフに聞くと、

「いえ?凍結対象によって魔力の消費が違うらしいですが、

 スキル凍結は使えば一瞬で魔力枯渇です」

ということでした。この人どうやって調べたんだ?


「ロード。彼は魔人化を使えます」

「魔人化?なんだそれ」

「精霊を身に纏う…正確には精霊と融合するのです」

ほお。なんかカッコいい。男のロマンがくすぐられるな。

「魔人化は常に魔力を消費します。ですがその分、とんでもない強さを得ます」

「どれくらい?」

「今のロードの全力くらい。これでも魔王には勝てません」

いきなり出てきた魔王の話題。じゃあかなり強いよな魔王って。

「ふむ…先輩がいても向こうは白海がいるわけだから絶対に勝てる保証はないと。

 スキル、魔法、技も全部使っても5分5分か…」

「君も魔人化すればいいのではないかね?」

その発想は無かった。



フィールドに入場。相変わらず客の量が半端ない。てか増えてる。

先輩の金髪と胸見てる男が大勢いる。誰の許可得てるんだ?先輩か?俺は認めん。

「ほう…逃げずに来るとはね。精霊持ちなら僕の力を知ってるだろ?」

「ああ。俺が全力出しても勝てるか微妙だってさ」

グローリーの問いかけに笑って応える。

勝てるか微妙、でも勝てないわけじゃない。

だってここに来るまでに魔人化のやり方教わってたから。


俺は白海をチラッと見た。相変わらず目が死んでる。

俺はすぐ視線をグローリーに戻し、先輩に声をかけた。

「白海の相手はお願いします」

「ああ。滅多打ちでいいな?」

「もちろん」

作戦上、精霊持ちではない先輩は白海と戦うことになる。

仮にも神器使いだし、圧勝とは行かないだろう。

しかし大丈夫だろう。彼女なら多分。俺の師匠だからな。


『それでは!!試合開始ィィィィ!!』

実況うるせえ。

てなわけで試合開始。突然グローリーが何か唱え始めた。


「冷徹を纏いし精霊よ…我と一つとなりて魔人と化せ…」

唱え終わったら身体が光り、一気に姿が変化した。

先程まで白い布だった騎士団の制服が突如金属の鎧に変化した。

金属より氷の方が正しいだろうか。とにかく鎧になった。

彼の銀髪は白に近づき、目も水色から青くなった。

そして、青いマントをぶら下げている。まさに聖騎士。イフとはまた何か違う。


「さあ、君の青き炎は僕の氷を溶かせるかな!?」

「速い…ってか飛翔能力持ちかい!」

グローリーは飛翔して、俺にそのレイピアを突き付けてきた。

俺は横に跳んで間一髪回避したが後ろの壁は粉々になった。


「なんつーパワーだ…てか飛翔持ちなら神速も有効とは言えねえな」

『ロード、来ますよ』

イフの言葉で我に返った俺はグローリーのレイピアをソウエンでガード。

力もスピードも向こうの方が上だ。今は。

俺も魔人化できればな…やり方は教えてもらったけどさ。


「どうしたどうした!?防いでばかりじゃ勝てないぞ!?」

どこかで聞いた敵のセリフを言い放ち、連撃を繰り出したグローリー。

認めたくないが反撃できないのが現状なのだ。

攻撃すれば氷弾が来るし、来なくても攻撃すれば隙ができる。

身長差と武器の長さで負けてるので反撃してもすぐカバーされる。


「くたばれぇ!」

顔がゲスい。おっとっと、そんな事考えてる場合じゃねえ。

俺はグローリーの氷弾を弾き飛ばした。が、それは奴のシナリオだった。

「ッ…!?」

奴は氷弾を重ねていた。一発目を弾いてもすぐ二発目が来る。

分かっていても対応はできない。確実に当てる技使う辺り、やはり実力者だと分かる。


俺は左腕でかろうじて直撃は防いだ。氷弾の効果か左腕が凍った。

溶かすまでは時間がかかる。こっちは圧倒的不利だ。

「くっ…!」

「良い顔だ!もっと苦しめ!冒険者になったことを死ぬほど後悔しろ!」

ゲスい。表情が歪んで見える。俺がダメージ負ってるのもあるだろうが。


「ハン!ガッカリだぜ騎士様よ」

「何ィ…?」

「お前がどこまで冒険者恨んでんだか知らねえけどよ…

 今のお前、誰よりもゲス顔してるぜ?」

俺が言うと、さらに顔を歪めたグローリー。


「復讐のために冒険者を潰す…か。それがお前の騎士道なら俺はそれを否定する。

 なぜならお前がやってることはお前が恨んでるやつと同じことだからだ」

「ち、違う!!僕は…」

「正しい事をしている?誰がそれを証明する!?お前の親父か!?

 そいつはもうこの世にいねえだろうが!いつまで過去に甘んじて他人を傷付ける!?」

グローリーの反論を遮って言い放つ。正しいことを言ってるつもりはない。

間違ってもいないだろう。テストで○じゃなくて△はとれる答えだ。


「俺は他者を否定することを止めはしない。俺もそうされたから。

 だが傷付ける事だけは止める。それを復讐とは言わないからな」

ではなんと言うか…俺なりの答えは…

「それは侵略ってんだ。自分の勝手な考えを押し付けて支配するんだからな」

「しん…りゃ…く…?」

「俺もやってることは変わらねえがな…なんつうか、その…

 復讐ってのはさ、相手を傷付けんじゃなくて見返すってことだと思うのよ」

絶望的な表情をしているグローリーに言った。ゲス顔も消えていた。


「1年前、俺はある奴に化け物って言われたんだよ。この世界では当たり前のことしたのに」

「当たり前の事…?」

「野良ゴブリンを殺した」

「ッ…、たったそれだけで…?」

「そう。だが、当時のそいつには受け止められなかったんだよ。命を奪うって現実を」

グローリーは黙って聞いていた。


「んで、俺はそのまま追放されてさ。その後ドラゴンロードに

 地下迷宮最深部に叩き落とされたのさ。まあ、痛かったな」

「恨みは…しなかったのか…?自分をそんな目にあわせたやつを…」

「恨んだよ。でも助けてくれた奴らがいた。そこで戦ってる先輩と…俺の精霊さ」

俺は苦笑いをした。そうして言った。


「二人とも俺の大切な師匠だ。イフには戦い方の。先輩には生き方の」

「………」

「俺とお前は似たような境遇になった。でも大きく違いはでた。

 誰かに頼ったか、一人で抱え込んだか。なにか大きなものを失ってできるのはどっちかだ」

グローリーは俯いたが…やがて口を開き、負の感情をあらわにした。


「黙れ……黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!」

急に叫んだグローリーは氷弾を飛ばしてきた。

単発だったので、すぐに撃ち落とした。

「なにも…なにも…失ってないくせに…知ったような口を聞くなァァ!!」

雑な連撃。片手でも防げる。


「そうだよ!僕は誰にも頼らなかった!相談ならできたのに!一人で抱え込んだよ!

 でもお前とは違う!そんな勇気なかった!父みたいになりたくて!一人で解決しようとした!」

「…………」

「やがて僕は力を得た!でも心の拠り所が無かった!そんな時、彼女をみつけたんだ!」

「白海か…」

「そうだ!彼女は優しかった!誰にでも!それにどんどん強くなるし!」


グローリーは一人で生きてきた。でも、心の底では拠り所が欲しかったんだろう。

「僕は彼女の感情を自分の精霊で凍結した!自分のモノにしたかった!あんなに美しい彼女を!」

さっきから黙って聞いてりゃ…

「おい。それは手前の都合だろうが。白海から自由を奪っていい理由にはならん」

「分かってる!」

「お前は自分の過ちを認めないのか?なにかあれば魔法で解決すんのか?

 何か失っても魔法を使うことすら…力を使うことすらできない奴らもいるのにか?」

「ッ…!」

「人はお前がやってることをこう言うんだよ。“ないものねだり”ってな。

 所詮、お前は自分の魔法で誤魔化してただけだよ。真の心の拠り所はお前にはみつけられない」


そして…俺はイフに教わった呪文を唱えた。

「業火を纏いし精霊よ…我と一つとなり…額の瞳を開き…魔人と化せ…」

そしてグローリーを見て言い放った。

「今から手前が傷付けた罪なき人々と同じ痛みを味あわせてやるよ」

俺の身体は…次の瞬間魔人となった。



長くて申し訳ありませんでした。

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